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心遣いとビタミンCが沁み渡る1本


以前私が飲みたいと言っていたフルーツティー、その名も『太陽のアセロラティー』。あれ以来、スーパーやコンビニ、ドラッグストアに行く度にペットボトルの棚を探してみるものの、結局会えずじまいだった。私の記事に飲んだことがあるという方からコメントがきて、「アセロラ感、低めでした」
と教えてもらった。そういえばそれを飲んでいた同僚に感想を聞いた時も、
「普通に美味しいティーです」と言うにとどまり、特にアセロラの部分には触れていなかったことを思い出す。


とはいえ、やはり自分で確かてみたい。ずっとそう思って、ずっと出会えなかった愛しのティーが、思わぬところから私の元にやって来たのだ。


ある日の朝のこと、朝礼の終わった職場で私は新聞各紙を整理していた。これは毎朝のルーティン。前日、やんごとなき事情で1日年休を取ったので、私が片付けるべき新聞は4紙×2日分だった。整理と同時に、職場に関係ありそうな記事があればコピーして各所に配るという業務も担っている。すると私の左横から

「石元さん」
と呼ばれた。はい、と応えながら見ると、そこに私の隣の隣の席の女性が“こっそり”という感じで前屈みになりながら私の顔を覗きこんでいた。

「前に言ってた『太陽のアセロラティー』もう飲まれましたか?」
「いや、まだなのよ」

と私の返事が終わるタイミングでおもむろに彼女は手に持った保冷バッグからペットボトルを取り出した。

「これ、よかったら。うちの近所のスーパーに売ってました」
「えっ!えー!!良いの?え、嬉しい。あ、待って、お金払うから。え、嬉しい」

ことのほか、声がでかくなる私。バッグから財布を取り出そうとしていたら「あ、いえ、お金はいいです。いや、ホントに‥大丈夫ですから」と遠慮され、

「だったらまた、他の物でお返しするね」
「いえ、そんな。石元さんに是非飲んでいただきたかったので」


なんちゅう、可愛いことを!
そう、彼女こそ、彼女が飲んでいた『太陽のアセロラティー』を私が目ざとく見つけ、どこで買ったのかなどと私が質問を浴びせた、それが彼女だったのだ。

「いやぁ、マジで嬉しい、ホント嬉しい」
「そんなに喜んでもらえると私も嬉しいです」
「ホントありがとうございます。嬉しいーー」

私の興奮に、他の人たちも気付き、何事かと興味を持たれ、ここに至るまでの事情を簡単に説明しては「よかったですね」と讃えられた。


その日の私はある出来事(通称・ちゃまの修学旅行)により少しだけ気弱になっていたから(それについてもまた書こうと思う)、それを払拭してくれるような優しい心遣いがことさらに沁みて、嬉しさが倍増したのだ。だってさ、わざわざ買って来てもらえるなんて思ってなかったから。そんなの、私がまだ飲んでないって言ったら「どこそこにありましたよっ」って教えてくれるだけでも充分親切だし嬉しい。もし飲んだことあるって言ったら、せっかくの彼女の心遣いが、無駄にはならないにしても、私の喜び方だって半分くらいになってたかもだ。
だけど、スーパーでそれを見つけて、私のことを思い出して、買ってってあげようって思ってくれて、実際に買って来てくれて。こんな嬉しいこと、ないよ。ホントに。

しばらく冷蔵庫に入れ、10時のおやつにいただく。ホントはそのまま持ち帰って、家でいつものポジションで写真を撮りたかったが、もらった手前、やはり目の前で飲むのが礼儀かなって。とか言ってますけど、ホントは少しでも早く飲んでみたかっただけ。

少し飲んじゃったやつ


「わ、アセロラだぁ‥」
香りも、そして味も、ちゃんとアセロラだった。アセロラ感低めなのは、アセロラ以外にもリンゴやぶどうなどのフルーツのエキスが入っているからだ。だけど、飲んだ時の、あの喉に沁みるビタミンCの感じ(個人の感想です)は、間違いなくアセロラであった。ずっと探していたティーが思わぬカタチで私のところに来てくれたことに感謝しかない。

後日、私から彼女へのお返しは、ここらでは人気のパン屋さんのガトーショコラ(冷蔵)。袋を見て「え、これ、あそこのパン屋さんですよね?」
と問われ、「え、知ってる?」と問い返すと、
「はい、あそこのスムージーが大好きでよく行くんです」
だそうで。彼女にとってガトーショコラが正解だったのかどうかは分からないけど、とりあえず若者も通う人気店の商品ってとこだけはハズしてはいない(つもり)。



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