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強み信仰に死角はないのか?

最近、就活生っぽい人が「自分の強みに集中するだけです」みたいなことを話していて、少し違和感を感じたので、強み信仰は万能なのかということについて考えてみました。

結論からいうと、私も強みを軸に職業人生を生きていくことに賛成なのですが、最近若い人をみていて、強みだと思っていることしかやらないのもちょっと違うと感じています。

全体感を失う若者たち

強みとは、ある特定のプロセスで発揮されるものなので当然仕事の幅としては狭く深くというようになりがちです。(強みを発揮できる仕事の幅がある程度広いパターンもありますが、一般的には狭いという印象です。)

若い人の感性というのは、いつの時代も大切ですが、それでも社会人になり最初から特定分野のことが誰よりもできるということ自体まれなので、まずはいろいろやってみて、何が得意であるかということを探るのが通常ではないかなと感じます。

ところが、一定専門教育を受けた高学歴の人に多いのですが特定分野の専門知識がものすごく高いので、そこが強みで得意とされている方が一定数いらっしゃいます。それ自体全く問題ないのですが、残念なことにそれらの知識がビジネスロジックとどう結びつくのかという部分や、全体のプロセスの中でどれぐらい寄与しているのか、理解を深めようとしないまま、「私の強みはこの得意領域なので、他の仕事はやる意味がない」という考え方をしている人がいます。

こういった方は、仕事の評価に対する自己認識が高めになりがちなのですが、実は外からみるとものすごくできる仕事の幅が狭く、仕事を渡す前に仕事を「ご準備」してあげる必要があるため、実はそれほど評価は高くなく、逆に仕事を依頼しにくいというケースの方が多いです。

そうやってるうちに仕事が集まらなくなってしまっていたり、断片的で処理スピード以外の付加価値がないような、細切れな仕事でキャリアが進んでしまうリスクが高くなります。端的にいうと視野が狭いまま年を重ねて痛い人になってしまうというリスクが高いです。20代のうちはいいですが、30代になって上記のような感じだと、むしろ仕事ができない人の部類に分類されることになるでしょう。

つまり、仕事の全体感については非効率であってもいったん全て手をつけて理解していたほうが、ビジネスロジックにおける自分の強みのインパクトも正しく把握できるのではと思います。そういったことに興味を持たなかったり、やろうとしない人が増えている印象です。

強みの賞味期限

あと、強みにも賞味期限があります。特に抽象度が低い具体的なスキルほど気を付けておく必要があります。今流行っていることも、それを代替するスキルや技術に目を配り、自分自身の専門性をアップデートする必要があります。

わかりやすい例でいうとプログラミング言語などは、技術の移り変わりが激しく、日進月歩でバージョンアップや代替となる言語、フレームワークなどが生まれ続けます。そういった変化を含めて強みをアップデートできる人は、希少な人材になれるはずです。

加算乗除の法則

次に強みがどうやって作られるかを考察します。強みが作られる過程については、以前「強みを活かす前にやること」という記事で紹介した「組織のネコという働き方」という本の中にある加算乗除の法則がしっくりきます。

1.加ステージ
•できることを増やす。苦手なことをやる。量稽古
•仕事の報酬は仕事

2.減ステージ
•好みでない作業を減らして、強みに集中する
•仕事の報酬は強み

3.乗ステージ
•磨き上げた強みに、別の強みを掛け合わせる
•仕事の報酬は仲間

4.除ステージ
•(因数分解して)1つの作業をしていると複数の仕事が同時に進むようにする
•仕事の報酬は自由

組織のネコという働き方

強みを作るには「加ステージ」という段階を経由する必要があるので、そもそもある程度の量をこなさないと自分の強みは見えてこないはずなのです。研究などの分野では、大学で学んだことでまずは貢献できるかもしれませんが、それでも量稽古を経る段階をさぼると、その人に新たな強みはでてこなくなると思います。

資源と資本の話

強みの更新について、もう一つ考えなければならないことがあります。それは資源と資本の話です。青田努さんの本で紹介されいましたが、自分自身の資源(時間、お金などのリソース)に対して資本(強みやスキル、能力)がどれくらい伸びるのか、強みを伸ばすときにはこういった制約のもとで自分なりの戦略を立てる必要があると思います。資本に関しては、SNSであの仕事がいい、とか年収数千万の会社とか煽る言葉がたくさん流れていますが、自分が大切にしていることや進みたい方向をじっくり考えて資本の選び方と資源の投下先を選ぶべきでしょう。流行っていることほど、コモディティになりやすいですしね。

結晶性知能と流動性知能

もうひとつこの制約の中で考えておかないといけないのが、以前にも紹介した結晶性知能と流動性知能のバランスです。結晶性知能で固めた方が、安定はしますが、流動性知能がないと差別化が難しくなってきます。ライフバランスも含めて、自分を差別化するポイントをどの分野でどれぐらいのバランスにするのか、よく考えた方がいいでしょう。

やっていることが強みになることが多い

これもよく聞く言説ですが、そもそも自分もそうでしたが、大学で思う存分遊んできた人が仕事で即貢献できる「強み」を自覚したり、使いこなせているという状態は、ほとんどないし、あってもまれではないでしょうか。
たまたま、それしかできなかったからということで、エクストリームなことを達成している人もいますが、そういった人たちは外れ値と思ってもいいでしょう。何かを仕事としてやっているうちに、やっていることが好きになったり、強みになったりするものです。
まずは、自分の興味あることを手掛かりにいろいろ量をこなしてみてはどうでしょうか。

今日は強み信仰についてのあれこれを書いてみました。
何か皆さんのお役に立てれば幸いです。

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