人間椅子 / 江戸川乱歩
江戸川乱歩が生きていた時代なんて、私からしたらとおーいとおい昔だっていうイメージがありました。
それはもう、皆さんが想像してる以上に、です。
それがこんなに近くに感じたのは意外でした。
いつも使っている言葉と、普段使わない、でも少しだけ聞き慣れた言葉がうまく、心地よく目に入ってきました。
そしてその心地よさの中に、それとは全く違う、おぞおぞした、ムカデが私の体に這いつくばってモゾモゾ動いているような、そんな物語が入ってきて、なんとも言えない感覚に襲われたことは、読んだ人には十分に想像できると思います。
小さな興奮に襲われたんです。
興奮に小さいも大きいもないと言う人がいると思いますが、体験してみると、その違いの面白さに、体は嬉嬉として反応するでしょう。
何気ない日常を描くことが好まれている時代ですが、私はやっぱり、こういう作品のほうが断然好みだなと実感しました。
そのまま過ごしていると感じられない感情や、考えもつかない物語に触れると、子どもの頃に戻ったように思えて、少し嬉しかったりもします。
江戸川乱歩が生きた時代が、100年も前じゃないと知ったときは吃驚したけど。
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