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Stones alive complex (Strawberry Quartz)


理論物理学者ホーキング博士は。
マスコミからの、

「地球外の宇宙には、高度な知的生命体がいると思いますか?」

という質問へ、こう答えた。

「えっ?
地球にすら、まだいないと思いますけど」

・・・・・・・・・

その取調室は、容疑者を刺激しないように薄暗くしてあった。

「まるで・・・映画の『猿の惑星』みたいでした・・・」

暴動に加わらなかった唯一のその容疑者は、取調室の椅子をガタガタ鳴らして、興奮に赤くした顔から絞り出した細い声で証言を始めた。

「娯楽室からみんなが暴れだして、そこらじゅうの物を狂ったように破壊し始めたんです・・・
そこからは・・・地獄絵図で・・・」

机に突っ伏し、嗚咽を漏らす。

その様子から取調官は。
この容疑者が他のものと一緒になって暴動へ加わらなかった理由は理性的な判断ではなく、単にビビリなだけやと推測した。本質は他のもんとなんら変わらん。

取調室の一方の壁に張られたマジックミラーの反対側でその取り調べの様子をじっと観察していた、ここ『霊長類知的進化促進研究所』の所長は、くるりと振り返った。

こっちの室へ集められた全職員の、引っかき傷だらけな顔を順に見回してから、ぽそりと言った。

「わしには分かったで。
あいつらが暴動した原因がなんなんか・・・」

インターホンで所長が取調室へ何ごとかを指示すると、取調官は泣きじゃくってる猿の額から「ストロベリックプログレス知的進化促進ポッチ」を、ぽちっと取り外した。

それを見届けた所長は、
マジックミラーの向こうにいる一匹のやせ細った猿へ指をさし。

それから、両腕をあげたゴリラのポーズで叫んだ。

「なんであいつが『猿の惑星』知っとんねーん!!」

怒鳴り声を浴びた職員たちは、いっせいに肩を筋力の限界まですぼめ、うつむいた。

「誰や?
誰やねん?!」

たくさんの電信柱状になった職員たちの間をゴリラの形相で所長はのしのしと歩き、

「誰やて、聞いとんねん!
娯楽室で『猿の惑星』をあいつらに観せたんわ!」

電信柱状の職員たちが、ぴょんぴょん飛び跳ねて部屋の一角へ集まる。
所長は、ぐいぐいその電信柱状たちを追い詰め。

「進化させた猿らに!
『猿の惑星』を観せたら!
すぐ真似するに決まっとるやろがーっ!
どアホがーっ!」

電信柱状職員たちは、
束状職員たちになって一箇所に固まる。

その束状へゴリラのような拳をあげた所長は、
かなり熟練された間のとり方で間をおいてから、オチを言った。

「まあ正直。
わしもこれと同じことは、ちらっと思いついてたんやけどな・・・」

にやっと笑う。

束状の中の誰かが、
ぷ!
と小さく笑った。

そのとたん。

ぐは。
ぐはははは・・・
ぶわっはっはっはっはーっ!

束で、爆笑の渦が巻き起こる。

所長もつられてゴリラのように胸を叩きながら大爆笑し、

「笑い事っちゃうでっ!
ほんまにやってもたら、あかんやろがー!
これ、お前ら全員でやったんちゃうんか?
バレバレやわ!」

ぶはははははー!

柱が倒れるようにコケてゆく職員たちに混ざり、
所長も床で腹を抱えて転げ回った。

・・・・・・・・・

これが。
猿が人間に対して行った、最初の暴動のあらましである。

後に。
国家政府から派遣された、ちゃんとした調査官は。

この暴動の最大の原因は。
この『霊長類知的進化促進研究所』が関西地区にあり、職員たちが皆、現地採用であったことにある。
との結論で、報告書をまとめた。

(おわり)

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