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ポイント解説・金商法 #16:2023年改正金融商品取引法等の改正に係る政府令案(四半期報告書の廃止、企業・株主間のガバナンスに関する合意、企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意の臨時報告書の提出事由の追加等)に係るパブリックコメント結果公表と改正法の施行


1. パブリックコメント結果等

2024年3月27日、金融庁は、2023年金融商品取引法等の改正に係る政府令案(四半期報告書の廃止等、令和5年法律第79号改正附則第1条第3号関係)につき、確定した改正内容とパブリックコメント結果等を公表しました。確定した政府令等は、2024年3月27日に公布されており、同年4月1日から施行・適用されています。

金商法の改正自体の概要は、「ポイント解説・金商法 #9」および「ポイント解説・金商法 #10」において解説をしておりますので、ご参照ください。

四半期報告書の廃止により、各社が新法に移行することになりますが、決算期毎に移行期が異なり、3月末決算の会社は、2024年4月1日から新法に移行することになります。決算期により、移行時期が異なることになるため、注意が必要です。なお、決算期毎の法令適用時期については、「各決算期における適用時期(四半期報告書提出会社)」をご参照下さい。

2. 四半期報告書の廃止後の有価証券届出書における四半期情報の記載

新株発行等に際し、有価証券届出書を提出する場合において、改正法施行前は、四半期情報が法定開示情報として記載(組込方式における組込書類、参照方式における参照書類を含む。)されていましたが、本改正法の施行後において、情報開示の後退とならないようにするため、四半期決算短信等の四半期に係る財務情報を記載することが可能となるよう、企業内容等開示ガイドラインにおいて規定されました。概要は、以下のとおりです。

また、パブリックコメント結果において、

① 四半期に係る財務情報の作成・公表が行われても訂正届出書の提出が求められるものではないこと(任意の訂正は可能)

② 有価証券届出書に四半期に係る財務情報を記載する場合でもレビュー義務付けしないこと

③ 有価証券届出書に任意で四半期に係る財務情報を記載している場合において、四半期財務諸表等が新たに公表され又はこれに係る監査証明を受けても訂正届出書の提出が求められるものではないこと(任意の訂正は可能)

④ 四半期決算短信に含まれる四半期財務諸表について、監査人の期中レビューを受けていない場合でも、有価証券届出書に記載することを目的として監査人のレビューを受けることは可能であること

といった回答が示されており、回答内容は、四半期報告書の廃止と四半期決算短信におけるレビュー手続の任意という考え方が徹底されたものであり、ある意味では当たり前のものではありますが、エクイティ・ファイナンスのスケジュールを考えたり、有価証券届出書の記載内容を考える上で、重要な点についての考え方が示されていますので留意が必要です。

3. 企業・株主間のガバナンスに関する合意、企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意の臨時報告書提出事由への追加

ポイント解説・金商法 #12」においても記載したとおり、2023年12月22日付の企業内容等の開示に関する内閣府令の改正により、

①「企業・株主間のガバナンスに関する合意」
②「企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意」
③「ローン契約と社債に付される財務上の特約」

については、有価証券報告書等において「重要な契約等」として開示すること(他の箇所に記載した場合にはその旨を記載することで他の箇所に記載した内容を省略することが可能)が義務付けられています。これらのうち上記③は、その締結または変更が既に臨時報告書の提出事由とされていますが、本改正により、上記①および②についても、その締結または変更が臨時報告書の提出事由とされましたが、有価証券報告書における記載と同様、合意のうち「重要性の乏しいもの」については、臨時報告書の提出事由とはならず、その判断基準の考え方と例示が追加され、以下のとおり改正されました(企業内容等開示ガイドラインB5-17-6)。

<「重要性の乏しいもの」の判断基準>
当該契約における合意が、有価証券報告書提出会社(以下「提出会社」といいます。)等のガバナンス若しくは支配権又は市場等に与える影響の程度や当該契約が通常の事業過程において締結されたものであるか否か等を考慮して判断することとし、例えば、次のような場合をいう。

① 提出会社の株主と当該会社との間の合意について、当該合意の相手方以外の株主が少数特定であり、かつ、その全ての株主が当該合意の内容を把握しているなどの少数株主を保護する必要性が乏しい場合

② 提出会社の株主と当該会社との間の合意について、当該合意の相手方が株主としての立場に基づかない場合

③ 提出会社の株主と当該会社との間の合意が、当該会社のガバナンスとは無関係なものである場合(例えば、提出会社の株主と当該会社との間でライセンス契約が締結された場合に、当該契約中に、当該会社の一定の行為について当該株主の合意を必要とする条項が含まれている場合等)

④ 「企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意」が、法第166条第1項に規定する業務等に関する重要事実又は第167条第1項に規定する公開買付け等の実施に関する事実若しくは公開買付け等の中止に関する事実(以下「未公表の重要事実」という。)に関連して締結されたものであって、これらの合意が、未公表の重要事実に関する交渉又は検討に係る期間を踏まえて一定の期間に限り有効なものである場合


Author

弁護士 峯岸 健太郎(三浦法律事務所パートナー)
PROFILE:2001年一橋大学法学部卒業、2002年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)、一種証券外務員資格。19年1月から現職。06年から07年にかけては金融庁総務企画局企業開示課(現 企画市場局企業開示課)に出向(専門官)し、金融商品取引法制の企画立案に従事。
『ポイント解説実務担当者のための金融商品取引法〔第2版〕』(商事法務、2022年〔共著〕)、『実務問答金商法』(商事法務、2022年〔共著〕)、『金融商品取引法コンメンタール1―定義・開示制度〔第2版〕』(商事法務、2018年〔共著〕)、『一問一答金融商品取引法〔改訂版〕』(商事法務、2008年〔共著〕)等、著書・論文多数。

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