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かわいそうだね?


かわいそうだね?綿矢 りさ

綿矢りささんは「蹴りたい背中」で知りました。
純文学では重厚感の感じられる、どっしりした文章が多い感覚がありましたが。綿矢さんの作品は軽快で、それでいて重い。

そんな印象を受けていました。

今回文庫でタイトルに吊られたような感覚で、気づいたら手に取っていました。


読後、真っ先に思ったことは


「これ、本当に2013年の作品?」


描写で「携帯電話」が出てきた時に、ああ、まだスマホが普及する前に書かれたものなのか、と感じた程度でしたが、圧倒的文章力。

それでいて、細やかな人物描写。

月並みの言葉でしか表現ができない自分に身悶えするほど悔しい。

これは、どの女性にも刺さるのでは、と。
それでいて綺麗事を並べず、なんならそんなものに唾をかけそうな勢いでの「しゃーない」の言葉。

痺れました。


綿矢りささんを検索エンジンにかけてみると、「綿谷節」とのフレーズが。
確かに、これは「節」だわ。


「コンビニ人間」でどハマりした村田沙耶香さんは「村田ワールド」と表現されていて、この表現の違いにうんうん、と頷きたくなる。


肝心の内容ですが、主人公は最近できた彼氏と別れの危機に。
それは彼氏の元カノが彼の家に居候する、という異例の事態。
なに考えてんの、シンジランナイと言いたい気持ちを抑え、歩みよる努力をする。
でも、彼氏は疲弊し切った顔をしていて…?

と超ざっくり解説。

なんと言っても文章が入り込んでくる。純文学に慣れていない人でも、気がついたら本が読み終わっているのでは。

綿矢さんの書くものは、するすると隙間を見つけて入っては、そのまま最後まで居座っている。
読み終わろうものなら、じゃあねと颯爽と消えていくような。


読後、また本屋へ走りました。
最新刊の「パッキパキ北京」を目当てに行ったのですがなかったので、

「嫌いなら呼ぶなよ」を購入。また綿矢節にもまれたくなりました。



黒紅

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