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大解剖!三浦法律事務所STAFFの仕事AtoZ Vol.6:秘書業務②「M&Pの秘書業務を深堀りする」

2019年1月に30人の弁護士と3人のスタッフでスタートした三浦法律事務所(以下、M&P)は、2021年11月現在、弁護士66人、スタッフ26人にまで増えました。事務所の成長に伴いスタッフの増員も積極的に行っており、2020年からはスタッフの新卒採用も実施しています。

スタッフの採用活動を行う法律事務所が一定数ある一方で、法律事務所で働くスタッフの業務について知るチャンスが少ないと筆者が感じたことからスタートした本連載「大解剖!三浦法律事務所STAFFの仕事AtoZ」。


6回目となる今回も、前回に引き続き「秘書」に焦点を当てます。

【前編はこちら】

今回は、M&Pの立ち上げメンバーとして、Day1から今まで事務所を支えてきた星野加奈さんと一緒に「M&Pの秘書業務」を深堀りしていきます。

ーーまずはざっくりと、どんな仕事をしているか教えてください。

星野加奈(以下、星野):スケジュール管理や出張の手配、請求書の作成、電話応対、来客対応、書類の整理や裁判所への提出書類の準備など、業務は多岐にわたります。

これらに加えて、私は破産管財・相続財産関連業務の補助も行っているので、企業法務を扱う大手の法律事務所ではいわゆる”パラリーガル”が対応している業務についても担当しています。さらに、事務所の防災計画などを策定・実行するサブコミッティ(委員会)の仕事もしていますね。

ーー企業法務を扱う大手の法律事務所のスタッフは、業務を細かく分担することで効率化を図っているので、例えば来客対応は受付スタッフが対応したり、実際に裁判所まで行って訴訟書面を提出する作業は専門の部署が対応したりしていますよね。その一方でM&Pの秘書はまさに”川上から川下まで”一手に引き受けているから、多忙ではあるけど全体の流れを把握できるし、一通りのことはできるようになりますよね。星野さんはどんな弁護士を担当しているんですか?

星野:私が担当している弁護士は、パートナー2名、アソシエイト2名の計4名です。M&Aやコーポレート・ガバナンス、個人情報・プライバシーなどを専門分野にしている弁護士を担当しています。入所当初は秘書業務に加えて、専門知識を身に付ける必要もあったため、「日々勉強」の気持ちで仕事と向き合ってきました。

ーー企業法務を扱う大手の法律事務所は、弁護士が専門分野ごとに固まって執務していることが多いので、それに伴って秘書も担当する業務分野が固定されがちです。M&Pは業務分野で弁護士の座席を固定することはしていないので、秘書も異なる分野の弁護士を担当することになりますよね。「今日は訴訟書面の準備をして、明日はデュー・デリジェンス(内容は後述)の大量印刷作業」といったことになるわけですが、覚えることも多くて大変じゃないですか?

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星野:たしかに、一つのことに注力できるとその点については他者より早くプロフェッショナルになれると思いますが、個人的には多岐にわたる業務に対応できるタイプになりたいです。多岐にわたる業務に対応できるようになれば、1つの業務で得た知識や効率的なやり方を他の業務にも活かせると思うんです。どちらが良いというわけではなく、どちらが自分に向いているか、だと思います。

ーー大手の企業法務系法律事務所では、秘書1人に対して弁護士2~3人が一般的ですが、弁護士が毎月のように増えているM&Pの秘書は、秘書1人に対して4~5人を担当しますよね。「忙しすぎて帰れない!」なんてことはありますか?

星野:意外と何とかなるんです(笑)。忙しい時期もありますが19時を過ぎることってめったにないですし、基本的には定時に帰れます。それはきっと、「秘書1:弁護士2」の環境だったら秘書に任せるような雑務を弁護士が引き受けてくれているところもあるとは思います。それに加えて、秘書のチーム制をとっているから、担当弁護士数が多くても定時で帰れない、という状況にならないのだと思います。

ーー自分の担当弁護士はいるけど、自分が対応できないときはチームの秘書がカバーしてくれるということですよね。いわば、「秘書1:弁護士5」の担当制と「秘書4:弁護士20」のチーム制が共存しているわけですよね。

星野:今はリモート勤務の日と事務所出勤の日があるので、自分がリモート勤務の日に、出勤しなければできない仕事は同じチームの出勤している秘書が引き取ってくれます。また、出勤の日は出社時間が定時より1時間遅くて良いのですが、移動中に担当弁護士からリモートでも対応可能な仕事の指示が来た場合は、お願いしなくてもリモート勤務の秘書が引き取ってくれたりします。コロナ禍をきっかけに、秘書間のフォローしあう関係がレベルアップしたと思います。

ーー秘書の仕事で”大変な業務”ってありますか?

星野:書類の整理は大変な業務の1つです。例えばM&Aの案件では、デュー・デリジェンスというステップがあります。これはM&Aの対象となる企業の契約書をはじめ、大量の資料が開示され、弁護士がその大量の資料を精査してリスクなどがないかを検討するのですが、秘書は大量の資料を整理し、ファイリングするのが仕事です。一度に複数のM&A案件が入ることもあるので、そんなときは自分一人では処理しきれなくなってしまいますが、こうしたときでも、先ほどのチーム制がしっかりしているので、仲間の秘書が必ず協力してくれます。また、担当の弁護士も優先順位をつけて指示を出すなど、仕事を進めやすいよう配慮してくれます。

チームワークの良さは、私がM&Pで働くようになって感じている「大きな魅力」です。規模の大きな案件であっても、仲間と助け合いながら取り組める環境があり、何より自分自身も成長できます。

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弁護士もスタッフも同じ空間で仕事をするので、分からないことも質問しやすい雰囲気はM&Pの魅力の1つ

ーー星野さんは、通常パラリーガルが対応する業務も担当しているということですが、そのおもしろさや魅力は?

星野:秘書の作業と比べて任せてもらえる範囲が広く、自分でスケジュールを立てながら進められるところにやりがいを感じます。また、秘書よりもプラスアルファの専門性が身に着くところも魅力です。

ーーどんな人がM&Pの秘書に向いていると思いますか?

星野:①好奇心旺盛、②協調性、③柔軟性の3点がポイントだと思います。

M&Pは多種多様な業界・業種のお客さまと関わりがあります。これは、当事務所が幅広い分野を手掛けていることによるものだと思います。そうすると自ずと、秘書が担う仕事の範囲も広がっていくので、知的好奇心旺盛な方は向いていると思います。

また、協調性も重要ですね。リモート勤務を始めてから対面で話せないことも増えたので、文面だけのコミュニケーションだからこそ、相手のことを考えながら仕事を進められる能力が重要だと思います。

また、この3年間でもM&Pはかなり変化しているので、今後さらに進化していくことが予想されます。「前の会社ではこうだったのに」といった発想の人や、変化を柔軟に受け入れられない人よりも、変化していく組織を楽しんで、より良くするにはどうしたらよいかを考えられる人の方が向いているのかなと思います。

ーー最後に、秘書という仕事のやりがいを教えてください。

星野:「弁護士のサポート」が秘書の務めですが、私たちはその先にいるクライアントのことも強く意識して仕事に取り組んでいます。秘書が直接クライアントとやり取りする機会は多くありませんが、弁護士宛に感謝の言葉を記したメールや手紙が送られてくると、1つ1つの作業は地味でも、弁護士の後ろからサポートできたことが自信につながりますし、「少しでもクライアントに貢献できた」という喜びで胸がいっぱいになります。これこそ、法律事務所の秘書ならではのやりがいだと感じています。

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Author

平川 裕(三浦法律事務所 PRマネージャー兼アドミニストレーション・グループ マネージャー)
PROFILE:大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年からファッション業界紙「WWDジャパン」の編集記者として、同紙におけるファッションロー分野を開拓する。同時にバッグ&シューズ担当としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材も行う。19年6月から三浦法律事務所のPRマネージャーを務める傍ら、フリーランスのファッションジャーナリストとしても活動する

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