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小さな行いも世界とつながっている ーアリス・ウォータース

アメリカ カリフォルニア州のまち、バークレーにある星つきレストラン「シェ・パニース」。

そのオーナーであり、アメリカで地産地消を広めた第一人者でもあるアリス・ウォータースさんがお店をオープンしたばかりの頃のお話です。

アリスさんはシンプルな調理で、オーガニックの素材を活かしたメニューを提供するレストランを始めました。

異臭事件


ある夏のとても暑い日のことです。

魚を卸してくれている友人、ジェリーさんがお店に魚を持ってやってきました。

そのとき、ジェリーさんは店の異臭に気付きます。臭いの方へ行ってみると、外のゴミ置き場から腐った魚の臭いがしています。

ジェリーさんは怒りながらレストランに入ってきました。

「アリス、一緒に外に来るんだ。」

そう言うと、アリスさんを外のゴミ置き場へと連れて行きました。

ゴミ置き場に入ってみなよ。というジェリーさんに従いアリスさんが中に入ると、ゴミ袋がやぶれて魚の内蔵や骨が散らかっています。酷い悪臭です。

アリスさんはその光景にとてもショックを受けました。

この惨状は、自分が把握できていないことでした。

夏の暑さで臭いが立ち、偶然居合わせたジェリーさんが気が付かなければこのままだったことでしょう。

そのとき、ジェリーさんは言いました。

「このゴミをトラックに運び入れる処理業者の気持ちが分かるか?誰がこんな臭いを嗅ぎたいだろう?自分の次を担当する人の気持ちを考えたらどうだ」と。

友人からの厳しい一言でしたが、この事件で大きな気付きを得ました。


ゴミが教えてくれた世界とのつながり


アリスさんはゴミ置き場を入念に掃除しました。

その後はゴミの捨て方を徹底的に変更しました。レストランのスタッフ全員がゴミ捨ての認識を変えるようにです。

魚を捨てる時の袋は二重にしてくちを紐でしっかりと縛る。穴が開かないようにスタッフ2人がかりで丁寧に運ぶという段取りです。

ところで、アリスさんは自分たちの手元を離れたゴミがどんな行く末を辿るかなんて、これまで想像したこともありませんでした。

「ゴミも、自分と外の世界をつなぐ接点なのだ。」

小さなことにも自分たちのあり方が現れる。さらに言えば、そこから世界に働きかけることもできる。

処理業者さんのことはもちろんですが、その後ゴミはどこへ運び込まれ、どのように処分され、それによって社会や環境にどんな影響を与えているのか?ということも気になり始めました。

良いつながりへと転換する


アリスさんはゴミを通じた社会とのつながりを良い方へ向けられないかと考え、調べ始めました。

そして、ゴミ処理業者が仕事がしやすいような捨て方に留まらず、生ゴミを資源として活かしたいという想いに至りました。

アリスさんは店の生ゴミを、徐々にコンポストにして堆肥化していきました。今では生ゴミはすべて堆肥にして、農家さんの元へと返すようになりました。ゴミ袋も土に還る素材のものを使うことにしました。

アリスさんは地産地消でオーガニックの素材を提供するだけでなく、その残りも循環できるあり方を選びたいと思ったのでした。

参照:「スローフード宣言 食べることは生きること」 アリス・ウォータース


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