キミが存在しないラブコメ 第62話

突如、《機関》のセンサーが反応した。

《影》が現れたのだ。

お茶をコップに注ごうとしていた瞬間、転移が始まった。

今回は《第二の組織》を味方につけた状態なので、いつもより楽に戦えるはずだ。

――転移が完了した。

「みんなは、いるのか?」

「神憑先輩!」

萌瑠だ。

「月子は、どうなった?」

「わかりません。気づいたら、この場所にいました」

つまり、なにもなく、そのまま転移したということか。

やはり月子は冤罪だったのではないか?

綿里さんは、たまたま、あのとき僕の部屋にいたときに殺されたのであって、月子になにかされたわけじゃなかったんだ!

だから月子が綿里さんに嫉妬して、憤怒の感情で綿里さんを消滅させたわけじゃないんだ。

よかった。

これで疑いが解けるはず。

「おーい!」

御琴だ。

「無事いーっ!?」

椎菜さんもいる。

「無事ですよ! 安心してください!」

萌瑠が応じてくれた。

「これで今回、戦えるメンバーがそろったか」

「…………あたしも忘れないでくださいね」

「もちろんだよ、友代。活躍できることを期待しているよ」

『よし、そろったね』

《機関》の中枢部から尼城さんの声が通信で空間の全体に響き渡る。

『まだ《影》は出現していないようだが、油断だけはしないでくれよ』

『了解!』

空間にいる全員が答えた。

「じゃあ、私が能力を使います」

椎菜さんは能力を発動する。

「《回復かいふく》能力、発動!」

この場にいる能力者たちに回復機能を授けた。

「《影》からダメージを受けても回復するスキルを付与しました。これで、どんな攻撃が来ても大丈夫です!」

「ありがとう、椎菜さん!」

「…………じゃあ、あたしからも。《霊化》能力、発動…………これで、この場にいる全員が《影》の攻撃を全部回避できるようになりました」

「つまり、霊化で、どんな攻撃も体に通さなくなるってことだな。ありがとう、友代」

「はい、こちらこそ、ありがとうございます…………」

少し照れた表情を見せる友代。

…………彼女の顔に見とれている場合じゃない。

集中しろ!

「でも、確かに《影》の反応があったはずだよな? どうして、まだ《影》が現れないんだ?」

「……うーん、センサーの反応に誤りがあったとか?」

椎菜さんが、そう言ったが。

「いや、それはありえない。僕の技術で《影》の探知は必ず、おこなわれるはずだが……」

まだ《影》が現れない理由がわからない。

もしかして、もう、どこかに――。

「――きゃあああああぁぁぁぁぁぁっっっっっっっ!」

「えっ!? なんで!?」

椎菜さんが、椎菜さんの心臓が、《影》に貫かれていた。

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