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新規事業創出におすすめの本

新規事業ってどこから手をつけたらいいのか、迷いますよね。
私もエンタープライズ企業にいるときから新規事業に関わってきて、あれやこれや試行錯誤しましたが、整理できてきたのは最近な気がします。
今日はそんな皆さんにお役立ちしそうな本を紹介したいと思います。

まず、根本的に何から考えはじめるのがよいのでしょうか。
いろいろ考え方はあると思うのですが、私はよく言われる「顧客は誰か?」という問いから始めるのが一番最初にやることだと考えています。

市場の大きな流れや競合の動きよりも、まずはN=1の顧客からはじめる。
1人の顧客の便益から考えましょうというのが、マーケティングの基本的な考え方だと紹介しているのが、元P&G西口一希さんの著書「マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ」です。

マーケティングというと、すぐSNSなどの手段を早期して、それそのものをマーケティングと呼んでいる人がいますが、西口さんの本では、便益と独自性という最も基本的で重要な原理を学ぶことができます。
たくさんのマーケティングの本を読んでいても、結局何をすることがマーケティングがよくわからないといいうマーケティング樹海に迷われている方もいると思います。そのもやもやがすっきりする本ではないかと思います。

便益と独自性、自社が提供しうる価値は何かという切り口で徹底的に掘り下げていきます。「誰かにとって明確で、簡単に代替されない便益と独自性は何か」、便益を起点に一つのカテゴリーに縛られずに発送する、この便益と独自性に磨きをかけて継続的に価値をうみだすことの重要性が説かれています。

顧客起点に関する本として、西口さんの「顧客起点の経営」という本もおすすめです。

この本では、顧客の心理、行動に着目したマネジメントの範囲に拡張しています。新規事業の創出からは少し逸脱しますが、「マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ」を読んでよかったと感じた人には次の本としておすすめです。

次におすすめしたいのは、麻生要一さんの「新規事業の実践論」です。この本では特に新規事業の立ち上げ前に知っておくべき新規事業「6つのステージ」が紹介されており、それぞれのステージで重要視すべきことについて説明があります。これらのステージを理解せずに、新事業をつぶしてしまうケースが大企業では、多く散見されます。

新規事業の6つのステージ
1.ENTRY期
・魅力的で検証可能な事業仮説の提示を目指す段階
・おぼろげでも取り組みたい顧客課題を見つけ、そこへのWILLの形成を目指す段階
・次のステージへの昇格基準
顧客・課題・ソリューション仮説・検証方法のセットが成立しそうか
2.MVP期
・事業性をともなった魅力的な事業計画の提示を目指す段階
・次のステージへの昇格基準
仮説が実証されているか、投資可能な事業計画か
3.SEED期
・商用レベルでの事業の成立とグロースドライバーの発見を目指す段階
・次のステージへの昇格基準
実際に商売が成立したか、成長のための拡大方法が見えたか
4.ALPHA期
・実際にビジネスが最初のグロースを実現することを目指す段階
・次のステージへの昇格基準
事業が成長状態に入ったか、組織戦略と対競合戦略が現実的な
5.BETA期
経営会議で議論できる最小限の規模に到達し、かつ成長状態であることを目指す状態
・次のステージへの昇格基準
成長率を落とさず成長状態が続くか、既存事業と遜色ないガバナンスか
6.EXIT期
新規事業の枠組みを卒業し、成長投資を獲得し、企業戦略の一部に組み込まれることを目指す段階
・次のステージへの昇格基準
社内での位置づけ整理・IR方針、既存事業を凌駕する規模への投資戦略

この新規事業開発プロセスの全体を俯瞰し、全体感を掴むことをせずに決済者がENTRY期やMVP期で競合や投資回収の話をしはじめ、結果として理解できずに数々のアイデアが潰れていくところは私が大企業にいたときに何度もみた光景だっただけに、これらのフェーズに応じたマネジメントをしないと新規事業は生まれないのだなと構造的に理解できました。
また、お気づきの方もいるかとおもいますが、大企業の既存事業にどっぷりつかっている人には、1.ENTRY期から3.SEED期までの取り扱いには慣れておらず、おそらくうまくいかないことが多いのではないかと思います。

1.ENTRY期から2.MVP期のチームでは、「仮説を顧客にもっていき、修正する」のサイクルをひたすら回すことが唯一のことであり、かつその仮説と顧客の回転を「確認、事例、調査、会議、資料、社内、上司、先輩、競合」などの9単語をひとつも登場させずに回すことが重要だと述べられています。これは大企業にいる人からすると、おそらくやったことのない仕事の進め方でとまどう人も多いと思います。

ただし、以降のフェーズではLTV>CACとするためのグロースドライバーの話や競合の話もしっかり登場してきます。このフェーズに応じたマネジメントができるかが成功の鍵となりそうです。

次におすすめするのは、三谷宏治さんの「ビジネスモデル全史」というその名の通り、ビジネスモデルの歴史について、その流れが理解できる本です。
この本がなぜ、おすすめなのかというと、ビジネスモデルの問題点や、問題点を起点としてどんな考え方が生まれていったのかという全体の流れが把握できることです。例えば、ある単一のビジネスモデルの本を読むと、そのモデルが有用である部分しか、そもそも記載されていません。しかし、それでは、間違った分析をしてしまう可能性があります。
数々の有用(と思われた)理論は、どのように勃興し、そして衰退していったのかを把握しておくと、このような分析に振り回されることはないでしょう。

おまけ

最後に、「顧客は誰か?」という問いを発する前に、そもそも何をやったらいいのかという疑問があると思います。

以前、私のメンターの方にこの質問をしたところ、ペイン(ペインポイント)、もしくはゲイン(ゲインポイント)からはじめるのがよいというのが回答でした。

ペインというのは、直接的には「痛み」という意味で、この文脈では「顧客が抱えているコストをかけてでも解決したい問題や悩みのこと」を意味します。

ゲインというのは、まだ顕在化していない、顧客が潜在的に求める要素であり、問題からは発想しづらく、むしろ新しい現実や顧客が無意識に諦めている問題などの中にあります。

それゆえ、ゲインを発見するのはペインより難しいといわれており、まずはペインから探すのがいいというのがその時のアドバイスでした。

ということで、今回は新規事業創出に役立ちそうな本をピックアップして紹介しました。少しでもお役立ちできると嬉しいです。

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