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Stones alive complex (Strawberry Quartz)

AIジェネレーターらしい、バーチャル感あふれる五月の夜明けだった。画質は、さながら弾ける8K。
月は背筋を伸ばして、あと五分だけ寝ていたかったと言いたそうに地平の寝床からのろのろ昇ってきて、小窓が薄く照らす洗面所へ向かうみたいにふらついている。

その月の光が、輪郭を浮かびあがらせた。
次元の歪み的な立地条件から漂ってくる「もや」にぼんやりかすみつつ、共産系社会派民主主義大聖堂の大小の塔がそそり立つ。
何世紀にもわたって長所短所が積み上げられたジェンガのゴーストタウンだ。縄文を制圧した弥生それと、第二次の戦後統制様式が歪んだ階層になっている。

令和=零輪=00(ヴェシカパイシス)
という呪文字はまだ「もや」にしか見えてないが、ゼロゼロカウントへとリセットリフォームされるプロミスプロセスの輪郭は、その後の四の五の青写真へ焦点を合わせた。

自己の輪と他者の輪はいったん、ソーシャルディスタンスをとらされてる。だが、コアブロックだけは地球一周のサークルディスタンスを巡って再び補完させられる。ソーシャルという言葉の概念が、がらっと変えられてしまうためだ。

庶民の対義語な一大白王が、皇位のリセットリスタートをなにゆえあのタイミングに合わせたのか?
戦略のキレが絶妙すぎる。

このもやを通して見ているのでなかったら、とても異次元の主義とは思えなかっただろう。
その主義のスクランブル交差点を人々が急いで走っていた。ぼんやりした横断歩道から縦断歩道へ、騒ぎながら、白い残像の雲を残して。残されたクラウドは、背後の蜃気楼に包まれ消えてゆく。

令和図形は自己の月部分としての表層と太陽部分としての深層を解く図解でもあるので、万事納得までには大規模なゲシュタルト崩壊を伴う。補完完了までは、口がOの字にぽかーんとするのは避けられない。ぽかーん計画。

O形の口は補完されるにつれて縦へ延び、やがて1になるだろう。ふたつ並んだ1に。

寝ぼけてOの字の口してる月の隣でラジオ体操を終えた太陽が、そろそろブーストかけてく、午前七時。

人々の多くが向かっているのは、この大聖堂の大食堂だ。大食堂は中庭と第二中庭を隔てて建てられており、ギンギラギンのライジング・サンはやたらと細長いイチゴ色の二等辺三角形を、さり気なくその庭へ遮二無二差し込んでいる。

「小麦パンはひとつ、1デナリウス!
大麦パン三つも、1デナリウス!
オリーブ油とぶどう酒を汚染してはいけないよ!
567ころな忌む名!
ひふみ世!」

食堂の売り子が、張った口上で連呼している。

そこへ、とりわけ外人離れしたふたり組がやって来た。

いっぽうは、長身で痩せぎす。
未来型の宇宙服に包まれていても、そのおどおど歩く姿はC3POにちょっと似ていた。

もうひとりは小柄で丸っこいアポロ計画時代の宇宙服で、そのじたばたぎくしゃくした身のこなしを見ていると、R2-D2がいるようだった。

歩きながら、ピヨピヨしゃべっているのはもっぱらそのR2-D2のほうだ。路上の興味深いものを指さしてC3POに議論をふっかけているのだが、もやっててどれひとつ調査対象はクリアに見えなかった。

「ああ、なるほどです。もうひとりのわたし」とか「ほんとですか?もうひとりのあなたの立ち位置からは、補完しずらいシナリオですね」とか「前に質問したかもしれませんが、『研究所』というワードが、民放レベルでも跳ね回りだしたら、すでに第2フェーズですよね?」とか「一大白王が民へお告げになるコメント次第では、第3フェーズへ突入みたいですよ。しないパターンもありですが」とか「宇宙時代の到来って騒いでも、わたしらのこの足元も宇宙なんですよね?」とか言いながら、真剣に頭をくるくる回転させている。

ふたりの異星人は立ち止まり、大食堂入口の鳥居を見上げた。

ヤキン側の門柱には太陽が座り、
ボアズ側の門柱には月が座り、
月は今更なラジオ体操をしていた。

(おわり)

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