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【木曜radio】 vol.2 自己紹介-好きな本-編

 6月もあっという間に4週目となりました。こんばんは、毎週木曜日にお届けする「文字ラジオ」vol.2です。ここでは「お喋りするように書く」ことを試みつつ、いろんなお話をしていきます。

vol.1では最近気に入って聴いている藤井風、オールタイムfavoriteの宇多田ヒカル&椎名林檎について書いたので、今回は好きな本編へまいりたいと思います!


■本がたくさん並んでいる場所が好き

 みなさんはお気に入りのカフェやお気に入りの服屋さん、お気に入りのレストランなどはありますか? きっとそれぞれの街で、よく通うお店なんかがある方が多いと思うんですが、ではお気に入りの本屋さんってみなさんあるでしょうか? よく、最近好きなカフェ♡とかインスタグラムに投稿されていたりしますが、好きな本屋♡ってあんまり言われないですよね…(残念)

わたしは、本というマテリアルそのものの造形が好きです。
なので、好きなものがたくさん集まっている場所=本屋って行くとめちゃくちゃ興奮してアドレナリン出まくり……  あ、あの本読んでみたい! とか、この本きれいだな〜ほしい! とか。
でも同時にリラックス作用のある脳内物質が出ているのか、妙に落ち着いてきて、もうずっとここにいたい…住みたい…ってなるのも毎度のこと。

そういうわたしが一番好きな本屋はジュンク堂です。(まわしものではありませんが)ジュンク堂は品揃えが誠実な気がするのです。昨今は本が売れないといいますから、売り上げ第一!の品揃えになるのも仕方のないことだと理解しているのですが、まともな本が並んでいない本屋はすこし寂しくなります。
そういった点で、ジュンク堂(または丸善)は裏切らない稀有な本屋さんです。

ぶっちゃけ、Amazonで買うのが早いし安いし便利なのですが、なるべく好きな本屋さんで本を買うようにしています。


しかしながら、読みたい本がたくさんあるからといって、どんどん買っているとお金がなくなってしまうという致命的欠陥がこの世界にはあるのですが、これを解決してくれるのが図書館です。

図書館はなんと無料で本を貸してくれます!すごい。しかも読みたい本が置いていない場合、リクエストすると買ってくれます。素晴らしいです。

いやなにを当たり前のこと言ってんだよ、といわれてしまいそうですが大人になってから図書館にあまり行かなくなったという人は多いと思うのです。

わたしが本を読むようになったきっかけは──いまから思い返せばということですが──お母さんが小さい頃から図書館に連れていってくれていたことの影響がすごく大きいと思います。紙芝居からはじまって、絵本、児童文学… 活字を読むことに対する抵抗感がまったくなかったし、物語はいつもわたしのそばにあり、わたしを救ってくれました。

かいけつゾロリとか青い鳥文庫のはやみねかおるシリーズとか、ハリーポッターとか、懐かしいなあ〜〜〜

ということで今も図書館に通っています。今の時期、本の共有はちょっといろいろ心配な面もありますが、お金がなくてもたくさんの本を読むことができる、これはやっぱりとてもすごいことだと思うのです。


■衝撃の出会いはいつも突然やってくる

運命の人との出会いがいつも突然やってくるように(?)人生を変えてしまうかもしれない運命の一冊も突然におとずれます。

ここからは衝撃を受けた(受け続けている)5冊をご紹介します!


①村上春樹『バースデイ・ガール」

中学の教科書にのっていたことをきっかけに読んだ作品です。

あらすじ
レストランでアルバイトする彼女は、二十歳の誕生日にオーナーだという謎の老人の部屋まで食事を運ぶよう言われる。その老人は、彼女の願いをひとつだけ叶えようと言う。彼女は何を願ったのか? そしてその願いは叶ったのか?

すぐに読めてしまう短編なのですが、物語のもつ不思議な雰囲気にとても惹かれました。この作品を期に村上春樹を読むようになりました。

人間というのは、何を望んだところで、どこまでいったところで、自分以外にはなれないものなのねっていうこと。ただそれだけ

ちなみに、わたしのベストオブ村上春樹はみんなよく知る『ノルウェイの森』です。この本は人生のいろんなポイントで読み返しています。次におすすめなのが『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』。
あと、村上春樹はエッセイが面白いです。どうやったらあんなエピソードがするするでてくるのか…


②川上未映子『乳と卵』


高校生のときに出会い、世界が変わるってこういうことか!とまさに衝撃を受けた小説。樋口一葉を継ぐ流れるような情緒に大阪弁が合わさり、小説をぐいぐい推しすすめていくパワーある文体、これがとても新鮮に魅力的に感じました。

体が勝手に変わっていくことへの嫌悪、女であるというだけで引き受けなければいけない理不尽なこと、産む有無問題などなど、すべてがクリティカルヒット。

あたしは勝手にお腹がへったり、勝手に生理になったりするようなこんな体があって、その中に閉じ込められてるって感じる。んで生まれてきたら最後、生きてご飯を食べ続けて、お金をかせいで生きていかなあかんことだけでもしんどいことです。(中略)これいっこだけでもういっぱいやのに、その中からまた別の体を出すとか、そんなこと、想像も出来んし、そういうことがみんなほんまに素晴らしくすてきなことって自分で考えてちゃんとそう思うのですかね。

川上未映子氏はエッセイも抜群におもしろいのでおすすめです。たくさん本も出されていてどれもいいのですが、やっぱり「通称:そらすこん」!


③本谷有希子『生きてるだけで、愛』

このあいだ映画にもなった作品です。本谷有希子の本はこれをきっかけにたくさん読みました。

あらすじ
あたしってなんでこんな生きてるだけで疲れるのかなあ。25歳の寧子は、津奈木と同棲して三年になる。鬱から来る過眠症で引きこもり気味の生活に割り込んできたのは、津奈木の元恋人。その女は寧子を追い出すため、執拗に自立を迫るが…。誰かに分かってほしい、そんな願いが届きにくい時代の、新しい“愛”の姿。

「こじらせ系女子」みたいに言われるとちょっと複雑な気分になりますが、みんなそんなもんじゃないの?と思っているし、もしこじらせたことなんてない、あるいはもうこじらせは卒業した、なんて思っている場合、大切なものをどこかに落としてきてしまっていないか振り返った方がいいのかもしれません。

最初から最後まですごい勢いで物語が進んでいきます。
この小説を読んだとき、本当に身にせまるものを感じました。こんなふうに世界に向かって全力で、生身で、ひとりきりで、真正面からぶつかっていくことができるってなかなかできることじゃない。
似たようなパッションを感じる作品に綿谷りさ『勝手にふるえてろ』があります。金原ひとみもよく読みました。

「あんたが別れたかったら別れてもいいけど、あたしはさ、あたしとは別れられないんだよね一生。うちの母親は今でもたぶん雨降ったら寝てると思うし、あたしだってこんなふうに生まれちゃったんだから死ぬまでずっとこんな感じで、それはもうあきらめるしかないんだよね? あきらめなきゃ駄目なんだよね? いいなあ津奈木。あたしと別れられて、いいなあ」


④J・D・サリンジャー『フラニーとズーイ』


続いてはサリンジャー。『ナイン・ストーリーズ』も大好きですが、こちらもかなりすごい小説。どうすごいかというと、まじで「読むと救われる」!

あらすじ
エゴだらけの世界に欺瞞を覚え、小さな宗教家に魂の救済を求めるフラニー。ズーイは才気とユーモアに富む渾身の言葉で自分の殻に閉じこもる妹を救い出す。ナイーヴで優しい魂を持ったサリンジャー文学の傑作。

人々は利己的で薄っぺらく、この世界はエゴに溢れ、悪と汚れで満ちたどうしようもない場所だ!という気持ちになるときが誰でもあると思うんですが、そんなときに読むことをすすめます。特にうんざりして自分の殻に閉じこもりたくなったときに。最初は苦しむフラニーと一緒に自分も苦しむことになりますが、最後の最後に救われたような気持ちになれる、とっても優しい小説です。

「私はただ、溢れまくっているエゴにうんざりしているだけ。私自身のエゴに、みんなのエゴに。どこかに到達したい、何か立派なことを成し遂げたい、興味深い人間になりたい、そんなことを考えている人々に、私は辟易しているの。
(中略)
そしてまた私は喝采を浴びるのが好きで、人々に褒めちぎられるのが好きだからって、それでいいってことにはならないのよ。そういうのが恥ずかしい。そういうのが耐えられない。自分をまったく無名にしてしまえる勇気を持ちあわせていないことに、うんざりしてしまうの」

(フラニーはまさにわたしだ……ぶるぶる)


⑤トルーマン・カポーティ『ティファニーで朝食を』


オードリー・ヘップバーン主演の映画は有名すぎるほど有名ですが、わたしは原作のこちらの作品の方が圧倒的に好きです。ラストがぜんぜん違います。というかこのラストであるからこそ、この作品は名作なのだと思います。

この子とはある日、川べりで巡り会ったの。私たちはお互い誰のものでもない、独立した人格なわけ。私もこの子も。自分といろんなものごとがひとつになれる場所をみつけたとわかるまで、私はなんにも所有したくないの。そういう場所がどこにあるのか、今のところはまだわからない。でもそれがどんなところだかはちゃんとわかっている」、彼女は微笑んで、猫を床に下ろした。「それはティファニーみたいなところなの」と彼女は言った。

自由奔放、風のように生きている彼女はとても魅力的にうつりますが、果たしてそれが幸せなこととは限りません。やはりここにも、人は結局、自分以外にはなれないということが書かれているのかもしれません。


(なんか、あらためてこうしてまとめたり引用したりしてみると、共通点というか軸みたいなものが見えてきてぞっとしているのですが……)


というわけで、今回はこのへんで…

梅雨の時季は体調が悪くなったり、気分が落ち込んだりしますが、本でも読んでなんとか生き延びましょう。では!









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