マガジンのカバー画像

短編小説

68
僕の短編小説集です。
運営しているクリエイター

2023年1月の記事一覧

恋する花蓮

 竜崎真彦は一目惚れだった。  彼女は竜崎にとってドストライクだった。  彼女の名は森山花蓮。  映像制作会社に務める女性だ。  竜崎はロックバンドでギターとヴォーカルをしていた。  色々と事情があって、バンドは解散し、今は事務所で飲んだくれている。  だけども花蓮は荒野に咲いた花のように竜崎の目の前に現れた。  花蓮は可憐だった。  胸がときめいた。  心が踊った。  胸キュンだった。  イエロー・マジック・オーケストラの「君に胸キュン」が歌いたくなった。  竜崎はカ

あなたのこと

「あなたのこと、片思いするほど好きじゃない」  と彼女は言った。 「どういうこと?」 「だから、あなたが私を追いかけてくるのなら、私はあなたを追いかける。だけど追いかけてこないあなたを私は追いかけない。そういうことなのよ」 「どういうこと?」 「どちらでもいいっていうことなの。あなたが私にとって、そういう存在だっていうことなの。一方的に追いかけるほど好きじゃあないって言うこと」 「どういうこと?」 「あなたが急にいなくなっても、私はぜんぜん構わないし、気にも止めないっ

コスパ

「アップルの製品ってさあ、コスパが悪いよね。確かに性能は良いし魅力的なんだけど、高すぎるって思うんだよ。確かに良いけどこんなに高い? って思うんだ。お金持ちはさあ、値段なんか気にしないで好きなものを買うから良いんだけど、やっぱり庶民はさあ。コスパなんだよね」  僕は彼女にそう言った。  彼女はそれに対して自分の意見を述べた。 「最近のお笑いってさあ、コンプライアンスだなんだあったけれど、一周回って辛口なものが受けるようになってきたわよねえ。ほら、ウエストランドがM1で優勝し

私の気持ち

「noteでエロい記事があるといいなあ、って思うんだけど、自分がそれにスキしたって知られるのが恥ずかしいからスキをできないの」  彼女は僕にそう言った。  僕と彼女は喫茶店でコーヒーを飲んでいる。  ときどき会って、こうしてコーヒーを飲んで、他愛のない話をする。そんな関係だ。   「気に入った記事があってスキするんだけど、コメント欄に他の人が書いたコメントがいっぱいあるからコメントできないの」 「うん」 「好きなnoterさんがいて、メンバーシップに加入したんだけど、その人が

ドンキで買った

「ドンキで買ったんだけど」 「え? 何が勝ったの? 1番くじでB賞が当たったの?」 「エヴァの2号機が当たったのはあんたでしょう?」 「うん」 「また殴られた?」 「なんでそうなるの?」 「欽ちゃんか?」 「そうじゃなくて、今年はうさぎ年でしょう? だからこれ」  彼女はドンキのレジ袋からそれを取り出した。  それはバニーガールのコスプレ衣装だった。 「じゃあ着替えるからあっち向いてて」 「ジャンケンポン」 「あっち向いてホイじゃないから」 「だるまさんが、転んだ」 「