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ちょっと怖い話 「愛犬から飛び出してきた謎のケモノ」

今の場所に移住してからは、トラブルらしいこともなく穏やかに暮らしてきました。ただ、一昨年だったか、本当に何年かぶりで怪奇現象のようなことを体験しています。まだ完全には解決していませんが、どのようなことか書いておきたいと思います。

愛犬にふりかかった災難

その頃、よく行く観光神社では妙なことが起こっていました。
それまで、散歩がてら仲見世に立ち寄っては、そこのスタッフさんや参拝客に可愛がってもらっていた愛犬でしたが、ある日を境に店内に入れなくなったのです。うちだけではありません。他の常連さんやスタッフさんの犬も、店内に自由に入ることができなくなっていました。

仲見世の人たちに聞いた話では、犬を嫌う人がいてクレームが来るようになったということでした。それも執拗に。犬の入店だけではなく、スタッフさんや常連客のおしゃべりにまでクレームが来たというのです。
それまで、それぞれの犬を囲んで集まった常連さん達とおしゃべりするなど、楽しい時間を過ごしてきました。ところが、その時間が急に壊されてしまったのです。

ただ、その神社では境内自体は犬の散歩や同伴を歓迎しています。私も直接社務所に問い合わせていますが、禁じているのは楼門より先の拝殿周りだけです。一体どのような人物からのクレームかわかりませんが、急に周囲の様子が変わったことに困惑した愛犬は大きなショックを受けたのでしょう。
一時は表情も変わってしまい、元気がなくなり、お腹を壊すなど体調を崩してしまいました。ショックで免疫力が低下したのか、治療中だった部位も一気に悪化したのです。

「少しの間、我慢しようね」
「みんな、ぷるのことを嫌いになったんじゃないのよ^^」
と説明しますが、犬は人間の細かい事情までわかりません。飼い主として頭が痛い問題でした。

正体が見えない

それにしても、犬の入店だけでなく、スタッフさんや常連客との談笑にまでクレームをつけるとは妙です。
かつて人の嫉妬や逆恨みの念で苦しめられた経験のある私は、思い立って、愛犬が寝ているときに簡単なお祓いのようなことを試してみました。そして、そのまま就寝しようとしたときです。

薄暗がりの中、愛犬が寝ている方から何かが勢いよく飛び出て来たかと思うと、布団に潜り込んで私の右手の甲にかじり付いたのです。猫に噛みつかれたときのような痛さで、そのまま私の右手にしがみ付いています。  

私は、愛犬が寝ぼけているのかと思いました。左手でそっと触れてみると、確かに実体があります。猫ほどの大きさで毛があり、柔らかい生き物のようでした。ただ、愛犬とも違う感じがします。

灯りをつけて確認したいと思うのですが、照明のリモコンは離れていますしスマホにも手が届きそうにありません。それより、その生き物を逃がしたくないと考えたので、逃げないよう左手で押さえながらタイミングをうかがっていました。

そのうち、夫がトイレに立ったようでいくらか明るくなりました。そこで、何なのか確認しようとしたときです。

左手の中にあった毛の感覚がふっと消えていき、そのまま無くなってしまいました。逃げたという感覚ではありません。自然に手の中で消えたのです。愛犬の方を見ると、いつものように自分のベッドで熟睡していました。

神社の裏手に見えた黒い塊

仲見世の人たちの中には、直接注意された人もいるようですが、話を聞いてもどういうわけか要領を得ません。明確な人物像が見えないのです。

その騒動は、半年くらい続きました。一体神社で何が起こっているのか、私はあるとき目を閉じて様子を見てみました。すると、仲見世の横にあるトイレの脇辺りに大きな黒い蜘蛛のような塊があります。場所的には空き地になっているところです
が、ロープが張られていて入るわけにも行かず、何なのかはわかっていません。

ただ、その空き地に隣接していたお店がほどなくして閉店しています。聞けば100年ほど続いてきた繁盛店でした。

※この話は著書でも紹介しており、一部そのまま転載しています。

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