見出し画像

なんうまとはなんぞや


今『VIVANT』と共にもう一つ楽しみにしているドラマ、“なんうま”こと『何曜日に生まれたの』。


日本では星座や血液型占いが主流だけど、ミャンマーあたりでは生まれた曜日で占うらしくて。私、自分の生まれた曜日を検索しちゃいました。だってこれ、パッと答えられる人は少ないと思うし、聞かれたら調べたくなる。それが“なんうま”です。何を話せばいいかわからない時、何を話したらいいかわからない相手に対して問いかける“なんうま”、知らない→検索する→曜日を確認する→何気に盛り上がる、という流れになり、会話のきっかけとしては優秀な質問というわけ。

私、娘2人の生まれた曜日は覚えてます。上の娘は、予定日が私の実父の誕生日と同じ日で、この日に生まれてくれたら皆の喜びもより一層大きくなるなぁなんて思っていたらジャストその日の早朝に自宅で破水して即入院、その日の夜に生まれました。日曜日だったもんで、朝から産婦人科に家族が勢揃いしてまだか、まだかとにぎやかに過ごしたのですごく覚えてる。
下の娘は私のお腹の居心地が良かったらしく、予定日を過ぎても生まれてくる気配がなくて、最後に検診に行った日(金曜日だった)に先生から「この土日に出て来なかったら月曜日に入院しましょう」と言われ、結局その通りになったのでそれもすごく覚えてる。

それはさておき。ドラマはちょっと不思議なドラマだ。

27歳の黒目すい(飯豊まりえ)は、漫画家の父・丈治(陣内孝則)と二人で暮らす、ほぼ引きこもりの家事手伝いだ。彼女が部屋に閉じこもってから10年が過ぎた頃、丈治の連載の打ち切りが決定した。担当編集者の来栖久美(シシド・カフカ)は、生活のために「なんでもやります」とすがる丈治に、大ベストセラー作家の公文竜炎(溝端淳平)が原作を書き、丈治が作画を担当する、コラボを提案する。ジャンルは鮮烈でピュアなラブストーリー。公文からの条件はただひとつ、すいを主人公のモデルにすることだった。


主人公のすいを演じる飯豊まりえさん。綺麗系な女優さんというイメージをくつがえす、引きこもりの役。あ、最近は“こもりびと”って言うらしいですが、10年間他人との接触がほぼ無かったんだろうなあと思える雰囲気を醸し出してる。歩き方や話し方、表情も。そして意外にもこれがとても合っている。

溝端さん演じる公文は変人で、作品に対してはある意味変態で。良い物を書くためにすいの携帯を盗聴してるし、すいを応援しているのか、久しぶりに娑婆に出て戸惑うすいをただ単に楽しんでるだけなのか。その上「他人は怖い。街に出れば関わりたくない人で溢れてる。ストレスの9割は対人関係です」などと言うくらいに、人とのコミュニケーションが苦手。公文に比べたらすいの方がよっぽど社交的だ。

脇を固める陣内孝則さん、シシドカフカさん、早見あかりさんが適材適所でとても良い。

すいが引きこもる原因となった高校時代のバイク事故と、それに絡む人間関係が徐々に浮き彫りになっていくのが実にサスペンスチックで、「事実は小説より奇なり」とはこのことか?と思える展開が楽しみでしょうがない。

高校時代のサッカー部の同級生たちもそれぞれ秘密めいていて楽しい。
若月佑美さん演じる瑞貴はめちゃめちゃ嫌な女で高校時代、すいに
「私たち、親友になろう」
と言い、好きな人=江田(井上祐貴さん)がかぶってると分かったら、
「お互い抜けがけせず向こうから告白してくるのを待とう」
と言い、そのくせシラっと抜けがけするし、事故で学校に居づらくなったすいには
「消えてほしいの。親友でしょ」

そして今は江田と結婚しているのだから、なんだかなぁとモヤモヤする。江田は江田で、すいのことが好きだった様子だが、事故が原因で試合に負けたことをすいに八つ当たりして傷つけた。そのくせ10年ぶりで再会した時に、瑞貴との結婚を隠した。

バイク事故を起こした張本人・雨宮(YUさん)はかつてサッカー部のエース、化粧品会社の御曹司で、フラットないい奴。何故か、すいたちと同じサッカー部のマネージャーで、自分のストーカーだったリリ子(片山友希さん)を今は自分の秘書にしている。

そのリリ子の雨宮への恋心を別の言葉に直すと、
「(私は雨宮くんの)ファンじゃない。ただ、あなたの子どもを産みたい」
そのくせスキンシップは苦手ときた。だからリリ子との挨拶は握手やハグではなく、ETみたいな、人差し指同士の接触。それはそれで可愛い。

そして今回登場した、当時のサッカー部のキャプテン・城山(濱正吾さん)がどうやらバイク事故に関係している?

とまあ、人間関係はなかなかな複雑さだ。しかも、登場人物全員がキーパーソンというカオス。面白すぎます。

私たち視聴者は、10年ぶりに会う友人同士の楽しげな再会のシーンを見せられた後に、実は高校時代に“こんなこと、されてました”的なシーンを見せられるから、誰も信用出来んな、ってなる。

すいを見守る周囲は皆、すいの、10年ぶりの社会復帰を見守りつつ、すいとかつての同級生たちとの間に起こる出来事を勝手に解釈したり先を予想したり、それでもそこまで面白くなるとは思っていなかった、その予想以上の展開に驚いたり喜んだりする。それは視聴者も同じ。何度も言うが、「事実は小説より奇なり」、周囲が考えてた状況を現実がどんどん越えてくる感じに毎回ワクワクします。そう、私も公文たちと一緒にすいの現実をのぞき見してる感じなのです。そしてその公文自身が、すいの彼氏役で同級生たちの前に現れ、のぞき見していた物語の世界に入ってきてしまうという展開。どうなる、なんうま!

公文は作家さんなのでたまにいい事言います。この前もこんなことを。

「運命とかないですよ。意志が強ければ必ず正しい方向にいきます。何かを失ったり手放したから、そこまで強く望まなかっただけです」

もう一ついいなと思うのが音楽。多分誰もが聞いたことがある、ちょっとノスタルジックな洋楽、ホリーズ『Bus Stop』は1966年のヒット曲。イントロのギターから持ってかれる。切ないメロディだけど歌詞は意外にもハッピーエンド。この曲で重要なファクターとなる傘は、ドラマのエンディングにも登場します。さて、バスストップで雨に濡れるすいを傘に入れてくれる人物は誰なのか?そんなミステリーチックな感想を抱いてしまう素敵な音楽と映像。

では最後にその曲を(日本語歌詞付きで)どうぞー。きっとドラマが観たくなると思います。


この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?