フォローしませんか?
シェア
僕は花屋さんで花を買う。それは、君への花束だ。 花束を買うだなんて恥ずかしくて、今まで僕は君に花束を贈ることなんかなかった。 でもさ、これは君との約束だから。今日僕は、君に花束を贈る。 君へのプレゼントを買うのは、いつもドキドキする。 君の誕生日に僕は宝石店にゆき、ネックレスを選ぶ。 どんなものが君に似合うだろう? 君の喜ぶ顔が見たい。君の笑顔を僕は思い浮かべる。 君の瞳はとても輝いていて、僕にはとてもまぶしい。 「私ね、花束をもらうのが夢なんだ」 君は
「私がまだ若かった頃、ラジオを聴くのが好きで、いつも好きな曲が流れるのを待っていたの。そしてその曲が流れると、一緒に口ずさんでいた。そうしていると笑顔になれたの。 それはとても幸せな時間だった。それほど昔には感じない。 どこかに消えてしまったと思っていたけど、また戻ってきたの。まるで懐かしい友達のように、みんな大好きだった曲たち」 彼女は遠くを見つめて僕にそういった。 「僕も好きだよ。イエスタデイ・ワンスモア。ノスタルジックでいいよね」 僕は彼女にそう言った。
「どうしてスマイルくれないの?」 と僕は彼女に訊ねた。 「ただでスマイルなんて、あげるわけないじゃない。だってあなたのことが好きでもなんでもないから」 と彼女は答えた。 「でも君は日本人だよね? 外人みたいなこと言わないでよ」 「外人じゃなくて、あのちゃん」 「あのちゃん?」 彼女はスマホのユーチューブであのちゃんの「スマイルあげない」を僕に見せた。 「だから何?」 「あのちゃん」 「何何? 君はアイドル? っていうか塩対応? ぱるる?」 「ぱるるじゃなくて、あのちゃ
「私ね、自分から友達になって、って言えないタイプなのよ。だからいつも待っているの」 と彼女は言った。 「わかるよ。僕もそうだから」 と僕は答えた。 彼女と僕は図書館で出合った。 僕は以前から図書館でたびたび彼女をみかけていた。そしていつもの子だなあと気になっていて、僕はいつも彼女を見ていた。 彼女はメガネをかけていて、とてもおとなしそうな文学少女に見えた。 僕はたびたび彼女と目が合った。それは僕が彼女のことをいつも見ていたからだ。 彼女の読む本が、僕は好きだ
僕は君が恋をする瞬間を目撃した。 君は彼をひと目見て恋に落ちた。 まわりがキラキラと輝いて、光がさしたようだった。 君の目もキラキラと輝いていた。 人が恋をする瞬間、それは素晴らしい瞬間だ。 僕はその瞬間を目の当たりにしている。 僕は彼女のことが好きだ。 ラブではなくライク。 なぜなら僕が彼女と付き合うだなんてことは、現実的ではないからだ。 彼女は美しいし性格もいい。 そんな彼女を独り占めできるほど、僕は素晴らしい人間ではない。 彼女に対するリスペク
「人の心はね、縛ることができないのよ。どんなに相手のことを思ったり、どんなに色々なことをしてあげてもね、人の心は縛れないの。人の心は努力でどうにかなるものじゃあないの」 と彼女は言った。 「僕が今まで君にしてあげたことはすべて無駄だったっていうこと?」 と僕は彼女に聴き返した。 「そうね、無駄。昔は昔、今は今。終わってしまったものは、そこで終わり」 「そんなことない。僕が今まで君を愛してきたことは無駄じゃあないし、僕が君を愛していることは無駄じゃあない」 「あなたにとっ
「イタリアの映画でも観てるようだね」 と僕は彼女に言った。 「何それ。イタリア映画が好きなの?」 と彼女は僕に問い返した。 「うん」 「イタリア映画ってどんなの?」 彼女は素朴な疑問を僕に投げかけた。 「ニューシネマ・パラダイスとか」 「映画通が好きなやつね。何か聞いたことある。観たことないけど」 「それから昔はマカロニ・ウエスタンっていうのが流行ったんだ」 「何それ」 「イタリアで作られた西部劇だよ。そもそも西部劇ってアメリカの西部開拓時代の話なんだけど、それがな
ロウはコウの幼馴染だ。 小学校3年生のときに、ロウはコウの通う小学校に転校してきた。 ロウは帰国子女だ。イギリスから日本に帰ってきた。 「僕はロウです。ジュード・ロウのロウです」 とロウは自己紹介をした。 しかしクラスメートは誰一人ジュード・ロウを知らなかった。 「柔道のロウ?」 とみんなに誤解され、それからロウは「柔道のロウ」と呼ばれるようになった。 しかたなくロウは柔道を習うことになった。 中学校のとき、コウはロウと付き合うことになった。 ロウはモテ
「あなたって、会話の中にちょいちょい私を誘ってくるわよね? それってサブリミナル効果を狙っているの?」 と彼女は言った。 「え? サブリミナル効果って、映像の中に人が認識できない一瞬の映像を入れ込んで潜在意識に直接刷り込ませる効果のことだよね? 意識できている時点でサブリミナル効果って言わないんじゃないか?」 「私は感が良いの。私はいつだって用意周到なの」 何でここで「シン・仮面ライダ」ーの緑川ルリ子のセリフをぶっこんでくる? それって自分を浜辺美波と錯覚させて魅力的
「僕は君にとって、保険でしかないんだろう? 君はたくさんの男と付き合っていて、僕なんかをあてにしていない。僕と付き合ってみて、それなりに悪くなかったけれど、もっといい男が見つかったからそっちに乗り換えて、でも保険として僕とも付き合い続けて、必要がなくなったら僕を捨てるつもりなんだ」 「そうよ。でも今のところあなたと別れるつもりはないけど」 「二股も三股も四股もかけて?」 「うん」 「どうしてそんなことができるの?」 「だって、あなたは稼ぎが少ないじゃない。他の男は豪華なディナ
僕は10年ぶりにその街を訪れた。 行きつけだったバーのカウンター席に座る。 バーの片隅には小さなステージがあり、そこでは若いロック・バンドが演奏をしていた。 僕はバーボン・ウイスキーをロックで頼み、一口舐めるように味わう。そしてよく冷えたチェイサーを口に含む。 バンドのヴォーカルと目があった。 レッド・ツェッペリンのアルバムのジャケットのように酒を飲む僕の姿を、その男は気に留めているようだった。 まるでタイムスリップしたかのようなオールドスタイルの男が珍しい
僕の鞄の中から一枚の紙切れが出てきた。 それは映画のチケットの半券だった。 それを見て、僕は朋美の事を思い出す。 僕と朋美の関係は、ちょっと不思議なものだった。 二人とも映画が好きで、インターネットのブログを通して僕らは知り合った。 何と言うか、僕と朋美は奇妙なところが似ていた。 それは、映画は一人で観に行くものと決めているところだった。 観る映画のタイプも、趣味趣向も、考え方も、まるで違っていた。 だけどお互いに変わり者が好きだというところが似ていた。
「noteってさあ、何も響かないんだよね」 と彼女は言った。 「響かない?」 と僕は彼女に訊ねた。 「何をやっても無駄だって言うこと。 イベントに参加しても、お題に参加しても、ハッシュタグをつけても、その場限りでぜんぜん伸びないのよ。ただただ麻薬に取り憑かれたように、毎日スキしてスキ返しをもらって、それを続けるしかないの。スキをしないとスキがもらえないの。内容云々って関係ないのよね。イベントとかに参加しなくたって、いいものを書いていれば読んでもらえるし、長く続けていれ
「仮面ライダーの蜂女ってさあ、何だかセクシーよね」 と彼女は僕に言った。 「西野七瀬?」 と僕は聴き返す。 「それは「シン仮面ライダー」のハチオーグ。西野七瀬もいいけど。あらら」 「初代仮面ライダーの蜂女のことか。でも何で知ってるの?」 「なんだか最近昭和に興味があって、仮面ライダースナックのカードとかいろいろネットで観ていたのよ」 「ふうん」 「でも蜂ってさあ、一刺しすると死んじゃうのよね。最終手段なのよね。刺すと終わりのよね」 彼女は急にシリアスな表情になった