【意志あるところに道はある】ケイイチちゃり旅20年の道のり Vol.3 疾走アジア編①
インドへ行く。
ケイイチが決めていたのはその一つだけだった。
「お前の旅を面白くしてやる」そう言って渡された下関から韓国の釜山に渡るフェリーのチケットを手に、ついに日本を出国することになる。
このフェリーチケットもそうだが、長い旅の中で、ケイイチはたくさんの人の優しさに触れる。
この頃はまだ、意識していなかったが、20年の旅の中でケイイチもまた、思いやりに溢れた行動を取っていくことになる。
韓国では、日本をヒッチハイクで旅をしている間に北海道で知り合ったシムさんを尋ねることにした。
韓国に来たら連絡してと言われていたのだ。
シムさんはソウルの近くの光明という街に住んでいた。
手慣れた様子でヒッチハイクを開始しようとするが、言葉が通じないという事実に気づく。
どうしたらいいのか。路頭に迷いかけたとき、日本人と思われる男性が声をかけてくれた。
中国を通ってインドへ向かうと言うと、「中国へ入るにはビザが必要だ。どうするつもりなのか?」と訊かれた。
この時、ケイイチはわずかな所持金を持っていた。
日本ヒッチハイクの旅中に食べるものを買いなさいと言って頂いたお金だ。
さらに、余ったからと言って、韓国ウォンも頂いていた。
この韓国ウォンがちょうど中国のビザ代になった。
なんとかヒッチハイクと野宿を繰り返して、シムさんの家にたどり着くことができた。
シムさんも、ケイイチが大したお金を持っていないことをとても心配してくれた。
これから旅をしていこうと言うのにお金がないなんて、普通の人ならそう考えるだろう。
シムさんは、知り合いの植木屋さんで働くことを勧めてくれた。ケイイチはその植木屋さんで2週間ほど働いて、日本円で6万円の賃金を受け取った。
受け取ったが、受け取るわけにいかなかった。
そもそものケイイチの旅のテーマに反するからだ。言われたままのことをして受け取ったお金は使えない。
その6万円をそっくりそのままシムさんに渡す。
するとシムさんは、その中から、中国青島に向かうフェリーのチケットを買ってプレゼントしてくれた。
さらに、中国で使いなさいと言って、日本円で3000円ほどの韓国ウォンをくれたのだ。
働いて受け取った賃金がダメで、好意でくれるお金はいいと言うのは、不可解に感じるかも知れないが、それがケイイチのルールだった。
韓国仁川から中国青島に渡るフェリーには、韓国人の青年と一緒に乗った。彼がケイイチの持っていた3000円分の韓国ウォンを中国人民元に両替してくれた。
当時のレートなどを確認もせず、渡された200元をそのまま受け取った。
さらに、「中国ではヒッチハイクでは移動できない」と言って、自転車を買うことを勧めてくれた。
2002年4月24日、中国に入国。
青島の路上で自転車を買うことができた。2500円だった。
ケイイチのチャリ旅がついに始まるのだ。
Go West!インドへ向かうぞ!!
気持ちが新たになる。
と言っても、スマートホンがない時代。GPSももちろん無い。
手元にあったのは、中国全土が入った1/600万縮尺の地図。そして方位磁石。
向かっていく先の街の名前が辛うじてわかる程度の装備だった。
中国のビザで滞在できるのは90日。
大国中国を90日で横断できるわけもない。そこで、とりあえず南に向かうことにした。
ベトナム、ラオスを経由してタイに入国する。
タイのバンコクでインドのビザを申請しようと考えたのだ。
当時、バンコクでインドビザを申請するのが、バックパッカーの間でセオリーだった。
自転車に跨って走り出す。
1kmごとに道路脇に標石が置かれていたので、それを確認しながら何km走ったのか把握していた。
1日に100kmほど進んでいた、とケイイチは言った。
野宿をして、朝起きると、自転車に乗って走る。
大きな肉まんが15円ほどで買えたので、それを食べてひたすら漕いでいた。
時折、その自転車でどこまで行くんだと訊かれた。
この頃、言葉は通じないが、紙に漢字を書いてコミュニケーションをとることを覚えていた。
インドを目指していることを告げると、皆、驚いて、「持っていけ」と言って色んなものをくれた。
驚くだろう。
ケイイチが乗っていたのは、ママチャリだ。
決して長距離移動に適した乗り物ではない。
少しだけネタバラシをすると、ケイイチは3代目のママチャリでヒマラヤ山脈を越えて行くことになるが、それは少しだけ先の話だ。
走りながら色んなことを考える。
意志があるところに道ができるのか。
お金が重要なのか。
意志が重要なのか。
この旅の先に何があるのか。
2002年6月15日、香港に立ち寄る。
当時の香港は、香港特別区になっていて、渡航にはパスポートが必要だった。
そして、中国でも起こらなかった事態に遭遇する。
自転車を盗まれると言う事態に。。。
Vol.4 https://note.com/mitsuki_nz/n/n844669ecaa0f
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