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僕は保険

「僕は君にとって、保険でしかないんだろう? 君はたくさんの男と付き合っていて、僕なんかをあてにしていない。僕と付き合ってみて、それなりに悪くなかったけれど、もっといい男が見つかったからそっちに乗り換えて、でも保険として僕とも付き合い続けて、必要がなくなったら僕を捨てるつもりなんだ」
「そうよ。でも今のところあなたと別れるつもりはないけど」
「二股も三股も四股もかけて?」
「うん」
「どうしてそんなことができるの?」
「だって、あなたは稼ぎが少ないじゃない。他の男は豪華なディナーに連れて行ってくれるし、海外旅行も行けるし、ブランド物のプレゼントだってたくさんくれる。それでいて私に多くを求めてこない。私が魅了的であればそれだけで満足してくれて、何でも与えてくれる。私のことを独占しようだなんて、誰も思わないから」
「なるほどね。僕は、売れない小説家だから、君の期待には答えられない」

 彼女は賢い。
 どう考えてもそれにはメリットがある。
 利用されている男たちだって、それなりにメリットがあるから彼女と付き合っている。
 ウィンウィンウィ〜ンだ。
 彼女は、気絶するほど小賢しい。

「でも、私はあなたと別れない」
「どうして?」

「あなたのことが好きだからかな」

おわり。

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