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あなたのスキを数えましょう

「ねえ、好きって言って」
 と彼女は言った。
「好きなんて、簡単には言えないよ」
 と僕は答える。

「どうして?」
「だって本当に好きじゃないとさ、軽々しく好きなんて言えない」
「私のこと嫌い?」
「嫌いじゃないけど」
「じゃあ好きなんじゃない」
「そういうことじゃあ無いよ。嫌いじゃあないけど、好きって言うほどは好きじゃあない。どうでもいい」
「いいじゃない。あなたが私に好きって言ってくれれば、私は嬉しいんだから。私を喜ばせてくれればそれでいいの。だから私を喜ばせてよ」
「本当はそれほど好きじゃなくても?」
「そう。それほど好きじゃあなくても、好きって言ってくれればそれで嬉しいんだから、それでいいのよ」
「そんな嘘の好きは嫌だ」
「あなたが嫌でも私はそれでいいんだから、それでいいじゃない」
「何でそんなに好きにこだわるんだよ?」
「だって、好きを集めてるんだもの」
「好きを集めてる?」
「そう。好きを集めてるの」
「何で?」
「嬉しいから」
「それだけのために?」
「うん」
「それ、おかしいよ」
「おかしくない。おかしくない。だから好きをちょうだい」
「言うだけでいいの?」
「うん。言うだけでいいの」
「わかった」
 僕は一回深呼吸して、思い切って言った。

「好きだよ」
 ああ、恥ずかしい。
「ありがとう!」
 そう言って彼女は僕の右手を両手で握った。
「私も好きよ」
 と言ってウィンクをした。

「はい、じゃあね」
と言って席を立ち、僕に手を振った。
「え? 何?」
「あなたには好きをもらったから、次の好きをもらいにいくの」
「何それ?」
「今日はね、12個めの好きをゲットしたけど、まだまだ足りないのよ」
「え?」
「昨日は15個ゲットしたから、もうちょっと頑張って記録更新しなきゃ。じゃあね〜」


 そうして彼女は去っていった。
 たぶん明日も僕に好きって言わせるつもりだろう。


 あ〜な〜たのス〜キを♪
 か〜ぞえましょ〜う〜♪


おわり。

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