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もらえる物はもらっとく


義母は人に喜んでもらうのが大好きな人だ。
とにかく気前が良い。人のために惜しみなく動ける。自分が気に入った物はとことん人に勧める。ギブアンドテイクじゃなくギブばっかり。そんな人なのでいつも沢山の友人に囲まれている。


いつだったか、義母が家に玄関チャイムを設置した。カメラが付いていて、会話はもちろん、留守中に来た人が自動録画できるという優れもの。余程気に入ったのだろうか、我が家にも早速付けてくれた。義母はいつも長男(私の旦那さんのお兄さん)と次男(私の旦那さん)に平等で、長男にしてあげたことは私の旦那さんにも同じ様にしてくれる。しばらくして、我が家の斜め前のお宅も同じチャイムを付けた。義母が勧めたらしい。兄嫁の実家にも同じチャイムが付いた。義母が勧めた。他にも義母の友人宅何軒かに同じチャイムが付いている。営業マンなら成績トップだ。


私の幼なじみは時計と眼鏡を売るお店にお嫁に行った。我が家からは少し遠いが、私の幼なじみのお店だからと、義母は何か人に贈り物をするようなことがある度にそのお店で時計を買う。結婚祝い、新築祝い、転勤祝い、法事のお返し..ありとあらゆる贈り物に時計を買った。少なくとも30個以上は買ったはずだ。幼なじみは、時計屋さんは近くにいくらでもあるのに、遠いところまでわざわざ買いに来てくれる事をとても喜んだ。私は義母があの歳でいまだにそれだけの付き合いがある事に驚く。


義母の家に畑はないが、ご近所や親戚からお野菜や果物をもらうことが多い。桃、葡萄、柿あたりは、お店で買った事が無い。お野菜も、今だったらピーマン、茄子、きゅうり。ああいう物は一度に出来るので、いろんな人が持って来てくれてもらう方は「またかよ」みたいに思う事も無くは無いのだが、とてもありがたい。義母がもらった物は、もれなく我が家にも届く。


しかし、もらって困る物も中にはある。タイミング悪く今日スーパーで買っちゃった物だとそんなにあっても困るし、我が家の食卓にはあまり並ばないようなお野菜も困る。好きじゃない物や、どう料理していいかも分からない物、実はその気も無いので正直いらない。

私は正直に「いりません」と言った。義母はせっかくあげようと思ったのに何でいらないの?美味しいよ!と言うが、いらない物はいらない。うちじゃなくて、あげたら喜んでくれる人にあげた方がよっぽど良いと思った。ところが義母は、度々の私のその態度がよっぽど気に入らなかったと見えて、ある時私の実家の母にわざわざ電話した。「みとんさんは、私が野菜をあげようと言ってもいらない、いらないばっかり言う」と。その後母は私に電話してきて「いらなくても、ありがとうと言ってもらっとけば良いのよ。もらっといてうちに持ってくれば食べてあげるから」と言った。


確かにそうなんだけどね。いらない、いらないばっかり言ってないけどね。いる物はちゃんともらってるけどね。と思う心もあり。


いらない物をいらないって言っちゃダメなのか、もらえる物はなんでもかんでも有り難くもらうのが礼儀なのか。もちろんこれが他人だったら私も社交辞令でも何でももらっときますよ。だけど身内だから許されていいのかなぁと思うところもある。

義母も、母に愚痴って気が済んだのだろう。それからはいらないって言っても、母に電話するような事はしなくなった。



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