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華夷思想

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グローバル化の時代は終焉をむかえた。 時代は、ブロック化された経済圏からなる新しい秩序を迎えようとしている。 現在、より深刻さを増す中華人民共和国の覇権的挑戦は、新しい秩序の構… もっと読む
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【華夷思想4】 孟子(もうし)の華夷思想:夷狄に生まれた聖人(1)

【華夷思想4】 孟子(もうし)の華夷思想:夷狄に生まれた聖人(1)

1,夏と中国の「周公や孔子の道」
前回まで、『孟子』の原文に見える“夏"と"中国"について考察した。
そこで見えたことは、以下の通りである。
すなわち、"夏"とは、夏王朝以来の時間的系譜を表現したものであり、"中国"とは、夏王朝が発生して以来の世界の中心にあたる地理的空間なのである。

さて、しつこいようで恐縮だが、【華夷思想2】、【華夷思想3】と同様、あらためて例の一文を掲げてみたい。

さて、

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【華夷思想3】 孟子(もうし)の華夷思想:“夏”と“中国”(後)

【華夷思想3】 孟子(もうし)の華夷思想:“夏”と“中国”(後)

1、“中国(ちゅうごく)”“中国”とは何か?

日本では、『古事記』や『日本書紀』に、これはあくまで日本の地域名であるが、“葦原中国(あしはらのなかつくに)”と呼ばれる地域が登場する。
この、中国を“なかつくに”とする訓読みが、言い得て妙ではないかと思う。

戦前の翻訳では、実際に漢文の“中国”を“なかつくに”と読んでいるものもある。
そのため、これはすこし笑い話になるが、ロードオブザリング(『指

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【華夷思想2】 孟子(もうし)の華夷思想:“夏”と“中国”(前)

【華夷思想2】 孟子(もうし)の華夷思想:“夏”と“中国”(前)

↑は、前回の【華夷思想1】で提示した『孟子』の一節と、さらにその続きの部分である。なお、2ヶ所の「①中国」と、1カ所の「②中国」は、後に検討する箇所なので、覚えておいていただきたい。

1、楚系儒家の敗北と農家の北上さて、この一連のセリフは、孟子が、楚系儒家の陳良の弟子たちを叱責している一幕である。
では、孟子がなぜ、彼らを叱責しているのかといえば、彼らが、楚の農家(神農氏を崇拝する思想家集団)に

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【華夷思想1】 孟子(もうし)の華夷思想:変わらない“中国”

【華夷思想1】 孟子(もうし)の華夷思想:変わらない“中国”

中華思想という言葉がある。
基本的には、現代中国の覇権的行動にまで連なる、支那王朝の行動原理として知られている。
つまり、中国以外は、“夷狄”であり、中国は、徳によって“夷狄”を教化しなければならないという、自国中心的な考え方である。
そのため、この中華思想には、別名がある。

華夷思想である。

ただし、支那に限らず、いずれの国家や文明も、自分たちを中心とした世界観を有していることは注意を要する

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