キミが存在しないラブコメ 第62話
*
突如、《機関》のセンサーが反応した。
《影》が現れたのだ。
お茶をコップに注ごうとしていた瞬間、転移が始まった。
今回は《第二の組織》を味方につけた状態なので、いつもより楽に戦えるはずだ。
――転移が完了した。
「みんなは、いるのか?」
「神憑先輩!」
萌瑠だ。
「月子は、どうなった?」
「わかりません。気づいたら、この場所にいました」
つまり、なにもなく、そのまま転移したということか。
やはり月子は冤罪だったのではないか?
綿里さんは、たまたま、あのとき僕の部屋にいたときに殺されたのであって、月子になにかされたわけじゃなかったんだ!
だから月子が綿里さんに嫉妬して、憤怒の感情で綿里さんを消滅させたわけじゃないんだ。
よかった。
これで疑いが解けるはず。
「おーい!」
御琴だ。
「無事いーっ!?」
椎菜さんもいる。
「無事ですよ! 安心してください!」
萌瑠が応じてくれた。
「これで今回、戦えるメンバーが揃ったか」
「…………あたしも忘れないでくださいね」
「もちろんだよ、友代。活躍できることを期待しているよ」
『よし、揃ったね』
《機関》の中枢部から尼城さんの声が通信で空間の全体に響き渡る。
『まだ《影》は出現していないようだが、油断だけはしないでくれよ』
『了解!』
空間にいる全員が答えた。
「じゃあ、私が能力を使います」
椎菜さんは能力を発動する。
「《回復》能力、発動!」
この場にいる能力者たちに回復機能を授けた。
「《影》からダメージを受けても回復するスキルを付与しました。これで、どんな攻撃が来ても大丈夫です!」
「ありがとう、椎菜さん!」
「…………じゃあ、あたしからも。《霊化》能力、発動…………これで、この場にいる全員が《影》の攻撃を全部回避できるようになりました」
「つまり、霊化で、どんな攻撃も体に通さなくなるってことだな。ありがとう、友代」
「はい、こちらこそ、ありがとうございます…………」
少し照れた表情を見せる友代。
…………彼女の顔に見とれている場合じゃない。
集中しろ!
「でも、確かに《影》の反応があったはずだよな? どうして、まだ《影》が現れないんだ?」
「……うーん、センサーの反応に誤りがあったとか?」
椎菜さんが、そう言ったが。
「いや、それはありえない。僕の技術で《影》の探知は必ず、おこなわれるはずだが……」
まだ《影》が現れない理由がわからない。
もしかして、もう、どこかに――。
「――きゃあああああぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!」
「えっ!? なんで!?」
椎菜さんが、椎菜さんの心臓が、《影》に貫かれていた。
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