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「気持ち悪い」を無視しない

かつての私は、職場で上手く立ち回ることを優先していました。


20代、まだ駆け出しの頃。

【学級経営がデキる】【生徒指導がデキる】とされている先生方から、日々こんなアドバイスを受けていました。


●反抗的な態度の子は、みんなの前で恥をかかせるといいよ

●特性上、授業中黙っておくことができない子は、クラスの子たちに嫌われるように仕組むと、しゃべりかけても誰も聞いてくれなくなって、静かになるよ

●教員が意図していない子がリーダーに立候補してきたら、わざと昼休憩にリーダー会を開いたりして嫌がらせをすると、もう二度と立候補してこなくなるよ

●授業態度が悪いのは班長の責任だって思わせると、教員へのクレームが減るよ

●教員の意図に反する動きをする子は、学校が嫌いになるように仕向けると、欠席日数が増えて、クラスが落ち着くよ


もちろんこんなに直接的な言い回しはしないし、もしかすると私の解釈が間違っていたのかもしれません。

でも当時の私には、こんな風に言われているとしか思えませんでした。


そして、そんなアドバイスを受けた私は、
いつもこう感じていました。

「気持ち悪い」

生徒指導がどうのこうのではない。
もしかすると、ものすごく結果がでるのかもしれない。

それでも、気持ち悪い。


じゃあ私は【デキる】先生方に「気持ち悪いです」と伝えていたかというと…そんなわけないですよね。

だって職場では上手くやりたかったし。
なんなら「松本は本当によく働く」と可愛がってもらったりしていました。



上手く立ち回りたい。
でも気持ち悪いし、やりたくない。


実は私、この手のアドバイスに「分かりました」とか「やります」とか、一度も言ったことがありません。にっこり笑って「ありがとうございます」「勉強します」などと答えていました。

アドバイス通りに実践したことも、ありません。実践したかどうか聞かれる度に「いやぁ、力不足で…」と答えたりしていました。


ま、ささやかすぎる反抗です。



そんな私が、自分の在り方を明確に変えたできごとがありました。

それは、学校でいろいろなことが起こって、子どもたちの心と身体と、命に危険が及んだとき。


反射的に保身に走る大人をたくさん見て、
それが本当に辛くて。

でもね、そんなときに思ったんです。
「私も同じじゃん」


起きた事案について、子どもたちにどんな風に話をするのか検討していたら、完全に大人都合の案が出ていて。

でもそれが【デキる】先生の案だったから(他の理由もあったのかもしれないけど)、そのまま採用されそうになっていて。


これだけの有事に、その案が通るの?
傷つく子どもが出る可能性が高いよね?
この状況で、子どもにさらに負荷をかけるの?
それ、危険なんじゃないの?


良くないって気づいてる。
でも、黙って聞いている。

そんな自分に気づいたとき
私の中で"何か"が音を立てて切れた。

もうね、切れる音がしたんです。


その日から私は、気持ち悪さを黙ってやり過ごすことをやめました。

"子どもの痛み"と"自分の人間関係"とを天秤にかけることをやめました。

当時、一緒に働いていた先生に会うと、今でも時々言われます。「先生は明確に、あの日から変わったよね」って。
それくらいハッキリと、変わりました。



でもね、気持ち悪さをやり過ごさないといっても「私はそれはやりません」
「気持ち悪いからです」
では、誰にも納得してもらえない。

だから、根拠を基に説明することを身につけていきました。


なぜ「気持ち悪い」という感覚が湧くのか。
どの部分が理にかなっていなくて、どうアプローチすれば気持ち悪い手法をとらずして、同じ結果を得られるようになるのか。

ずっとずっと、考え続けてきました。



今、たくさんの先生と話をするようになって気づいたことがあります。

この「気持ち悪い」という感覚、若手の先生と話していると、驚くほどよく話題にのぼる。


学級経営はこんな風にした方がいい。
生徒指導はこうするべき。

分かってる。分かってるんです。
でも、嫌なんです。やりたくないんです。
…ボクがおかしいんですかね?


ううん、おかしくないです。
むしろその感覚、忘れないでほしいです。

嫌だな…と思いながらもやってみて、それで結果が出てしまうと「あぁ、やっぱりボクがおかしかったんだ」って「こうやるのがいいんだ」って、誤学習してしまう。


先生の誤学習は、たくさんの子どもに影響を与えてしまいます。

だから、その気持ち悪さ、ちゃんとそのままもっていてほしい。

そして、理にかなったアプローチで結果を出す方法を見つけられるようになってほしい。


学級経営ってなんだろう。
子どもを支援するって、指導するってなんだろう。

デキるって、なんだろう。


私はこれからも、きっとずっと考え続ける。



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