どした、恋した?
僕は君が恋をする瞬間を目撃した。
君は彼をひと目見て恋に落ちた。
まわりがキラキラと輝いて、光がさしたようだった。
君の目もキラキラと輝いていた。
人が恋をする瞬間、それは素晴らしい瞬間だ。
僕はその瞬間を目の当たりにしている。
僕は彼女のことが好きだ。
ラブではなくライク。
なぜなら僕が彼女と付き合うだなんてことは、現実的ではないからだ。
彼女は美しいし性格もいい。
そんな彼女を独り占めできるほど、僕は素晴らしい人間ではない。
彼女に対するリスペクトというか、憧れ。彼女は僕のアイドルだ。
だけどもあの日から彼女の様子がおかしい。
なんだか上の空だったり、お茶をこぼしたり、何でもないところでつまずいたり。
彼女は恋をしているのだと僕は思う。
恋をしている彼女も僕は好きだ。
だけどもしばらくして、彼女は元気がなくなった。
「どした?」
と僕は彼女に訊ねた。
僕らはスターバックスでコーヒーを飲んでいた。
「告った、振られた」
彼女はそう言って下を向いた。
「そっか」
僕は残念な気持ちだった。
「元気出せよ。元気な君が僕は好きだから」
「うん」
「君の好きなケーキを奢るよ」
そう言って僕は席を立ち、カウンターに行って彼女の大好きなケーキを頼んだ。
僕はケーキをテーブルの上に置いた。
「あなたは私の好みが一番わかってる」
彼女は大好きなケーキを目の前にして、とてもうれしそうな顔をして微笑んだ。
「うん、男の好みもね。君はイケメンが好き」
「うん。だからいつも振られてばっかり」
彼女はそう言ってペロッと舌を出すと、ケーキを一口ほおばった。幸せそうな表情の彼女。
「身の程知らずだよね」
「うるさい」
彼女は僕を睨んだ。そしてまたケーキを口にほおばる。
僕は美味しそうにケーキを食べる彼女を見ている。僕はそんな彼女を見るのも好きだ。
「見かけよりもさ、中身じゃないの? 君のことを本当にわかっている人と付き合ったほうがいいよ」
僕は彼女にアドバイスをした。
「うん、でもね、そんな人いないから」
そう言った彼女は、頭の中に自分の知っている男の数々を思い浮かべているようだった。
恋多き女の頭の中。そこにはたくさんの男のリストがあるのだろう。
「いた!」
と彼女が唐突に叫んだ。
「え、何? ケーキの中に何か入ってた?」
僕は慌てて彼女に訊ねた。
「違うわよ。痛いのいたじゃなくて、発見したっていうこと」
彼女は僕の顔をまじまじと見つめた。
彼女の目が輝いた。
「どした?」
と僕は訊ねた。
「恋した」
と彼女は答えた。
おわり。
もしも僕の小説が気に入ってくれたのなら、サポートをお願いします。 更なる創作へのエネルギーとさせていただきます。