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「男の人はね、胃袋を掴むのが一番なの。でもあなたには無理ね」 と親友のさゆりは亜希子に言った。 そうだ、亜希子に料理は無理だ。 絶対に無理だ。 それは断言できる。 だったら他の方法を考える。 アウトソースだ。 ウスターソースだ。 いや、それは違う。 誰かに頼めばいいのだ。 誰に? 亜希子は考える。 そして思い浮かぶ。 弟の健介だ。 健介は料理が得意で、最近小さなレストランをオープンしたのだ。 亜希子に作戦が思い浮かぶ。 「うん、これならいける
僕のアパートの隣の部屋に、明かりが灯った。 僕のアパートは新築で、まだ住んでいたのは僕一人だったので、「誰かが引っ越してきたんだあ」と僕は思った。 残業で遅くなった会社の帰り、暗いアパートの部屋に明かりが灯っているのを眺めて、僕の心は少しばかり安らいだ。 アパートの部屋のドアを開けて、明かりをつける。明かりが灯っていたのは僕の部屋ではない。暗い僕の部屋が、明るくなった。 着替えをして少しすると、僕の部屋のドアがノックされた。 僕がドアを開けると、そこには可愛ら
「これ、食べる?」 と彼女はバツが悪そうに、僕にチョコレートの包を手渡した。 僕が仕事の相談で彼女に話しかけたとき、彼女は丁度オフィスの自分のデスクの引き出しを開けて、チョコレートを一口食べようとしていたのだ。 そこで僕と目があってしまったので、仕方がなく手に持っていたチョコレートの包を僕に差し出したのだ。 「あ、チョコレートなんて食べないよね。ごめん」 と言ってその手を引っ込めた。 「チョコレートなんて嫌いでしょう? チョコレートが似合わない顔しているものね。バ
「僕は僕一人だけで、全部をやりたいんだ。そうしないと、僕の100パーセントにはならないから。ほんのちょっとでも僕の感覚と合わないと、気持ちが悪いし我慢ならない。だから君と協力して創作することはできない」 と僕は彼にきっぱりと言った。 ポール・マッカートニーは、自分の家のスタジオですべての楽器を演奏してオーバー・ダビングすることで曲を作り、McCartneyというアルバムを作った。このアルバムは2作目、3作目が作られている。 山下達郎は、自分の声だけをオーバーダビングし
僕は彼女のアパートで、クリスマス・イヴを過ごす。 チャイムが鳴り、彼女は玄関のドアを開ける。 サンタクロースの衣装を着た男が立っている。 クリスマス・イヴは、宅配便の配達員もサンタクロースの衣装だ。 彼女は荷物を受け取り、サインをする。 「サンタクロースがクリスマス・プレゼントを持ってきた」 と僕は言った。 「これって私がAmazonの欲しいものリストに入れて、あなたが買ってくれたものよね。何だかカタログギフトみたいだけれど」 と彼女はそっけなく答えた。