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こだわりを手放して、テイクアウトカレーを囲んだ話


ピラティス講師のM先生は身体も心も軽い人。

いつもアクティブで小さな子どもの子育てをしながらも仕事に家事にとフル回転で日々を楽しんでしました。

そんな生活の中、元々仕事で家を開けがちだった旦那さんの転勤が決まりました。
子どもたちは小学生。一緒に行くことはできず、旦那さんは単身赴任に。

完全に一人で子どもたちと家のことをしなくてはいけない環境になったM先生。

持ち前の元気でこなしていましたが、やっぱり家事は溜まっていき、以前の様にはいかなくなりました。

しかし、そんな中でもごはんを作ることだけは、外食やテイクアウトに頼らずにやってきました。
それは、料理が好きだったから。
そして、家族の健康は台所からつくられると信じていたから。

ピラティスだけでなく、栄養学にも詳しいM先生は食べ物、食材にもこだわっていました。
なるべくオーガニックや自然栽培の元気な野菜を使っていましたし、平飼いの卵や調味料も無添加のものを選んでいました。

そのおかげで、自身も家族も健康に暮らしていました。M先生がタフな日々の中でも元気に仕事をして、生徒さんや周囲の人に笑顔でいられたのは間違いなく食習慣があります。

しかし、ある日セミナーで帰宅時間が予定よりもとっても遅くなってしまう事態が発生しました。

子どもたちには、簡単なものなら自分で作れるようにと料理を教えてもいました。
でも、その週は忙しくて買い出しにも行けず、冷蔵庫には十分な材料がありません。

出先から焦って子どもたちに連絡をするM先生。
「ご飯は何とかするから、家で待っていて!」

電車を乗り継ぎ、自転車を一生懸命こぎながら晩ごはんを考えました。でも、今日ばかりは作っていては遅くなりすぎます。

そして、近所のカレー屋さんでテイクアウトすることを決めました。
息子さんが以前にランチで食べに行って気に入っていたカレー屋さんです。

特段素材にこだわっているわけでもない、ごくごく普通のカレー店でした。

人生で初めて、普通のお店で晩ごはんをテイクアウトしたM先生。少しモヤモヤとしながら帰宅しましたが、むしろ息子さんは大喜び!

「やったー!カレー買ってきてくれたんや!ありがとう!!!!」

苦し紛れに冷蔵庫にあった少しの野菜でサラダは添えました。

そして、家族3人でテイクアウトカレーを囲み、食べ始めました。

まだ罪悪感にかられているM先生に向かって子どもたちは、

「今日のセミナーどうやった?どんな話やった?」
「こういうの特別でいいね!」

と、超ご機嫌。

その会話や嬉しそうに食べる姿を見てM先生は思わず泣いてしまいました。

悲しい涙ではありません。
ホッとして涙がこぼれたのです。そして笑顔も。

自分は今まで手料理や素材にこだわってやってきた。でも、それを手放しても子どもたちはこんなに幸せそうなんだ。

今日はテイクアウトしたおかげで、私も楽させてもらって、早くに晩ごはんを囲むことができた。

こんな楽しく話しながらご飯を食べられている。

それなら、忙しいときはこうやって外食に頼ってもいいんだな。

M先生の中で新しい選択肢が広がり、良かれと思ってしていたけれども、自分自身を締め付けていたことに気づきました。

そしてそのこだわりから解き放たれた瞬間でした。

その後も、手料理を大切に日々暮らしているM先生ですが、その晩の食卓のことは今も思い出して心が温かくなります。

今では子どもたちに禁止していたスタバのフラペチーノも時にはOK!としています。

***

自分が一番こだわっていることほど、手放すことは難しい。

でも、それを諦めてみると時間や心に余裕が生まれます。

特に仕事の繁忙期や子育て中、たくさん気を使わなきゃいけない時期は、無理をすると家族みんなが辛いことに。

自分のこだわりを一度見直してみると、楽になるのではないでしょうか。

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