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結晶性知能と流動性知能でキャリアを整理する

こんにちは。ヨシミツダです。

コテンラジオという有名なポッドキャストの番組で、「老いの歴史」というトピックを聴いていたときのこと、知識がストックされればされるほど価値が高まる社会では老人は尊敬されるが、変化が発生し、それまで蓄積した知識が役に立たず、新しい考え方に対応していくことが中心になる社会では、老人は尊敬されにくくなるというような話がありました。

この話は、ひょっとしたらキャリアを考えるときに大事な話なのかもと直感的に感じました。

結晶性知能と流動性知能

コテンラジオの『老いの歴史』の会では、もう少し分解して「結晶性知能」という言葉と『流動性知能』という言葉が使われていました。

結晶性知能
個人が長年にわたる経験、教育や学習などから獲得していく知能であり、言語能力、理解力、洞察力などを含む。
流動性知能
新しい環境に適応するために、新しい情報を獲得し、それを処理し、操作していく知能で、処理のスピード、直感力、法則を発見する能力などを含んでいる。

結晶性知能は20歳以上になっても上昇し、高齢になっても安定している一方で、流動性知能は10歳代後半から20歳代前半にピークを含めた後は、低下の一途を辿ると言われています。

つまり、老人が尊ばれる社会とは、結晶性知能が優位になる社会であり、変化が激しく老化が価値を発揮しにくい社会とは流動性知能が優位になる社会であると言えるのではないかと思います。

しかしながら、最近の研究では90歳を過ぎても脳の可塑性は確認されており、いくつになっても新しい知識を獲得することを否定するものではありません。

ただ、流動性知能の質は加齢と共に若い世代の人と比較すると低いというところは認知しておく必要があると思います。

玉虫色の社会

世の中をマクロでみて結晶性知能が優位な時代、流動性知能が優位な時代、それぞれがあると思いますが、現実的には結晶性知能がワークする部分と流動性知能がワークする部分が入り混じった結果としてのマクロな見え方ではないかと思います。つまり、結晶性知能が優位でも、流動性知能が優位な部分はあるし、流動性知能が優位でも、結晶性知能が優位な部分はあるということです。

若い時は、時流が求めていることを流動性知能を持って取り組み、加齢と共にその学びを結晶性知能に展開していくのが、一般的なキャリアのサイクルではないかと思います。

しかし、人生100年時代にこの成り行き任せなキャリア形成をしてしまうと、特にこれまで想定されていなかった60歳以降まで続くキャリア形成がジリ貧になってしまうように思えます。

前頭葉の働きを意識する

加齢と共に学習意欲が低下したり、新しいことを学びにくくなることには、脳の前頭葉の働きが作用しています。

前頭葉の働きが落ちると、ある考えから別の考えにスイッチすることや、ある感情状態から別の感情状態にスイッチすることが困難になります。

40代から60代というのは、この前頭葉の萎縮により、意欲が低下する年代と言われています。

さらに前頭葉の機能が低下し、感情のコントロールができなくなったり、クリエイティビティもなくなってきます。簡単に言うと、切れやすくなったり、自分の経験になぞらえて物事を単純化して理解しようとする傾向が強くなります。

前頭葉の機能を維持するには、前頭葉の機能を使うことが必要になります。
前頭葉を使わない生活とは、どういう生活かというと、要するに同じことを繰り返す生活です。
ルーティンなことばかりやっている生活、前例や経験則、ルールに従っているだけの生活、創造性を発揮することのない生活をしている状態です。一般的にコンフォートゾーンと呼ばれる状態を分解するとこのような状態になるのではないでしょうか。
前頭葉の機能を使うには意識的に、想定外のことが起こりそうなことを40代、50代のうちに意識的に行なっておく必要があると思います。

また、何かの問題を考える時に、二元論、前例主義から脱して、常に複数の解答を探す習慣も前頭葉を刺激することになるので、おすすめです。

結晶性知能と流動性知能のどちらのケースを考える場合にも、前頭葉の働きと衰えを意識して、鍛えることを意識する必要があると思います。

知識人から思想家に

学生時代から40代まで、私たちの勉強は、ほぼすべて知識のインプットであった気がします。
知識という材料があればこそ、新しい発想はうまれるので重要なことでは、あるのですが知識量そのものを競うのであれば、AIには勝てず、それどころか、記憶力もよくてちゃんと復習もする若い秀才にも勝てません。
では、何が問われるのかと言うとそれらの知識、情報に対する、その人なりの独自の解釈、分析、視点、それらに基づく「意見」を持つことです。
つまり、40歳を超えたら、知識そのものではなく、知識に対する捉え方を際立てるということを意識した方がよいと思います。

好きになれることを勉強する

「わがまま」を封じてきた人には難しいかもしれないが、これから新しいことを学ぶのであれば、それは仕事に関係していることであろうがなかろうが、あなたが好きなこと、あるいは好きになれることを対象にした方がいいです。
中高年は前述の意欲が低下しやすいというハンデを持っているので、好きなことでなければ続かないからです。

歳をとってからの学習方法については以下の書籍を参考にさせていただきました。


プロンティアンキャリア

プロンティアンキャリアという言葉をご存知でしょうか?社会の変化に応じて、自分の意志で自由に姿を変えて形成していくキャリアのことです。

キャリアは組織の中よりむしろ個人によって形成されるもの、変化に応じて個人にとって必要なものに変更できるという考え方があります。

リカレント教育の文脈で語られることも多く、これからのミドル世代にとっては当たり前になっていく考え方どあるように思います。

ミドルのプロンティアンキャリアを考える場合、これまでのことを考慮すると以下のポイントでキャリアを考えてはどうかなと考えています。

  • 結晶性知能が発揮できる分野に目をつける

  • 貴重な学習時間の投下対象は『好き』を基準に。

  • 知識は自分なりの思想まで昇華させる

  • 目指すキャリアに必要な流動性知能と結晶性知能の混合比率と活かし方のイメージ

  • 競合する人は、流動性知能が高い世代が多い産業か否か

結晶性知能が発揮できる分野に目をつける

新しい業界、業種であっても、自分の結晶性知能が活かせるのであれば、キャリアとして力を発揮できる可能性が大いにあります。
逆に全く結晶性知能がワークしない仕事は回避したほうがいいかもしれません。

貴重な学習時間の投下は『好き』を基準に

前述のように前頭葉の機能低下の影響もあるので、新しく学ぶことは自分が好きなことにしましょう。

50歳以降のキャリアにおいては、子育てなどお金のかかるライフイベントは終了しているため、
それほど稼ぐ必要性はなくなっています。
リッチな暮らしをしている人を羨むことも、あまり意味がないということを理解している年齢ではないでしょうか。

プロンティアンキャリアでは、個人の『自由や成長』が目的であり、従来の伝統的キャリアの成果が「地位や給料」であったのに対して、プロンティアンキャリアの成果は個人の『自己実現や幸福度』になります。そのため、公私を区別しないような好きなことや自己決定権の高いことをやった方がいいのです。

知識は自分なりの思想まで昇華させる

すでに説明した内容ですが、単なる知識をインプットするだけではなく、そこに独自の解釈、分析、視点を含む思想にまで昇華させることで、より価値のある結晶性知性を構築することができるはずです。

さらに高いコミュニケーション力を活用すれば、「モダンエルダー」と呼ばれる若者のよいメンターになることもできるでしょう。

モダンエルダーについては、過去の記事で紹介しています。


目指すキャリアに必要な流動性知能と結晶性知能の混合比率と活用のイメージ

変化を望んでも、何か新しいことをやることを考えるのは人によっては難しいことだと思います。特に、長年同じ仕事をしてきた人にとっては。
やりたいことを想起したとき、結晶性知能がどれくらいワークするかは、考慮した方がいいと思います。ほとんどすべてを流動性知能でワークさせるような職種であれば、若者に任せてしまった方がいいかもしれません。

現実では、流動性知能で物事を動かした方が良い時に、年長者の結晶性知能からくる経験則が、物事が進んでいくことを阻害しているように思います。つまり適切な情報処理速度を過去の成功経験を持つ人が阻害しているのです。結晶性知能がワークするかどうかを意識されていることは少なく、無自覚にこのような状態になっていることがあります。これがいわゆる老害と呼ばれる現象です。
老害が原因で日本のあらゆる産業で生産性と競争力の低下を招いています。
しかしながら、フラットな関係で結晶性知能と流動性知能を使うことができれば、日本の経験豊富な人材は、より高い価値を発揮できるはずです。
そのため、自分の結晶性知能をどう発揮するのかというイメージを持つことが大切です。

競合する人は流動性知能が高い産業であるか否か

産業自体の構造にも目を向けた方がいいかもしれません。たとえば新しい産業の潮流に乗っかりたいと思った時に競争する要素が全て手探りである場合、流動性知能がワークする確率が高く、自分の結晶性知能がほとんど役に立たないとします。さらにエネルギーを持つ若い人達が、寝る間も惜しんで競い合っている産業で新たに中高年でキャリアを作ろうとするのは筋が悪い選択かもしれません。大変魅力的ですが、真っ向勝負はせずに自分が見逃している結晶性知能が活躍する場所はないか、考えることが大事です。

セーフティネットとしてのプロンティアンキャリア

少し話は変わりますが、プロンティアンキャリアにはセーフティネットとしての一面もあると思っています。

特に学歴が高く、成功体験しかしていない人が中年期に鬱になることがあります。
こういった人達は、エリートとは「かくあるべし」という思考に囚われているといいます。
目的は大事にしつつ、自己実現や幸福の観点から『別の道もある』と複数のキャリアを考えておくことが結果的に自分をうつや将来不安から救ってくれるのだと思います。

かなり長文になってしまいましたが、結晶性知能と流動性知能に着目してキャリアを考えることでよりよいキャリアを考えられる気がしませんか?

少しでもお役に立てば幸いです。


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