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日記 第1話 (読了3分) 全3話
あらすじ
救急隊に勤める西澤祐樹が緊急出動をして救助したのは、別れた妻、千沙の幼馴染みだった吉田公子だった。
日記
知り合いが運ばれてくるのは初めてだ。吉田公子が自宅で洗濯物をたたんでいるところで気を失い、呼びかけても気を失ったようで戻ってこないという通報で救急隊の出動となった。
西澤祐樹が知り合いの吉田公子だと気が付いたのは、家の前に到着して、夫の達夫が駆け寄ってきたときだ。
「ああ、西澤さんか、よかった知ってる人で」
駆け寄ってきた達夫が安堵したように細い声を出した。ぐったりはしているがこんな事態でもそう慌てている風でもなかった。
「こちらでいいですか」
上司の川崎が達也の返事も聞かず玄関から奥に向かって突き進む。祐樹は達夫にお辞儀をすると川崎の後を追った。
「すみません、迷惑をかけて」
達夫は罰がわるそうだ。
「やっぱり公子さんでしたか、同姓同名の他人ならいいと思ったんですが」
「すみません、昔はよくこういうことあったんですけど、今日は久しぶりに気を失ったみたいで」
祐樹は話をしながらもせわしく公子を担架にくくりつけた。
「脈は正常、おそらく気を失っているだけだ。三坂病院なら受け入れてくれるからすぐに運ぼう」
上司の川崎が仕切り、目の前で物事がものすごいスピードで流れていく。
「とりあえず命に別状はないようなので安心してください」
祐樹は川崎の指示に言われるがまま体を動かした。緊急事態に現実が遠ざかっている気がしたが、そんなことは言ってられない。
「西澤さん、あの」
「西澤そっち持って」
達夫が何か言おうとしたところで川崎が言葉を挟んだ。達夫との話が途切れたことで、今が緊急事態だということを改めて認識した。
川崎が担架を持ち上げようとしていたので、祐樹は反対側を持ち上げると、車にぶつけないように注意しながら公子を救急車に運び入れた。
「ご主人もどうぞ」
川崎が達夫を促した。
「いえ、私はちょっとこういう狭い場所が苦手なもので」
「そうは言ってられません、もしかしたら打ち所が悪かったとか、良くないものを口にしたとか考えられますから、話ができる人がいないと」
「晩御飯はレトルトカレー、妻は用心深いので転んだり、何かにぶつかったりはしません。あとの細かいことは西澤さんに聞いてください、西澤さんならわかると思います。とりあえず私は車で追います」
達夫はお辞儀をし、そそくさと家の中に入って行った。
川崎の視線が祐樹に刺さる。
「知り合いか?」
「まあ、そういうところです」
「ここで時間をさきたくない、そこ閉めて」
川崎はそう言うと、運転手に無線で連携する。
「ドアチェックOK、車出して」
ギアが入り車が揺れた。あわてて祐樹が救急車の後ろのドアを閉めると社内の空気が重さを増した。
「身長は?」
「はい?」
川崎があごを公子の方に向けた。公子は俺より少し低いくらいだ。
「162センチくらいです」
川崎が素早くメモをする。
「体重は」
書き方がぞんざいなので少しむかついたが、ここで怒るのは得策だとは思えないので、素直に従った。それが日常だった。
「たぶん45キロくらいかと」
適当に別れた妻の千沙の体重を言ってみた。
「じゃあ、スカートはそのままでパンツ脱がして」
「えっ?」
祐樹は思わず聞き返した。
「馬鹿かお前は、変なことをするわけじゃない、出血してないかの確認だ」
「あ、はい」
公子は祐樹の別れた妻の幼馴染みだった。妻と別れる前はお互いの家族で旅行に行ったこともあるくらい仲が良かった。
心臓が大きく跳ねた。知り合いの女性の秘部を見るのはさすがに気が引ける。
「どうしても見ないとだめですかね」
「お前が確認しないなら俺がする」
それも嫌だった。川崎は上司の前ではかりてきた猫のようにおとなしいが、部下の前だと人が変わったように理不尽さをふるっていた。
他のメンバーからも評判が悪く、家庭ではモラハラが原因で奥さんが一度逃げ出したことがあるという噂だ。噂だが、祐樹は事実に間違いないと思っていた。なぜなら祐樹も川崎からパワハラを受けていたからだ。
救急隊には規律が重要だ、危険な仕事には必要な要素だ、そう思ってあきらめてはいるものの、飲み会があれば酔ったふりをして殴りたいくらいだった。だからこんなやつに知り合いの女性の秘部を見られるわけにはいかない。
「私がやります」
祐樹は公子のスカートの裾に手をかけた。川崎には公子の体を見られたくないから、スカートで覆って手を奥に入れた。パンツの端に手をかけ、ゆっくり下げる。ひざを立てると足は思ったより長く、白いふくらはぎとやわらかそうな太ももが生々しい。パンツをすねまで下げて左足を曲げ、パンツから抜いたところで、寝返りをうとうとした公子の股が自然にぱっくり開いてしまった。
スカートが長いから川崎の角度からだと見えないが、祐樹からは公子の秘部がくっきり見えた。しかもヘルメットに装着したライトで照らしているから格別だ。
スカートの奥では黒い繫みの中央でほのかに光るピンク色の唇が笑っている。唇の中央でかすかに何かが光っている。
「異状なしか」
川崎が低い声を出した。
光を放ってはいるがこれは異常なしだろう、いや異状なしで通すのが賢明だ。
「は、い、異常なし」
少し声が裏返ったが、川崎は気がつかないのかだまって記録している。パンツをひざまで上げた時だった。立てたひざの向こう側で、今まで静かに閉じていた瞼が開いた。
「あれ?」
公子が意識を取り戻したのだった。公子がゆっくり足元に視線を送った、視線は祐樹の視線とぶつかった。
「あ、西澤さん」
しばらくの沈黙のあと
「あらやだ」
公子は右ひざにパンツをかけたままひざを閉じた。閉じた太ももの重なり具合が艶やかだ。
「意識を取り戻しましたか」
川崎が声に気が付き公子に声をかけた。
「あ、えっと」
公子は状況が把握できないようで返答に困っていた。視線は祐樹に向かったまま動かない。祐樹は気まずくなってパンツから手を離した。
「ちゃんとはかせてよ」
一瞬聞き間違いかと思ったが、公子が命令口調でそう言ったのだった。
日記 第2話につづく
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