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訳あり物件での怖い話 「ストーカーが訴訟を起こしてきた」

訳あり物件は、そもそも家を建てるまでのつなぎとして1〜2年程度住む予定でした。結婚して間もなくハウスメーカーに相談をしていて、土地やモデルハウスを見ながらローンが組みやすいタイミングを図っていたのです。
次第に妙な現象やトラブルが起こり、一時は夫婦で失業するなど我が家は没落。神頼みでようやく逃げ出せましたが、最後に登場した意外なトラブルがこの訴訟でした。

いくつか前の記事で少し触れましたが、あの家にいるとき、私はとある人物にストーカーされていたようです。なんとも呑気な表現ですが、ストーカーと気づいたのは警察と弁護士の助言がきっかけ。
顔見知りの老人(当時80代)の迷惑行為に困った私は、早い段階で警察に相談し、同時に弁護士への相談も始めたわけです。そして、最終的には「あること」を理由にストーカーが訴訟を起こしてきたのでした。

なお、この記事は別アカでアップしていましたが、こちらに移動させました。11500文字ほどあります。心してお読みください。


「絶対に二人で会わないでください」

迷惑行為の一つは、老人が周囲に吹聴した嘘。
「奥さん(私のことです)が自殺を図ろうとしている」
「嘘つき夫婦で迷惑している」
といった作り話をこともあろうに私の身内にされてしまい、一時は大変な騒ぎになりました。老人は奥さんと小さな不動産会社を経営していて、うちはそこの物件を借りていました。はい、訳あり物件の所有者です。
迷惑な嘘とは、お金に関することで
「家賃を払っていない」
というもの。確かに、事情があって遅れが出たことはあります。しかし、こちらから訪ねて事情を伝えて謝罪し、とっくに解決済みです。そんなことをわざわざ報告される理由はありません。しかも、嘘つきと言われるのも謎です。

実は、老夫婦は億単位の借金を抱えていました。不動産をかなり所有していましたが、そのほとんどが融資で手に入れたもの。慢性的にお金に困っていることは住んでいるうちに気づきました。ただ
「自殺」
については、老人がなぜそんな嘘をついたのか、真相は今も不明なままです。変な人だと気づく前は事務所に立ち寄ってお茶をいただくことがありましたが、奥さんが倒れてから老人の奇行が増えたように思います。

先述した虚言の段階で怖くなり、警察に相談を始めたわけですが、そのときに言われたのが
「失礼ですが、お付き合いしていたことはありませんか?」
というもの。驚いたと同時に、もちろん秒で否定しました。すると

「話を聞いていると、恋愛感情があるような気がします」
「ストーカーになる可能性も否定できません」
「絶対二人で会わないでください」
「何かおかしな行動があったら、すぐ警察に連絡してください」

警察は真顔でそう助言してきたのでした。
そして、その後、シャレになれない事態に展開していきます。

弁護士の介入で激昂した老人の取った行動

それまで、些細なことで老人から呼び出されるたび、私は老夫婦の事務所を訪ねていました。
その少し前、夫の会社はリーマンショックの煽りで整理解雇、転職先はブラックで暴行を受け、怪我を負ったうえに不当解雇。働けない時期が続きました。私の取引先も次第に業績が悪化。一時は夫婦で失業していて、先ほども書いたように家賃が遅れたことがあります。そのときは夫婦でお詫びに伺って納得してもらっていますし、支払いも済んで解決しています。
ただ、考えてみると呼び出しを受けるようになったのは奥さんが倒れてから。しかも
「奥さんだけで来て」
と毎回私だけご指名があります。ところが、行ってみると何か用事があるということはほぼありません。フルーツや飲み物を用意してくれていて、世間話をするだけです。とても楽しそうに。

(考えてみると、確かにおかしい)

呼び出しが増えていた頃に起こった先述の虚言騒動。
私を呼び出しては楽しそうにおしゃべりに興じていたのに、裏ではわけのわからない嘘をわざわざ私の姉に電話して伝えていたのですから、気味が悪い以外にありません。
私は警察の助言通り、老人を訪問することはやめました。

そして「自殺」や「嘘つき夫婦」と吹聴したことは撤回してもらおうと、弁護士に相談を始めました。弁護士に委任して謝罪を求める文書を内容証明郵便で発送。文書には
「姉に伝えた根拠のない嘘を撤回して謝罪すること」
「今後電話や面会に応じたくないこと」
「本件の回答は弁護士を通してもらうこと」
も書いてもらいました。物件の契約者は夫ですから、契約に関することは夫とやり取りできれば十分な筈です。
弁護士に委任したことで、感情を抑えた無難な文面にまとまりました。

ところが・・・。
内容証明郵便が届いた頃、老人から私の携帯に着信が。もちろん出ませんでしたが、着信は立て続けに数回ありました。
マナーモードにして放置しておくと、今度は自宅にいきなり訪問。それも、すごい剣幕です。着信があった直後でした。

インターホンを押しながら玄関ドアを叩き、わめく老人。
私は怖くなり2階へ避難。応対は夫です。玄関ドアを開けると同時に、老人の大きな声が聞こえてきました。

「奥さんを出せ!」
「出てこないと、お姉さんに言いつけるぞ!」

念のため、夫はスマホで動画を撮りながら対応していましたが、内容のほとんどは脅しです。

老人が言うお姉さんとは私の実姉で、その物件を借りる際に連帯保証人になってもらっていました。
「奥さんが自殺を図ろうとしている」
「嘘つき夫婦で迷惑している」
と嘘を伝えた相手も私の実姉です。当時、姉は神経の病気で退院したばかり。周囲が病状を気づかっていた時期につかれたとんでもない嘘で、非常に困りました。人質を取られているような感覚だったのです。

この日を境に、老人の行動はさらに常軌を逸していくのでした。

言い訳をする老人

夫に注意され、どうにか諦めて帰って行った老人。その後も納得いかないようで執拗に私と話そうとしてきましたが、そのうち、ようやく弁護士のもとに回答が送られてきました。ところが、謝罪は一切ありません。
「自殺のことはブログに書かれていた」
という言い訳が一行ほどで書かれていただけです。なのに、便箋は7枚にも及んでいます。弁護士から紙の束を見せられ
「ほとんどが、あなたに対する思いを書いています。読みますか?」
と言われたときは、気持ち悪くなりました。

誤解する表現でもあったのかと、念のため数年分のブログを全記事精査。
仕事が忙しい時期で、非常に迷惑しました。
ブログには、まったくそういった記述は見当たりません。精査した後、友人やブロ友さんしか読めないよう閲覧制限を設定。
すると、今度は
「ブログを公開しろ!」
と強い口調で弁護士に掛け合ってきたそうです。新しいアカウントの謎の人物からブロ友申請などもあり、老人であることはバレバレでした。
とにかく、警察がはじめに言った通り、契約者以上の感情を持っていることは十分理解できました。

警察の予想が的中

以降、老人の行動はあからさまになり、少しずつエスカレートしていきます。

あるときはこんなこともありました。
それは、仕事の手を休めてのんびりしていたときです。天気がよくて、リビングのカーテンからは心地よい日差しが入っていました。窓際のソファーでくつろいでいると、不意に愛犬が吠えたてます。何があるのか外に目をやった私は仰天しました。
隣家の塀越しに老人がリビングを覗いているではありませんか!目が合ってバツが悪いのか、慌てて隣家の庭から出る老人。夫に伝えて二階から見ていると、暫く近所をうろついた後、帰って行きました。

こんなこともあります。
夕方6時頃、近所のドラッグストアに一人で買い物に出ました。ドラッグストアへ行くには老人の事務所の前を通るのですが、事務所の営業終了時間は夕方5時。
当時、奥さんの介護をしていた老人は早めに帰宅していて、とっくにいない筈です。

ところが、ドラッグストアで一通り買うものを選び、レジに向かおうと向きを変えた私は身体中の毛が逆立つかと思うほど驚きました。なんと、1メートルも離れていない距離でその老人が立っていたのです!
そして、ニコニコと顔を覗き込みながら
「こんばんは^^」
と挨拶してきたのでした。

どこからついてきたのかはわかりません。私は無言で足早にその場を離れ、急いでレジを済ませると逃げるようにお店を出ました。そして、すぐ警察に報告。
「可能であれば写真も撮ってください」
と指示を受けましたが、とてもそんな状況ではありません。
ただ、幸い老人を見たのはこれが最後になりました。

侮辱罪成立。ところが・・・

いつまで経っても、嘘発言に対して老人は謝罪せず、弁護士を通して面会とブログ公開ばかり要求してきます。
私と姉の関係は壊されたまま。姉から相談された兄も私たちを疑いはじめ、
「オーナーに迷惑をかける困った妹夫婦」
として見られることに。
会社経営者という、世間体は立派な高齢者が、まさか異常な虚言癖の持ち主で妹をストーカーしているとは誰も思っていなかったわけです。

そんなとき、弁護士から聞かされたのが
「嘘の発言については侮辱罪に当たります。訴えることもできますよ」
というものでした。
ただ・・・。当時の私は精神的にまいっていて、何より老人の異常性が恐ろしく、とてもそんな気持ちにはなれません。
弁護士との契約は嘘への謝罪要求だったこともあり、一旦そこで契約は終了。

弁護士が離れてから、以前から相談していた警察に弁護士の見解を伝え、侮辱罪で刑事告訴しようと考えました。ところが、実際には無理でした。
親告罪の時効が成立していたからです。侮辱罪は親告罪にあたり、本人による刑事告訴ができます。警察も
「弁護士がそう言っているなら」
と告訴に乗り気でしたが、親告罪時効はわずか半年。怖さと気持ち悪さで思案しているうちに半年を過ぎていて、仕方なく諦めたのでした。

エスカレートする、老人の常軌を逸した要求

私はできるだけ外出を控え、不便な日々を送ることに・・。
一方、老人はあの手この手でいろいろな罠を仕掛けてきます。当時、すでに物件の解約を考えていましたが、なかなか次の引っ越し先が決まりません。
老人はといえば、引っ越しを阻止しようと必死です。実は、引っ越しは以前も何度か阻止されています。収入が落ちた時点の早い段階で検討したときは、家賃を下げる提案をされたために見送っていました。当時は親切なオーナーだと思っていましたが、実際の目的は違っていたわけです・・・。

さて、思案していると一通の内容証明郵便が我が家に届けられました。差出人は例の老人。内容は
「契約解除の通達」です。
これに、私たち夫婦は安堵しました。ようやく老人が諦めてくれた!そう感じたからです。あとは、物件を見つけて引っ越せばいいわけですから。

ところが・・・。
文書をよく読んでみると、おかしな内容であることに気づきました。解約するのは夫だけで、新たに私と契約すると書かれているではありませんか!
つまり、

「ご主人は解約するから出て行け。奥さんと契約するから今後のやり取りは奥さんとしかしない」

という、滅茶苦茶な言い分だったのです。解約の理由は
「家賃が遅れた過去があり、普段の態度が信用できない」
といったものでした。
今さら?という内容なうえに、夫婦で契約している物件を片方だけ解約するなんて聞いたことがありません。

滞納は何年も前のことで、解決済みです。頭のおかしい老人の話はスルーして、私たちは引っ越し先を探しました。ひとまず、老人には
「解除の件は了承しました。引っ越し先が決まり次第、お伝えいたします」
といった回答を内容証明郵便で送達。

ところが、これに対してすぐに老人から回答がきました。内容証明郵便が到着した翌朝という速さです。しかも、うちの郵便受けに直接投函されていたという気味の悪さ。
「引っ越し先が決まり次第退去」
には了承してくれてホッとしましたが、朝から玄関前をうろついていたことを想像し、怖くなりました。それに、単なる返事ではなく、また面倒な言い分も書かれていました。
仕方なく、こちらも返信を送付。老人は信用できないので、毎回内容証明郵便です。

回答を送ると、またすぐ老人からの返事が・・・。しかも、直接うちに持ってきて投函していく、という流れは何度か続きました。
ストーカー以前に、さすが暇な老人です。なので、相手から文書が来ても放置することに。それより引っ越し準備が先ですから。

この頃、別件で違う弁護士に相談中だった私は、老人が直接投函に来る件についても相談しています。
「メモでいいので、投函された文書ごとに日付を記録しておくといいと思います。文書は絶対に捨てないでください」
そうアドバイスを受け、来るたび夫が回収し、発見日時を記した付箋を貼って保管しました。

不可解な不当請求が始まった

この頃、相談を続けていた警察では
「奥さんが話をしに行くのを期待しているんじゃないだろうか」
「それで、無理な要求をしているようにも見える」
という意見が。
実際、契約解除に対して了承した後も、何かと面倒な文書を郵便受けに投函してきました。
そして、遂にこのようなものが届いたのです。それは、
「10年分の更新手数料をもらっていない」
というものでした。

これは非常に不可解で、そもそもその物件は更新というものがありません。更新していたのは入居時に加入した家財保険のみ。契約書を見ても、物件についてはどう読んでも「自動更新」の筈です。
そもそも、10年もの間一度も手続きを促す通知も受けておらず、私たちは
「また、変な要求が始まった」
と、うんざりしました。

ところが、さらに困ったことが起こっていたのです。この請求は姉宅にも内容証明郵便で送りつけていて
「妹さんが10年分の更新手数料を踏み倒している」
という表現をしていたことが発覚。さらに、家賃まで滞納していると報告していました。この家賃滞納にはカラクリがあり、うちが振り込んだ家賃を勝手に「ない筈の更新手数料」として計上していたのです。これも堂々と文書で送りつけてきたときは驚きました。なんという詐欺じじい!

姉は申し訳なさで憔悴し、私たちの近くに住む兄に相談。そして、兄は怒って私たちのところへ。私たちは、すっかり嘘つきでお金にだらしのない夫婦に仕立て上げられてしまったわけです。

不法占有で慰謝料を要求

兄にも姉にも
「更新手数料はない」
「家賃の滞納もない」
と説明しましたが、すっかり老人に騙された二人は信じてくれません。そこで、訪ねてきた兄にネットバンキングの振り込み履歴を見せ、家賃の滞納がないことを確認してもらおうとしますが、
「改竄してるんじゃないか?」
とまで言われて悲しくなりました。確かにデジタルデータを作る仕事をしていますが、流石にそんなことはしません・・・。
やむなく、銀行に電話し、担当者からネットバンキングの説明と振り込みの信憑性について説明してもらうことに。そこで、兄の誤解はようやく解けました。

ところが、お金についてはこれだけではなかったのです。
姉のところには
「妹さんが不法占有をしている」
「家賃も払わず出て行こうとしない」
と嘘を重ね、それを理由に賠償金まで請求していたことが発覚します。

ストーカーの罠にはまっていく・・・

一方で、姉には
「妹さんは、うちが提供する他の物件に入ってはどうだろう?私の家の近くなら、今より賃料が安い物件がある」
と提案していたことが後日判明。これは、姉からの電話で聞いた話です。

すっかり騙され、老人を良い人と思い込んでいる姉は
「迷惑をかけているのに、いい人じゃないの。お言葉に甘えて勧めてくれる物件に引っ越しなさい」
などと言ってくる事態に・・。
呆れてしまい、同時に恐ろしくなりました。
本当のことも知らず、ストーカーに妹を差し出そうとしているわけですから。

(もしかしたら、自殺騒動の嘘も、姉を味方につける伏線か?)

そう考えるようにもなりました。
そして、老人の企みの全容が見えてきました。

夫との契約解除をして出て行ってもらい、私と新たに契約して自分の家のすぐ近くに住まわせるという企みです。
ただ、そんな権限は老人にはありません。法的拘束力もなく、そもそもすべてが老人の作り話なのですから。

意外な救世主

数日後、また兄がやってきました。何やら、神妙な顔をしています。用件は姉からの依頼で
「お金はうち(姉)が払うから、話をまとめてきて欲しい」
というものでした。これを聞いて、愕然とする私と夫。そもそも払うべきお金などないというのに・・・。
家賃は払い続けているし、引っ越しのタイミングについても老人は了承しています。うちは、その書面も持っているのですから。

契約書と老人からの数通の文書を見せると、兄は更新料の請求や言い分がおかしいことに気づいてくれました。家賃については、先日すでに誤解は解けています。
それでも、どこか疑ってはいるようで
「何か、失礼があって強硬な態度になっているんじゃないか?とにかく、一緒に行くから、まずは謝ろう」
そう兄に促され、私は心臓がバクバクしました。

(気持ち悪い、会いたくない)

兄にストーカーなどと言っても信じないでしょう。
私は別室へ行って警察に電話をし、事情を伝えて相談。
「無理に行くことはないと思いますが、何かあったらすぐ通報してください」
そう言われてどうにか気持ちを押さえ、緊張した面持ちで兄たちのところへ戻りました。

まず相手の都合を聞こうという兄の指示で、夫が老人に電話。夫の機転でスピーカーフォンにし、ついでに私がタブレットで録音を開始。
老人は数回の呼び出し音で出ました。まだ夕方6時を回った頃だというのに
「こんな遅い時間に失礼だ!」
「会いたくない!」
と、わめき散らし、拒否します。
家賃の件も、不法占有と主張して請求してきた賠償金の件も、根拠を聞くと怒鳴るだけ。
「知らん!そんなもの、そっちの弁護士に聞け!」
何を聞いてもまったく回答しません。

そこで夫は
「では、家内が伺うのはどうでしょうか?」
と提案してみました。すると、
「・・・そうですねえ。奥様の声も聞いていませんし、お顔も拝見していませんからねえ。で、いついらっしゃいますか?」
と突然言い分を変える老人。会う気満々です。しかも、声まで変わっているではありませんか!
機嫌がよくなったのか、私への思いなどをベラベラ話し続け、会うのが楽しみといった様子です。

夫は、私は今仕事中であると適当に誤魔化し、日程は後日改めてご相談しましょうと伝え、電話は終了。

この会話を聞いてすべての謎が解けた兄。老人がどういう人物かも理解できたようで、味方になってくれました。
そして、兄の人脈を使って愛犬も暮らせる引っ越し先がすぐ決まり、日程を老人へ報告。ようやく、老人から逃げ出せる目処が立ったわけです。

そして、ストーカーによる裁判が開始

さて。
契約書を見ても更新料を請求される根拠はなし。家賃も払っていて記録も残しているし、引っ越しも決まったわけで、これで何も問題はありません。
夫は老人に電話を入れ、退去の報告をしました。老人は
「退去について話をしたい」
と言います。ところが、夫が何度電話をして日程を聞いても、一切応じようとしません。それどころか、電話のたびに夫を罵り、私への思いを語るという気持ち悪い展開に。内容を要約すると
「ダメ夫から奥さんを守るカッコいい私」
「私と奥さんの絆は強い」
「奥さんも私を慕っているのに、夫や弁護士が邪魔をしてきた」

という、ストーカーらしい歪んだものです・・・。
もちろん、会話は毎回録音しました。

とにかく、夫にはまったく応じない老人。私に会おうと必死です。仕方なく、私たちは気にせず引っ越し準備を進めました。ところが、引っ越し目前になってとんでもないものが届いたのです。
それは、裁判所からの訴状でした。原告は老人。ご丁寧に、私と夫、そして姉の三人それぞれを相手に裁判を起こしてきたのでした。

ついに、ストーカーと対決

やっと老人から逃げられる・・・。
そう安堵したのもつかの間。訴状は私たちを崖から突き落としました。
姉宅は大騒ぎです。
幸い、老人の本性に気づいた兄が姉に説明し、パイプ役になってくれたので助かりました。

老人は、裁判をネタに、なおも姉に
「妹さんは、いつ次の物件を見に来るんですか?」
などと聞いていたそうです。

さて、そんなわけで裁判に応じることになった我が家。
姉は
「訴状にあるお金を払って取り下げてもらう」
などと言い出し、困りました。それでは、老人の思うつぼです。あんな人に訴状ごときでお金を払ったら、またすぐ次の請求をしてくるに決まっています。
裁判になったからには法的根拠がないことを示し、裁判所で認めてもらうのが一番です。こちらに落ち度はないのですから。

老人が訴訟を起こしてきたことも、すぐ警察に報告。警察は数人で話を聞いてくれたうえで
「法廷に奥さんを引きずり出す計画かもしれない」
という見解に。
「根拠のないお金の請求は詐欺に当たらないんでしょうか?」
と質問すると
「まだ、お金を取っていませんから詐欺は成立しません。詐欺を立証するのは難しいんです。」
という回答でした。そして、こう言われました。
「引っ越し先の住所は絶対に教えないでください」

裁判所での意外な対応

なにはともあれ、裁判に臨むことになった我が家。

まず、私は陳述書を作成することにしました。
老人からこれまでに受けた迷惑行為、警察にも弁護士にも相談していること、契約解除にも応じて引っ越し先が決まり次第退去する件は老人も承諾していたこと、などを書きました。警察に面会を止められていることも正直に書いています。もちろん、請求される根拠がないことも。
そして、証拠として口座の記録、やり取りした文書のコピー、例の録音は書き起こしを添えて提出。裁判で音声を提出するときは、書き起こしを添えるのが原則です。

これらのものは夫が裁判所に届けてくれました。後日、不足の書類を持って私が裁判所へ。
ところが、事務室では意外な対応をされることになりました。

書類を受け取ってくれたのは担当の書記官。女性の方でした。非常に優しく対応してくださり、
「奥様は、法廷には立ちませんよね?」
と当然のように言われて驚きました。我が家は訴えられた側で被告です。なのに、非常にいたわってくださるうえに出廷しなくていいと言うのですから。

書記官と話をしたところ、裁判所は
「ストーカーがターゲットと会うために訴訟を起こした可能性がある」
という見解を示していることがわかりました。早い段階から警察や弁護士に相談し、証拠を残したことが功を奏したわけです。

書記官が女性だったこともよかったのか、録音を聞いて老人の気持ち悪さを感じたようで、とても同情的でした。
そして、私の代理人として夫が法廷に立つことを提案されたのです。引っ越し先の住所についても
「裁判所が把握していればいいだけです。原告に教える必要はありません。裁判所も相手に漏れないよう情報は厳守します」
と心強い対応をしてくれたのでした。

ところで、老人が起こしてきた裁判は少額訴訟。60万円までの金額を扱う簡易裁判です。あれこれ言ってきた割には請求額は50万円ほどに下がっていました。お金もどうしても欲しいのでしょう。

駄々をこねるストーカー

老人から契約解除を迫った割には、退去の件でまったく会おうとしない老人。原状回復や敷金の返還など話すことはいくつかあります。
何度か夫が電話を入れますが
「奥さんじゃないと退去の話はできない」
「奥さんは、いつ次の物件の話に来るの?」
と欲望があからさまになっていく老人。

「あなたは契約解除されてるから関係ない!」
と夫に言うなど、滅茶苦茶になっていました。退去でこんな言い分をしてくる不動産会社なんて前代未聞です。

相手が応じないので、私たちは引っ越してから鍵を届けることにしました。引っ越し当日は会えず、仕方なく宅配で鍵を発送。
鍵を受け取ったときも凄い騒ぎになり、
「奥さんじゃないと解約は無効だ!」
「奥さんが退去の打ち合わせに来るのが解約の条件だ!」
と電話で夫に怒鳴りつけ、もう誰から見ても異常でした。

そして、法廷へ

そんなわけで、夫が法廷へ。姉の代理人も引き受け、裁判所へ行ったのは夫のみです。少額訴訟は基本的に一回の審理で決まるので、証拠が重要な決め手になります。

裁判当日、夫からメッセージが。
「じいさん、えらいめかし込んでる(笑)」
開廷前に見かけたようで、ぱさついた白髪はセットされ、見たこともないスーツに身を包んでいたそうです。裁判所だからというのもあるでしょうが、
「会えると思って来たんだろうな(笑)」
とウケる夫。

実際、裁判中はキョロキョロと落ち着かなかったそうです。
私はいつ来るのかと思ったのではないでしょうか。

老人はごねまくったそうで、結局、当日では審理できず調停に移行することに。ウンザリしましたが、ここまで来たら裁判所でしっかり争っておくほうが得策です。

老人がとった苦肉の策とは?

1回目の調停が開始する前、裁判所から文書が届きました。
なんと、夫への訴訟が取り下げになっているではありませんか!老人の言い分は
「退去したので、訴訟は取り下げます」
というもの。
「え?私は?私も退去しているよね(笑)」
と、驚く私。もう夫と笑うしかありません。

この頃は離れたことで精神面にも余裕が生まれ、老人の言動がおかしくたまりませんでした。もうどう見てもバレバレのこじ付けですw
恐らく、こうすれば夫は法廷に立つことができず、私が出廷するしかないと踏んだのでしょう。

もちろん、訴訟を取り下げても、夫が私の代理人で出廷することに変わりはありません。何しろ、裁判所の提案なのですから。

ストーカーが起こした裁判の珍しい判決は?

コロナ禍で数ヶ月休廷することもありましたが、結果的に調停は二回で終了。ようやく結審しました。

この2回の調停では、老人の妙な言い分と新たな慰謝料請求もありました。うちが出した電話での録音に対し
「盗聴された!」
と持論を展開し、それに対して請求してきた慰謝料は200万円でした(笑)。

夫によると、老人は毎回オシャレをしてきて、常にキョロキョロしていたそうです。

私は2回目の調停が終わる頃、ようやく精神が落ち着き、老人に腹が立ってきていました。そして、新たに陳述書を書くことに。内容を要約すると
・慰謝料を払ういわれはない
・敷金は要らないが、その代わり二度と話をしたくない
・嘘で兄弟仲を壊され、こちらのほうが被害者であり兄弟全員怒っている
・後をつけられるなど気持ちが悪かった
・納得できないなら次は私を相手に通常裁判を起こせ

といったものです。闘ってやる!と、本来の私が戻っていました。

そして、ついに判決が出されました。
姉への訴訟は取り下げ命令が出され、老人は当日
「残って取り下げの書類を書いてください」
と裁判官にきつめに指示されたそうです。

私へ出された調停証書には以下のような内容が書かれていました。老人にも同じものが渡されています。

・裁判費用は原告がすべて持つこと
・両者の間には債権は一切存在しない
・原告は今後被告に対し、何も要求してはならない

調書には他にも細かく長文で書かれていましたが、これは大きな勝利です。
「何も要求してはならない」には、私への面会要求も含まれているのですから。裁判で判決が出た以上、次に行動を起こしてくれば逮捕される可能性が高くなります。そこまでが私の願いでした。

こうして、老人は自らお金を出して裁判を起こし、裁判所に
「自分がストーカーであること」
を認めてもらい、ターゲットに会わないことまで制限され、記録してもらったわけです。
そして、ついに1円もお金を取ることはできませんでした。

老人の行動を規制して欲しいと思っていた私の希望通りの結果になったわけです。

ところで・・・。
夫によると、判決の日の老人はフサフサだった髪が抜け、すっかりハゲ上がっていたそうですww


一連の騒動を終えて

私は、それまで苦労らしい苦労をしてきませんでした。親に守られて育ってきてお金で困ったこともなく、どちらかといえば恵まれていました。それ故に他人に寄り添えない部分もあったように思います。最近でも、子供の頃の話を夫や他の人としていると
(え?そういうのってなかなか買ってもらえないものだったの?)
と驚くことがあり、改めて有り難さを感じる場面があります。なので、今の自分のほうが好きです。

あの家で大変だったとき
(父がいてくれたらなあ)
と常に考えていましたが、あれは自分に課せられた試練です。渦中にいるときは大変でしたが、今となっては笑える要素もあり、面白い体験でした。
なお、うちの神様には
・老人が嘘つきであることを知ってもらい、誤解を解くこと
・訳あり物件から解放されること

の2点をお願いしています。裁判という展開は予想外でしたが願い通りに終わりました。


お付き合いいただき、ありがとうございます。


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