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失敗した時の対処法とは!?(大和言葉で読み解く古事記)

前回は、クニ造りが失敗に終わったところまででした。
今回は、その失敗にどの様に対処したのかが書かれています。

前回分はこちらから

太古における失敗の対処法はどの様なものであったのでしょうか!?
失敗に対する向き合い方についての記述が古事記にあるのは、何とも味わい深いなあと感じます。

それでは、見ていきましょう!

以下は、読み下し文です。

ここに二柱の神、議りて、云ひけらく、「今吾が生める子良からず。なほ天つ神の御所(みもと)に白すべし。」といひて、すなはち共に参上りて、天つ神の命を請ひき。ここに天つ神の命もちて、太占に卜相ひて、詔りたまひしく、「女先に言へるによりて良からず。また還り降りて改め言へ。」とのりたまひき。

ここに二柱の神、議りて、云ひけらく、

二柱の神というのは、イザナキとイザナミのことです。
「議(はか)りて」ということですので、どちらかが一方的に進めたということではなくお互いに相談してということになります。
ここでも男性も女性も互いに尊いという男尊女尊の価値観が現れていると感じます。

「今吾が生める子良からず。なほ天つ神の御所(みもと)に白すべし。」といひて、すなはち共に参上りて、天つ神の命を請ひき。

「今吾(あ)が生める子良からず。」
クニ造りがうまく行かなかった。

「なほ天つ神の御所(みもと)に白(まを)すべし。」
ここでのナホは、原点に戻ってという意味です。「ナ」という調和の方向に「ホ」ほっと出現する。大和言葉では、物質の一番最小の単位を「ナホヒ」といいます。
原点に戻って天つ神の考えをお聞きしようということになります。

「すなはち共に参上りて、天つ神の命を請ひき。」
どちらか一方ではなく”共に”行動しているところがいいですね。
そして、天つ神に失敗したことを相談しました。

ここに天つ神の命もちて、太占に卜相ひて、詔りたまひしく、「女先に言へるによりて良からず。また還り降りて改め言へ。」とのりたまひき。

相談された天つ神がどうしたのか!?
「太占(ふとまに)に卜相(うらな)ひて」

ということですので、占ったということです。ビックリ!

「フ」は震えるとかフツフツという様に振動すること
「ト」止まる、留まる
「フト」動かしたり止まったりということになります。
「マ」は真理
「ニ」は煮るとか賑やか、似るという様に一つに交ざり合わさっていく
ことです。
「フトマニ」体を動かしたり、止まって瞑想したりしながら真理と一つに合わさっていくことを意味します。

岩波文庫の解説では、鹿の骨を焼いた占いという解説があります。

とにかく、相談を受けた天つ神も自分の判断を伝えるのではなく、占いを行って天つ神としての意思ではなく、更に根本的な何かの意思を受け取ろうとすることに驚きます。

大嘗祭にお供えするお米を育てる地方を決めるに当たって、亀卜(きぼく)という亀の甲羅を焼く占いで決めているそうです。(令和の御代替りでは、栃木県と京都府のお米が使用されたそうです。)

これだけ科学が発達した現代社会においても、こうした占いを継承している日本の文化の奥深さ、素晴らしさに感動を覚えます。
これからも大切にしていかねばと思います。

そして、その占いの結果、女性が先に言ったのがよくなかったということで改めてやり直しする様に伝えられます。

現代社会において、誰が発案者かによってモノゴトがうまく進んだり、逆に進まなかったりすることがあります。
政治の世界は、特に誰が言ったかでモノゴトが決まることが多い世界です。
占いという人知を超えた意思に頼る手法を用いることは、モノゴトをより良く進める知恵の一つなのだなあと感じます。

失敗を克服して、次回から国生み神話と言われる多くの方が良くご存知の所になります。

いよいよ、次回に大八島国が完成されます。
最後までありがとうございます。
次回もお楽しみに〜😊

【参考文献】
古事記 倉野憲司校注 岩波文庫
縄文のコトダマ 林英臣著 博進堂
やまとことば伝説 林英臣著 博進堂
大和言葉の世界観 河戸博詞著

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