記念硬貨は記念だから
うちの旦那さんのお父さんは、生前いろんな物を集めるのが好きだった。記念切手はシートで購入していたし、5円玉や50円玉を紐に通して集めていたし、陶器も好きだった。中でも“記念硬貨”は特に好きだったようで、何かの記念硬貨が発売されるとなると、発売日に必ずゲットしていた。旦那さんは兄と2人兄弟だが、私が旦那さんと結婚した時に、義父は兄弟に均等に記念硬貨を分けてくれた。
正直、私も旦那さんも記念硬貨に思い入れなどなく、早々に使うか現金にするかしてもよかったのだが、なんとなくそれも気が引けてずっと金庫で眠っていた。義父がいつも言っていたのは、記念硬貨は額面の金額を割ることはないので、何年経っても価値はそのままだから良い、と。義父には記念硬貨を温めて価値が上がるのを待つという気持ちはなかった。
先日我が家にある記念硬貨をそろそろお金に替えようという話になった。いつまでも金庫に置いておいても、置いておく意味とか価値を感じていない私たちにとっては“使えないお金”なだけだ。兄夫婦はとっくにお金に替えていることだし、義父への義理のようなものももういいだろうと考えた。銀行に持って行けば、額面通りのお金に替わる。しかし私たちは、ちょっとでも価値が上がっているならと欲をかいた。記念硬貨の買い取りをしているお店へ持って行ってみた。
2軒まわって、1軒目は“東京オリンピック”の硬貨だけほんの少し額面より高く買ってくれると言ったが、他のものはそのまま。2軒目はそれすらもなく、全部そのまま。そのままの金額でお金に替えると、逆に手数料を取られてしまうので、「銀行に持って行ったほうが良いですよ」と親切にも教えてくれた。
そんなに価値が上がるとは思っていなかったものの、せめて1割増しくらいにはなるかなあと思っていたのでガッカリした。
結局、銀行で替えてもらうことにした。
記念硬貨の蒐集なんて、お金に余裕がある人の道楽であって、それで儲けようなどと思ってはいけないのだ。
記念硬貨は記念の品だから、大切に持っておくのが正しいのだった。
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