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大人になってから怒られた時の傷の深さよ


職場での私の主な仕事は、職場の方たちがスムーズに業務に励めるようにバックアップすること。誰かが使う物品(文房具やらコピー用紙やらその他諸々)を切らさないよう補充するとか、お弁当の注文の取りまとめとか、時には掃除やゴミ回収も。コピー機とかその他機器類(PC以外)の不調も、なんとなく直せる。先日も隣の室から「ピーッピーッ」という機械音が聞こえてきて、「あ、これはアレだな」と思い、行ってみると案の定“紙折り機”が動かなくなっての「ピーッ」だった。私がローラーにちょっと手を添えるという裏技を披露したらどうにかこうにか動き始めた。使っていた人が、「さすがですね。それにしても動かなくなって僕が困ってるって、よく分かりましたね。エスパーですか」などと私を喜ばせる。


「ピーッて、聞こえたもんで」
「音だけで?さすが。いやぁ、助かりました。ありがとうございます」
こういう時が一番幸せ。私にも存在意義があったかと確認できる瞬間。


基本、頼まれたことは直ぐにやる派。たまに頼まれ仕事が重なってあたふたすることもあるが、優先業務が何もない時は、頼まれたら直ぐにやる。あまりに早くて「え、もう出来たん?早っ」なども、私を喜ばせるフレーズだ。様々な機械を駆使して、より早く、より美しく(会議資料等)仕上げる。


勤務時間は15時まで。職場にも周知されているので、15時前になって急ぎの仕事を頼んでくる人はホントに申し訳なさそうだ。「明日で良いから」と言ってくださることのほうが多い。つい先日も、15時前になって「これ、明日の10時くらいまでに印刷お願いします」と資料を渡された。忘れないよう、目立つ付箋を付けて目立つところに置いて、帰宅した。次の日、朝イチでその印刷をするべく印刷機の前に立つも、どうも機械の調子がおかしい。何台かある機械のどれもが不調のようで、私と同じように印刷が出来ずに困っている同僚と「困ったねぇ」と苦笑する。長年の経験で培った“こういう時にはこうしたら良い”みたいな、いろんな技を試してみるが、どれもハマらない。時間が迫る。どうしよう、どうしよう。


どうしようったって、どうしようもない。出来ないのは機械のせい、私がいくら頑張ったところで動かない機械をどうしようもないのだ。所詮その場凌ぎのセコい裏技、ホンモノの故障に通用するはずない。仕方なく、印刷を頼んできた人のところへ行き頭を下げる。「昨日頼まれた印刷ですが、どうも朝から機械の調子が悪くて、いろいろやってはみたんですがどの機械もダメで、他の皆さんも困ってらして‥」と話してる途中、
「まわりくどい言い方はいいから、で、結局、どういうこと?」と声を荒げられた。えっ‥いつもは優しいその人のキツい言い方に私は少し驚く。
「あ、はい、印刷、間に合いませんでした」
「えっ?間に合わない?どういうことですか?貴方いつも『私がやっておきました』って私が私がって言うし、『こうしたら、あぁしたら』とかって、ホントそういうの、もういいんで。それより言われたことが出来ないってどういうことなんですか?」‥私はそんな風に見られていたことに傷つき、頼まれたことを仕上げられなかったのも事実で、ただ謝るしかなかった。「すみません。ご迷惑をおかけしてホントに申し訳ありません。申し訳ないので、私、仕事、辞めます」気がつくと私は涙をこぼしながらそう言っていた。自分でも、はっ?何言ってるんだろうと思いながら勝手に口は動いていた。きっとこれは悔し涙だ。私がこんな失敗をするなんて、と悔しくて涙がこぼれているのだ。そこへ管理職が割って入る。


「何、何、何があったんですか」
「申し訳ないことをしてしまったので、私、仕事を辞めます
「あ、いやいや、それはあまりに重いです。他の方も同じことで困ってたんでしょ。石元さんが悪いわけじゃないですよね」
すると一緒に「困ったねぇ」と言い合った同僚が「そうなんですよー私も同じことで困ってたんですよ」と、離れた席で立ち上がって援護してくれた。
「ほら、でしょ。だからね、辞めなくていいです」‥‥‥



‥‥‥
と、そこで目が覚めた。
、だった。変な汗をかいて、体が熱かった。夢か、夢だよね、良かった。でも傷ついた。結構ダメージを受けた。同僚から我が強いって思われてたことと、怒られると思ってなかったのに怒られたこと、ダブルでキツい。ホント夢で良かった。ん?良かった?そこで思い出した。私は実際に、夢に出てきたその人から、昨日帰り際に「明日お願いします」と、印刷原稿を渡されていた。もうっ、ややこしい。夢と現実が入り混じってるし。むむ、これは今日朝イチでやらねば。そう誓って出勤した。


朝の駐車場でたまたま仲良しの同僚と一緒になったので夢の話を聞いてもらった。話を聞いた同僚は
「石元さん、お疲れなんじゃないですか。でも今私に話したから、これは正夢にはならないですよね。良かったですね」と、優しい言葉をくれて夢のショックがまだ若干残っていた私は癒された。


現実では、機械は調子良く働いてくれ、滞りなく業務を果たせた。夢の中で怖い顔をしていた人からも「ありがとう、助かりました」とお礼を言われた。一連の出来事をその日の夜、次女に話した。すると次女は
「それは、もしかするとそうなることを予知した予知夢で、それを見たからお母さんは気をつけようと思って行動したから夢のようにならずに済んだんじゃない?」などと、不思議なことを言ってくれる。


同じ話を聞かされても聞く人によって、その受け止め方や返ってくる言葉はこんなにも違うもんなんだなぁと、思った。

いくら仕事が早いと言っても、早すぎるのもいけない。早いと喜ばれるものは早く、頼まれた時にゆっくりで良いと言われたものは何日か寝かせてからとりかかる。
いつなんどきも、頼まれたことに「はい、喜んで」という気持ちでいられるか。時には「めんどくさいことだけ私に頼んでくる」などと思ってしまうことはないか。(ある。)仕事を頼まれるということは信頼してもらえていることなのだと謙虚に受け止められるか。変な夢のおかげでいろいろ振り返れた。初心忘るべからず。「あの人に頼んでおけば大丈夫」と思ってもらえる人になろう。

それこそが私の職場での存在意義。



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