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#ぼんやり

掌編小説「ほくろ」

掌編小説「ほくろ」

 夢を見た。
 そこは高校時代、登校の際に使っていた高崎線の車内で、いつもと違うのは、乗客はわたしともう一人だけということ。それから、そのもう一人が制服を着たわたし自身だということだった。互いにボックス席の斜め前に座り、わたしは、うたた寝する自分の姿を眺めている。相変わらず口元には大きなほくろがあるけれど、化粧気のない頬や長い睫毛に少しどきりとしたし、幼気な無防備さを見て思わず下唇を噛む。なにより

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海

海を見たくなったのは、
自分の小ささを確かめたかったから。

空っぽのゴミ箱を大事に抱え続けるのは、
そこに大事な落し物があったから。

いらなくなった写真を燃やしたのは、
思い出の匂いを知りたかったから。

涙がかわいてしまったのは、
きっと潮風のせい。

ここは少し、ほんの少し、寂しい空白の最深部。

ここにあなたがいないのは、
あなたが水平線よりほど遠いから。