キミが存在しないラブコメ 第63話

椎菜さんの心臓が《影》に貫かれていた――なぜだ?

《回復》能力と《霊化》能力を同時に使用していたはず。

攻撃なんて当たるはずがないのに。

攻撃が当たったとしても回復するはずなのに。

「オオアナムチ! スクナビコナ!」

医療をつかさどる神である、二柱の神を顕現させることで椎菜さんの完全回復を狙う。

「《森林》能力、発動!」

御琴によってフィールドが木々に覆われる。

《影》を木々で拘束する。

「《烈火》能力、発動!」

拘束された《影》を燃やす紅炎の弾が放たれる。

紅炎弾プロミネンス・バレット!」

《影》が紅炎のによって燃やされ、消滅していく。

「椎菜さん、大丈夫?」

「…………うん、なんとか」

傷が完全になくなったことを確認した。

「まだ…………《影》がいるよ」

「えっ?」

《影》の反応を捉えるセンサーが百体以上いることを示す。

「私、役立たずでごめんね…………おそらく今、出現している《影》は《回復》も《霊化》も無効化するみたい。ただ、神の能力による治癒は大丈夫みたいだね。私がいても無意味だから《機関》に戻るね」

「ああ……しっかり休んでね。転移術式、発動…………あれ?」

転移が、できない……?

「おそらく転移もできないようになっているみたいですよ」

「そんな……じゃあ、椎菜さんは……」

「戦うしか、ないですね」

「…………」

椎菜さんは回復にエネルギーを使っている。

彼女は万全じゃない。

なら、守りながら戦うしかないってことか……。

「ごめんね、役立たずで」

「いや、なんとかするよ。とにかく、みんな……《影》との戦いに挑んでいこう」

『了解!』

《影》に《回復》も《霊化》も通じないなら、命を削り切る攻撃で対抗するしかない。

「ニギハヤヒ!」

空の神であるニギハヤヒを顕現させた。

「みんな、空中浮遊するぞ!」

ここにいる《機関》のメンバーが全員、ニギハヤヒの能力で浮遊した。

「空からなら《影》の攻撃は当たらない! 御琴、萌瑠、やるぞ!」

『はい!』

「《森林》能力、発動!」

ここにいる《影》を全員、木々で拘束する。

「カグツチ!」

紅炎弾プロミネンス・バレット!」

神火と烈火の炎で森を焼き尽くした。

「これで、ここにいる《影》が全滅したはずだが……まだ、いるのか……?」

気配は感じない。

だけど、瞬間的に彼女が現れる。

「ツクヨミ」

ツクヨミと唱えるだけで、僕と僕に同化している友代以外の《機関》のメンバーが大ダメージをくらった。

「オオアナムチ! スクナビコナ!」

瞬時に回復させる。

「どうして、そいつらをかばう?」

《影の女王》――ヴィジョン・マインディングが、この世界に顕現した。

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