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【映画】愛って何?寝台車ロードムービー「コンパートメントNo.6」感想(ネタバレあり)


 予告編を観て気になっていた映画「コンパートメントNo.6」を観に行ってきた。
あんまり人生うまくいっていないフィンランド人女子学生ラウラ(セイディ・ハーラ)が、恋人の影響で興味をもった「ペトログリフ」という古代文字をみるために、寝台列車に何日も乗って旅をする話。でも、そのきっかけとなった恋人は仕事の都合でドタキャン。彼女は一人で寝台車に乗る。同じブースにいたのはロシア人のリョーハ(ユーリー・ボリソフ)。ロードムービーのような寝台車ムービー。

新宿の桜~

 新宿では、桜が咲いて、春の陽気♪

↑新宿駅からシネマカリテに行く途中のエスカレーター下に桜が☆

シネマカリテの北欧フェア

 シネマカリテでは、北欧推しな感じ☆「北欧こじらせ日記」は、ドラマもみていたので、原作本が売っていて、なんか嬉しい♪

フィンランドの国旗がはためく~北欧推し?

ここからネタバレ感想「愛って何?」

 見終わって、自分も外国で列車の旅をしたような気分になった。
 コロナ禍で、なかなか海外旅行が難しい今、旅行気分が味わえる映画だと思う。が、それは楽しいバカンスではなく、言葉の通じにくい外国で色々とうまくいかなくてモヤモヤしながら移動するような旅。楽しく明るい映画ではない。

「コンパートメントNO.6」フライヤー☆

 「愛って、何でしょう?」とも思った。

 主人公、ラウラの恋人イリーナは、どうか?
 もともと「ペトログリフ」を見に行くことをすすめていたラウラの恋人イリーナ(ディナーラ・ドルカーロワ)。仕事のためにドタキャンしたはずなのに、ラウラが電話をすると背後からは誰かといちゃついているような物音が聞こえてくるし、イリーナが予約してくれたホテルからは「ペトログリフ」は遠いし、挙句の果てには、冬は通行止めでヘリじゃないと近づけないレベルだという信じられない状況!しかも、そのことを電話で伝えると「残念」の一言しかない。さらにラウラの方が気をつかって「でも、他にも観光できるところはあるし」と言っても「そうでしょうね」って、ひどくない?最初に電話した時から、この恋人は電話に出ても早く切りたい態度しかない。しかも、出ない時も多い。思えば、最初にパーティーをしていた時にも、ラウラのことを友達には「下宿人」としか紹介していない。体の関係はあるものの、本当に恋人といえるのか?恋人と思っているのはラウラの方だけなのでは?とも思える。
 一方、ラウラもリョーハに「自分の恋人は…」と話した時の「ほめるポイント」は「美しい」ということと「古くて素敵な家に住んでいる」ということ(だったと思う)。古代文字のように「古いものが好き」なラウラ。それを愛情と捉えないこともないとは思うけれど、結構表面的な感じはする。

 リョーハは、酒を飲んでくだをまいたり、からんできたり、スクリーンの中からも酒臭い息が感じられるほど。小さな子どもと奥さんもいる。「ペトログリフ」も知らない。でも、公衆電話を長い時間使いすぎてからまれているラウラを助けてくれたり、自分は全く興味がない「ペトログリフ」なのにラウラがはるばる見に行くほど見たいと知って「金ならいくらでも出す」と船乗りを説得して吹雪の中ラウラと一緒に「ペトログリフ」がある場所まで行こうとしてくれる。自分は全然興味がないのに。
 さらに、キスまではしても、それ以上のことはない。住所を教えることもしない。一期一会の関係。でも、ラウラが「ペトログリフを見たい」と行動していることに敬意を表して助けようとしてくれる。自分は全然興味がないのに。
 さらに、最後のシーン。最初、「『愛している』って、フィンランド語ではなんて言うんだ?」とからんできたリョーハに、うんざりしていたラウラが「くたばっちまえ」という言葉を教えたのを、そのまま、ラウラへの手紙に書いていたシーン。これは、どう読み取るか?二つ考えられるのかなぁ、と思った。…リョーハが、その言葉の意味を「本当に知らなかった場合」と、「本当は知っていた場合」。
 「本当に知らなかった場合」は…ラウラに言われたことを、そのまま信じ切って「愛している」というつもりで「くたばっちまえ」と書いていた、ということ。これはこれで、滑稽ではあるけれど、「その人を信じ切る」という点でも「愛」といえる。泣き笑いしたくなるようなラストだ。
 もう一つ「本当は知っていた場合」も考えられる、と思う。「くたばっちまえ」というのが、発音として、ではなく、手紙に書いてあった、ということがひっかかる。スペリングが正しいのかどうかまではわからないけれど、もし正しいスペルで文字にできるのなら、ある程度言葉を知っているのでないか?その場合、辞書で調べることもできるだろう。本当は「くたばっちまえ」という意味だと知った上で、彼女が教えた言葉だから、わざと教えられたままに「くたばっちまえ」と書いた、ともいえるだろう。その場合、「ラウラが『愛している』という言葉として俺に教えたんだから、俺たちの間では、この言葉が『愛している』という意味でいいんだよな?」という感じをふまえた上での「くたばっちまえ」か?
 書きながら思ったけれど、やっぱりどちらにしても二人の間では「愛している」なんだなぁ。「相手のことを信じきる」というのも「愛」なのかもしれない。

 ただ、そこからすると、最初にイリーナに電話した時から電話を嬉しがるよりウザがるような態度で背後からも物音や話し声がしまくっていたのに、その後もイリーナのためにビデオレターを撮影し続けていたラウラは、イリーナを信じ切って愛していた、といえるのか?…単に、にぶい、という可能性もあるかなぁ…。

 でも、このラウラを演じていたセイディ・ハーラという女優さんが、またよかった。最初に寝台車に乗り込んでくる時には、もさっとした感じ。終着駅直前にリョーハと食堂車で乾杯する時には、見違えたようにキレイに見える。もちろん女優さんだから、本気を出せばキレイな人なのだろうけれど、「人生うまくいかなくてパッとしないワタシ」みたいな様子も出せて、「見違えたようにキレイ」というのも感じさせるという、その落差がスゴイと思った。最後の、シャンパンで乾杯するシーンなどは、観客なのにリョーハの気分で「よく見るとキレイだったんだ!」というような、「夏の日の1993」の歌詞を思い出すような気分にさせられた。この映画では真冬だけど(^^;)

次の北欧映画「ガールピクチャー」も面白そう♪

 フィギュアスケートをやっている少女が出てくるのが美しい感じがする「ガール・ピクチャー」☆4/7から公開されるみたい。楽しみ♪


 


 


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