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ミスター・フーの事件簿 1

 張本刑事の相棒に、中国人刑事のフーがついた。
 漢字で「何」と書いて、フーと読む。
 「本気」と書いてマジと読む、とは違う。
 似てるけど。
 いや、似てない。
 いや、どうでもいい。
 ともかく、中国語で「何」をフーと読むのだ。

 二人は早速事件現場に向かった。
 マンションの一室で、ソファーに座った男が死んでいた。外傷は無かった。
 男の前にはテレビがあった。

「テレビは発見当時は付いていたのですが、捜査の邪魔になるなので今は消してあります」
 と鑑識が両刑事に言った。
「テレビを見ていて死んだのか? 死因は何だ?」
 と張本刑事はつぶやいた。
「カンディエンシー」
 とフーが言った。
「感電死?」
「カンディエンシー」
 そう言って、フー刑事は張本刑事を見た。

 その後の調べで死因が感電死だという事がわかった。
 張本刑事は驚く。
 恐るべしフー刑事。
 一目で死因を言い当てるとは。

「どうしてあのとき感電死だと言ったんだ?」
 と張本刑事はフー刑事に尋ねた。
「テレビを観ていました。そう言っただけです」

 張本刑事には意味がわからなかった。
 フー刑事は中国語で「テレビを観る」と言ったのだ。
看电视カンディエンシー」。
カン」は観る、「电视ディエンシー」はテレビの意味なのた。


 張本刑事は、ただ不思議そうな顔をして、フー刑事を見ていた。

什么シェンマ?」。
 とフー刑事は言う。
 それは、「何?」という意味だ。


つづく。

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