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三浦豪太の探検学校

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冒険心や探究心溢れる三浦豪太が世の中について語った日本経済新聞の連載記事「三浦豪太の探検学校」(2019年3月に最終章)の、リバイバル版。わずか11歳でキリマンジャロを登頂。フリ…
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2023年5月の記事一覧

成功の裏に「逆算の考え」

 友人に誘われ、シンクロナイズドスイミング日本代表の井村雅代ヘッドコーチの講演を聞いてきた。  申すまでもなく、井村コーチは指導者として夏季五輪のメダルを6大会連続で確保して日本をシンクロ強国にした功労者である。北京、ロンドンの両五輪では中国チームを指導してやはり目でダルに導いた。その後、日本のコーチに戻ってリオデジャネイロ大会もデュエットとチームで銅。メダルの行進が途切れない。  井村コーチはメダル獲得を前提にすべての計画を立てる。遠い目標に達するために、その時々で何が必

運動と学力 密接な関係

 ソチ五輪スノーボードの銀メダリストである平野歩夢選手のお父さん、平野英功さんが地元の新潟県村上市にスケートボードパークを作った話を前週にしたが、今回もそれに関連した話をしようと思う。平野選手はここでアスリートとしての下地を作った。いまも多くの子供達が練習にいそしんでいる。たが最近は老朽化の兆しが見え、選手育成や子供の活動の場となる新たなパークの建設を市が進めている。  村上市は僕にも縁のある場所だ。毎年、スポーツを通じて人と町が元気になるための講演を僕はこの地で行っているの

次世代につなぐために

 スノーボードの平野歩夢選手といえば2014年ソチ五輪の男子ハーフパイプ銀メダリスト。ソチの開幕目前に、僕は父親の平野英功さんと会った。当時の平野選手はすでにワールドカップ(W杯)優勝などの実績を積み上げていた。  この活躍は父親の手に支えられていた。英功さんは出身地である新潟県村上市の旧公民館を改修し、本格的なスケートボードパークをつくった。息子はそこで幼いころからスケートボードに熱中し、養った感覚をスノーボードに生かしていたのだ。  だが海外の強豪を相手にするにはそれで

子供とスポーツ

 10月下旬、岡山市の環太平洋大学で「第14回子ども学会議」が開かれた。テーマは「子供とスポーツ新時代」。僕の父、三浦雄一郎のエベレスト登頂にまつわる展示も催され、僕も参加させてもらった。  冒頭の講演で講師を務めたのは元陸上選手の為末大氏。400㍍ハードルを得意とした彼は、日本人で初めて陸上短距離種目の世界選手権メダリストとなった。背の高い選手が有利とされるハードル種目で、身長170㌢の為末選手が次々と背の高い外国選手を抜いていく光景に感動したのを覚えている。  講演で為

ネパール高所合宿の成果

 ネパールのナムチェバザールでの合宿の終盤、父の三浦雄一郎は85歳の誕生日を迎えた。数十年来のつき合いがあるシェルパや、日本からトレッキングに来ていた友人たちと合宿の打ち上げをかねてお祝いをした。長期にわたった今回の合宿は、体力的にも精神的にもきついものだった。気を緩めた父の顔を見るのも久しぶりだったように思う。  トレーニングの三大原理というものがある。過負荷の原理(普段よりも強い運動を行うことによって鍛えられる)、可逆性の原理(トレーニングをやめると元に戻る)、特異性の

高所トレーニングの工夫

 父の三浦雄一郎、そして国際山岳医の大城和恵先生と一緒に、ネパールのナムチェバザールに来ている。ここは標高3450㍍、富士山でいうと8合目の標高だ。来年のチョ・オユー滑走計画まで一年を切ったいま、父の体力を抜本的に鍛えるためにナムチェに滞在してトレーニングすることにした。  これまでの僕たちの高所トレーニングでは、目的地を決め、そこにたどり着くことを成果としてきた。目標として高い標高を設定し、長距離を歩く。それができるのがこのやり方の利点だが、これだと一人でも具合が悪くなる

「挑戦」する意義 伝える

 父の三浦雄一郎は北海道のクラーク記念国際高等学校の校長を務めている。先日、その開校25周年イベントで、生徒向けの〝記者会見〟が開かれた。全国54ヶ所の拠点を合わせると、クラーク高校の生徒は総勢1万1000人。その代表69人が会見に出席し、取材活動を通じて父の所信を全国のキャンパスへ伝えるとともに、プロのマスコミ関係者に記事を評価してもらうという社会勉強を兼ねた試みだった。  父と僕らはヒマラヤ山脈のチョー・オユーをスキーで滑降するという来年の挑戦のために準備してきた。会見

科学的トレーニングとは

 先日、友人たちと開いた食事会に、スキークロスの日本代表選手である梅原玲奈選手が来てくれた。梅原選手とはソチ五輪のときに知り合った。彼女が聞かせてくれた話はとても的確でおもしろく、テレビ解説者を務めた私にとって役立つ情報ばかりであった。  いまの彼女は来年の平昌五輪に向けてトレーニング中である。この日も国立スポーツ科学センター(JISS)から夕食会に駆けつけた。この日はエクササイズバイクに乗って1時間、血中乳酸値を2ミリモルにしてトレーニングを行っていたという。  強い運動

停滞を楽しむ

 僕たちミウラ・ドルフィンズが神戸YMCA、サントリーとともに瀬戸内海で開催しているアドベンチャーキャンプは今年で10年目になる。小学3年生から6年生の子供達が小豆島南西の余島をカヌーで出発して9㌔離れた無人島の葛島に渡り、そこで2泊するカヌートリップキャンプである。このルートになって7年目、これまでも大変なことは多くあったが、今年は特に苦労が多かった。  2日目、例年どおりに余島から葛島に向かってカヌーを漕いだ。しかし途中、風と海のうねりが激しくなり、やむなく中断。翌日も

母は強しを再確認

 妻の出産に立ち会った。僕たち夫婦はすでに1男1女を授かっていたが、ふたりとも僕がエベレスト登山で不在のときに誕生した。だから今回、万難を排してもお産に立ち会おうと決めていた。8月中旬になると僕は会社から休みをもらい、逗子からは両親と姉も来てくれて、強固な支援体制が出来上がっていた。  最後の検診で「いつ生まれても大丈夫。軽い運動をするといいですよ」と言われたので、妻と僕は近くの体育館で友人たちと卓球をした。卓球は夫婦共通の趣味なのである。  2時間程体を動かすと、妻が卓球

自然への感度 培う登山

 百名山の一つに数えられる滋賀の伊吹山。先日名古屋の青年会議所の青年たち60人とこの山に登ってきた。その3週間前にも下見で登頂。イベントの実行委員と一緒だった1度目の登山で、大雨に降られた。  西の空を見ると琵琶湖から立ち上がる大きな入道雲が見えた。そして遠くから雷鳴の音。スキー場跡地を登るこのコースは落雷から身を守る木々がなく、みんなのペースを上げ山頂の小屋に急ぐ。小屋で注文したそばを食べていると、小屋の上に雲が覆いかぶさり、雷鳴とともに大雨が降り始めた。帰りは反対側の登山