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手を差し伸べるって難しい。When you help someone, you feel more helpless.

今週頭から夫が「駅のベンチに若い女の子がキャリーケースを持って座ってる」と言っていた。じろじろと見るわけじゃないないのでどのくらいの年齢なのか分からないけど、服装や雰囲気から若いと感じる。朝、出勤するときにも見かけるし、夜9時半近くに帰ってきた時も見かける。午後出勤だった日の午後も居た・・・と毎日報告してくれていた。夫は声を掛けたそうだった、でも彼にはその語力がない。突然、外国人に話しかけられたら彼女が怖がるんじゃないかとも懸念していた。

木曜の夜も9時半過ぎに帰宅。「また彼女が居たんだよね」と言う。このところ毎日彼女がホームレスなのかどうなのか夫婦で話してきたので「彼女」という代名詞だけですぐに誰のことか分かる。私は駅を利用しないので「彼女」を見かけたこともないけれど、若い女性が毎日毎日キャリーケースを片手にずっと座っているのはどう考えても不自然。

寝入っている子どもたちの寝顔を見ながら、夫婦でどうしようかと話す。

駅前なので交番がある。本当に困っているのなら交番に行くのではないか?駅前だしコンビニもあるし深夜でも真っ暗になることはない、彼女なりに安全だと判断してそこにいるのではないか?若いというけれど未成年だったら交番の警察が声を掛けているんじゃないか・・・。私たちが行ったところで何ができるのか・・・と堂々巡り。

2時間くらい経った頃。私も夫も気になって仕方ないので、彼女の様子を見に行くことにした。眠っている子どもたちだけを置いていけないので夜分遅くに呼び出すのは申し訳なかったが実家の母にお願いして来てもらった。

私たちが行ったところで何ができるのか分からない。でも、きっと彼女は一人心細いはずだろうと思った。行ってみて居なかったらそれでいい。もし居た時にただの自己満足だとしても声を掛けて「あなたのことを気にかけているのよ」と伝えてあげたいと思った。夫も同じ気持ちだった。駅までの道のりで私たちが出来ることは何か、私たちが支援できる範囲について夫婦間で同意した。

夫と駅へ歩いていくと駅前のコンビニにその彼女はいた。うつむいてじっとしている。「こんばんは」と声を掛けると顔をあげた。幼く見えたけど未成年ではなさそう。毎日、通勤で夫が彼女のことを見かけて気になっていたから来たことを説明して、どうしてここにずっといるのかを聞いた。口数少ないながらも説明してくれたが要は行く場所がない&お金もないということだった。携帯も持っていない。元々このあたりに住んでいたわけでもなく、前に1度友人を訪ねてきたことがあったのでどうもその人を頼りに来たけど当てが外れたようだった。聞くと5日間食べていないというので一緒にコンビニに入って食料を調達。なんでも好きなものをどうぞ、と言ったけど菓子パンばかりを選ぶ彼女。腹持ちのいいお米・おにぎりにしたらよいのにと思った私はただのお節介で、日持ちのする菓子パンを選んでいたのかもしれない・・・(と後になって思った)

毎晩、ベンチで座っていたりコンビニ入ったりふらふらと歩いたりして夜を過ごしていると聞いていたので、今晩はきちんとしたところで眠って欲しかった。駅前のビジネスホテルはどう?と聞くとネットカフェの方がいいというので一緒にネットカフェまで行った。ネットカフェを利用したことのない私も夫もシステムがさっぱり分からなかったけど、彼女はメンバーズカードを持っていて、どんなタイプ(部屋?)がいいのか希望を伝えた。温かいメニューがあることに気づいたので「温かいもの食べたら?」と声を掛けると「いいんですか?」と言いながらもナポリタンを注文。先払いで支払い完了。

ネットで誰かと連絡を取るように伝えつつも(そういう人がいるのかどうかは分からない)本当に行き場がないのであれば連絡を取るとよい相談先の電話番号等を渡した(自宅を出るまえにメモをして持って来ていた)そして翌日の移動(電車賃)で必要になるかもしれないことを考えて現金で2000円渡した。

もうこれ以上私たちに出来ることはない。

「ゆっくり休んでね、自分のこと大切にしてね」と声を掛けると彼女は頭が膝にくっつくんじゃないかと思うくらい深々と頭を下げてお礼を言ってくれた。彼女のお礼の言葉よりも何よりも、彼女がびくびくしながら外で朝を迎えなくてよいことが嬉しかった。

その後、彼女がどうしたのかは知らない。金曜の朝、夫が出勤する際には彼女の姿は駅前のいつもの場所にはなく、金曜の夜帰宅した際にも見かけなかったとのこと。彼女がどこに行ったのかは知らない。家族の元へ、もしくは頼れる人のところへ帰れたならいいなと思う。

When you help someone, you feel more helpless. 困っている人に手を差し伸べてみるけど、実は何の助けにもなれないと実感する。夫も私も「彼女」に一晩休める場所を提供し胃袋を満たす支援は出来たけれど、彼女がなぜ何日も寒空の下で過ごしていたのかは知らないし、根本的なところの解決にはなっていない。

「自分のこと大切にしてね」は余計な言葉だったんじゃないかと反省してる。決して自分のことを大切にしていないから、あの状況になったわけじゃなく結果としてああなってしまっただけかもしれない。自分のことを大切にしない子はコンビニの灯りの下で座っていないだろうし、交番が目の前にあるベンチで時間を過ごすことはしないだろう。自分のことを大切にするからこその選択だったのかもしれない。

手を差し伸べるって難しい。

・・・難しいけれど、困っている人に気づける人でありたい。例え自己満足だったとしても手を差し伸べられる人でありたい。

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