税務UPDATE Vol.14:財産評価基本通達総則6項~最高裁判決を踏まえて~
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税務UPDATE Vol.14:財産評価基本通達総則6項~最高裁判決を踏まえて~

三浦法律事務所/Miura & Partners

税務UPDATE Vol.13では、令和4年4月19日の最高裁判決(以下「本件判決」といいます。)をご紹介しました。

今回は本件判決を踏まえて、具体的に今後どのような案件で財産評価基本通達総則第6項(以下、財産評価基本通達を「評価通達」といい、評価通達第6項を「総則6項」といいます。)の適用に注意すべきかについて迫野馨恵弁護士と山口亮子弁護士が対談形式で議論します。

1. はじめに

本件判決では、平等原則の観点から通達による評価を行わないためには「合理的な理由」が必要であるとした上で、「評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情」があれば合理的な理由があるとしています。

本件判決の事案および従前総則6項が適用された事案としては、以下のものがあります。

今回の対談では、本件判決および上記の過去事例も踏まえて、どのような事実関係があれば総則6項を適用する合理的な理由があるのかを議論します。

2. 対談

迫野馨恵弁護士(以下、迫野):本件判決では、通達評価額と鑑定評価額の乖離のみでは合理的な理由にならないとしつつ、租税負担の軽減をも意図して借入れおよび不動産の取得を行ったことから総則6項の適用を認めています。租税負担の軽減の意図というのは租税回避事案においてよく重視される要素ですが、投資を行うに当たり税効果を検討するのは当然のことのようにも思われます。上記の各事案との関係ではどのような点が租税回避的と見られたのでしょうか。

山口亮子弁護士(以下、山口):上記の各事案それぞれで若干事実関係は異なるものの、①相当程度高齢または病気になるなどした被相続人が、②その取得資金の大半を借り入れることにより不動産を取得し、③結果相続税負担が減少し、④相続開始後当該不動産は売却されるというのが典型事例といえそうです。確かに、特段投資の目的はなく、相続のタイミングで一瞬不動産に財産を変えるというケースを想定すると、租税回避的な要素はありますね。本件判決の事案では、租税負担の軽減を直接的に認定する証拠は銀行の稟議書の記載のみで、これが決定的とも思えませんから、相続人の年齢、相続税の減少幅、相続開始後の売却に関する事情などから租税負担の軽減目的が認定されているように思います。

迫野:そうですね。他方で、各要素がどの程度総則6項の適用に影響を与えるのかはよくわかりませんね。上記の各事例では比較的高齢の方の不動産の取得が問題となっており、また事例によっては入院したなどの事情があり、ある程度具体的に相続が想定されている場面ともいえそうです。60代・70代の元気な方が不動産投資をしましたという事案であれば多少相続上有利という検討があったとしても適用は難しいように思います。本件判決では「税負担の軽減をも意図して」としていますが、ちょっとでも税負担の軽減を考えていれば総則6項を適用できるというわけではないように思います。

山口:同感です。例えば租税回避行為を否認対象とする行為計算否認では、「税負担の減少以外にそのような行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するか」ということが考慮事由とされており、少なくとも主目的が税負担の軽減でないといけないように考えられているかと思います。

迫野:また、投資用の不動産ではなく、例えば親族が居住するためのマンションであればどうなのでしょうか、仮に税負担の軽減の意図があるとして、その後親族が長期にわたり居住する目的があるような場合でも総則6項が適用されてしまうのですかね。

山口:その場合、税負担の軽減目的はかなり薄まるような気はしており、個人的には総則6項の適用はないと信じたいですが、やはり取得のタイミングなど他の事情いかんでは適用もあり得るのでしょうね。

迫野:相続税の減少幅についても本件判決の事例では実質0になっていますが、0というのは税務署から目を付けられる事情にはなり得るものの、0であるかどうかが決定的な要素ではないでしょうね、取得があった場合となかった場合の減少の程度なんですかね。

山口:なかなかまとめるのが難しいですが、まずは相続人が健康なうちに自由な意思決定で不動産を取得しているのか、相続税の減少効果が極端でないか、取得の目的は何なのかということなのでしょうね。

迫野:そうすると、相続開始前に銀行などから資金を借り入れて、不動産を取得して相続開始後に売却していても、通達評価額により評価すると税務署から必ず否認されるというわけではなく、色々な事実関係を考慮しなければならないということですね。

山口:そう思います。ところで、こちらは株式の事例ですが、税務UPDATE Vol.12で紹介した令和2年7月8日の裁決(令2.7.8仙裁(諸)令2-3)は裁決要旨を見る限り、税負担の軽減の意図はなさそうですね。

迫野:はい、そうですね。事案の詳細はわかりませんが、現在訴訟係属中のようですので、仮に税負担の軽減の意図がない場合に裁判所がどのように判断するのかは注目しています。最高裁判決が出たとはいえ、まだまだ総則6項の適用については種々議論がありそうだと思っています。


Authors

弁護士 山口 亮子(三浦法律事務所 パートナー)
Profile:2005年弁護士登録(2020年再登録、第二東京弁護士会所属)、18年~20年東京国税局調査第一部調査審理課において国際調査審理官(特定任期付職員)として勤務。20年7月から現職。

弁護士 迫野 馨恵(弁護士法人三浦法律事務所 名古屋オフィス 法人カウンセル)
Profile:2007年弁護士登録(愛知県弁護士会所属)、11年~16年東海財務局理財部において金融証券検査官、16年~21年名古屋国税局調査部調査審理課において国際調査審理官として勤務(いずれも特定任期付職員)。21年9月から現職。

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三浦法律事務所の公式noteです。法律ネタから弁護士インタビューまで。 HP:https://www.miura-partners.com/ 公式Twitter:https://twitter.com/miura_partners (代表弁護士:三浦亮太/第二東京弁護士会所属)