料理で家庭を幸せにすること。それが生きる証 ー浜内千波
料理研究家の浜内千波さんの料理教室は大人気。
常に満席で、5年も待って通うことができた人や、全国各地から東京へと受講生が集まります。
その人気にも関わらず、お値段は材料費込み1回4,500円で入会金はなし。不思議なほど敷居が低いのです。
テレビをはじめメディア出演やレシピ提供など、様々な仕事をこなす浜内さんにとって、この「ファミリークッキングスクール」には特別な思い入れがありました。
浜内さんは5人兄弟の末っ子として育てられました。
商売人だった家庭で、お父さんは家族の中で絶対的な存在。お母さんは、その横でいつも笑顔を絶やしません。
お客さんを迎え、いつも家には人が出入りしていたという賑やかな家庭でした。
でも、そんな平和だった浜内さん家族に悲しい出来事が起きます。
浜内さんが小学5年生だったとき、すぐ上のお兄ちゃんが病気で亡くなってしまったのです。
これまでどんなときも笑顔だったお母さんも、このときばかりは気がおかしくなってしまいました。数カ月間ぼーっとして、何も手につかない状態だったそうです。
家族のリーダーのお父さんも、3日間起き上がることができませんでした。
家族の誰もが言葉にできない大きな傷を負いました。
そして、重たく冷たい空気が家族を包みこんだまま月日が流れていきました。
浜内さんは、この経験から家族が元気じゃなくなることは本当に本当に大変なことなんだと思い知ります。
そして、この経験が「ファミリークッキングスクール」への想いとなっていきました。
浜内さんは、取材でこんな質問を投げかけられました。
「料理研究家として大成され、ビジネスをもっと広げるためにも、限られた人に高額で料理を教えたり、大学教授になったりすることは考えませんでしたか?」
浜内さんは、質問に即答しました。
「ないですね。私が主婦だからかもしれません。家計と家族を預かって、(家族が)幸せになることが生きる証だと思うんです。」
「(主婦が)スーパーに行っているときの顔は、本当の顔です。真剣に選んで、一生懸命持って帰って、お料理している姿がなによりも素敵。輝くってそういうことだと思うんです。女性が輝いているところで私も一緒に輝きたい。1円でも安く、毎日おいしいもの、プラス、愛情。そこを超えないでいきたいですね。」
浜内さんも夜は遅くなっても必ず料理をつくり、旦那さんと二人で食べるそうで、その時間はかけがえのないものだと言います。
浜内さんは料理から家族の元気と笑顔をつくることができると信じているし、それは主婦であり女性ができる最高に価値のある仕事だという誇りがありました。
そんな想いがあるからこそ、スクールの料金はリーズナブルで誰でも通いやすいものに。
普通の家庭にないような器具や調味料は絶対に使わず、簡単な手順の料理をいつも教えているのです。
ファミリークッキングスクールは、夜の7時からスタートします。
仕事帰りの女性十数名が集まり、そこから怒涛の2時間が繰り広げられます。
冒頭に浜内さんから調理の説明があり、みんなで5品ほどを作り上げ、「おいしいね、おいしいね」と言いながら食べて、片付けまで。
参加する女性は真剣に料理して、お腹いっぱいになり、満足そうな笑顔で帰ります。
この凝縮された2時間の中には、浜内さんが家族のために料理する女性たちに向けた、大きな愛が込められているのでした。
参照:「闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由」ジェーン・スー
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