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Oh!マイダーリン 完結編(読了5分)
前回のあらすじ
高校時代からの親友である斎藤が「人を効率よく殺す方法」を聞いてきた。斎藤が簡単に殺人をほのめかしたことには驚いたが、実は俺も殺人を計画していたのだった。
Oh!マイダーリン 完結編
最も恐ろしいのは、妻が奇跡的に一命を取り留めた時だ。妻は必ず証言する
「私は主人に突き落とされました」
そこで計画はおしまいだ。同時に俺の人生も終わる。妻は俺が拘束される姿をせせら笑いながら見ることだろう。
ベランダ突き落とし計画はそこでとん挫していた。
それから3週後、斎藤からまた話があるというので、計画の続きかと思い、帝国ホテルで落ち合った。
「どうなった?あれは」
俺は海老フライのサンドイッチを頬張りながら聞いた。斎藤の話は突拍子もないことが多いから平然を装っているが、いつもありがとう友よと、内心は感謝している。
「やっぱり無理そうだからやめたよ、殺人は俺の性に合ってないわ」
殺人が性に合う人間なんかいるわけないだろ、口に出しそうになって辞めた。
「ところで今日はどういう相談なんだ」
今日も前に来た時と同じ席だが、窓の外を見ても蝶々は飛んでいない。
「新しい彼女ができた」
「お、おめでとう」
まさか、その子を殺したいという相談じゃないだろうな、と疑ってみたがそれは杞憂に終わった。
「学校の先生なんだけど、すごく固い子で、結婚するまでは駄目だって言って、キスもさせてくれないんだよ」
「なんだよそれ、そういうのいいな」
身持ちの固い女性の方が初めてセックスしたときの達成感は大きい。
「黒髪で清楚、背もすらっとしていて、一度でいいから抱いてみたいんだけど、何かいい方法はないかな、お前小説書いているだろ、だからいい方法知ってるんじゃないかと思ってさ。ほら、この前の官能小説良かった。なんだっけ、昼下がりのなんとか、あの主人公みたいなことがしたいんだ」
俺は昼下がりのなんとかなんていうタイトルの小説は書いたことがないが、何となく言わんとしていることがわかったから、そこで話の腰を折ることはしなかった。
「小説の中じゃうまくいけど、それが日常でも通用するかっていうと、それは難しいよ。ていうか、俺の浅はかなストーリーじゃ現実的には無理だと思うけどな」
実際にそう思っていたから、俺は自信をもって自分の能力を否定した。
「いや、いいんだ、お前のそういう謙虚なところも女性の心を動かすと思うし、お前のような性格の人間から出てくる言葉ならうまくいく気がする。なんでもいいから何か思いつかないか?」
「じゃあさ酒でも飲ませてさ、部屋から帰れなくすればいいんじゃないか」
本当にでまかせだった。斎藤は分かってるのか分かってないのか分からないが、俺の話を真剣に聞いている。まじめに聞いている斎藤が面白くて俺は調子に乗って話を続けた。
「でな、テレビでも見ながらさ、体を寄せて、太ももに触れる」
「おー、いいなそれ、それ使えるな」
あほか、と思ったけど尚も俺は話を続けた。
「たいていの女性は太ももを触れられると、体が少し反応する。しばらく太ももをなぜなぜする」
「なぜなぜ、なぜなぜ」
斎藤が右手でテーブルをさする動作をしながら、生唾を飲み込んでいる。
「そうだ、いいぞ、それでさすっている手を少しずつ股間に近づけていく、ゆっくりだ、ゆっくり」
斎藤が「ゆっくり」とうなづいた。
「そこまでいければもう落ちたも同然だ、女もだいぶ感じているはずだから、すんなり服を脱ぐ」
「服をぬぐ」
斎藤が話に食いついてくる。俺はにおわせるのがうまい。
「そして真っ裸になって足を開いて丸見えになる」
「丸見え?」
さらに斎藤が食いついてきた。
「そして彼女は言う、おーーーマイダーリンてな」
「おおおーー!マイダーリン」
興奮絶頂の斎藤が窓ガラスも揺れるくらいの大声を上げたものだから、隣の席のおばさんが思わず立ち上がった。バーの客が何ごとかとこっちを振りむく。トレイにグラスを何個も立てて歩いていたボーイが全部床に落として、グラスが割れる音が響いた。
ただでさえ静かなホテルのダイニングバーだから、中には何か事件でも起きたかといったように大きく目を見開いている者もいる。従業員が急ぎ足で近づいてきた。
「どうかなされましたか?」
黒のスーツを着た体格のいい男だった。アメリカなら右手に拳銃を持っているところだ。
「いえ、すみません、ちょっと話が盛り上がったもので」
俺と斎藤は平謝りをしてバーを出た。その日はそれで斎藤とは別れた。
やっぱりベランダからの落下は難しいだろうなあ。一人になり、俺は妻を殺すことばかりを考えていたが、どうもいい方法は出てきそうになかった。
それから2週間後俺はまた斎藤に呼び出された。
「今度はなんだ、彼女を殺す計画か?」
俺は冗談で言ったつもりだったが、斎藤はまじめな顔をしたままで笑わなかった。
「いや、違う、もう少し先を知りたいんだ」
「なんの先だ?まだ落とせてないのか?彼女」
「まあ、そういうことだ」
なんとなく元気がないようだ。
「それと、ちょっと価値観が違ってて」
「まあ、男と女、そもそも他人だ、多少の価値観の違いはあるさ、でもそれは誰にだってあるだろ」
斎藤の様子を見て、俺は少しでも励まそうと思った。
「もうちょっとお近づきになれないかと思ってさ」
「なんだ、太ももは触ったのか」
「まあな」
「それでもうまくいかなかったのか」
「そういうところだ、価値観がちょっと」
「わかったよ、今日はちょっと飲むか」
斎藤がうまくいかなかったのには俺がてきとうなことを言ったせいもあると思い、少し罪悪感が出てきていた。哀れな気がして、俺は斎藤を飲みに誘った。
俺たちは場所を焼き鳥屋に変え、ひとしきり飲んだ。俺はかなり酔いが回り多少飲みすぎ感も出てきていた。
「悪いな木崎、俺のために」
先に謝ったのは斎藤だった。
「いやいいさ、たまには」
今目を閉じるとそのまま眠りに落ちてしまうだろう。
「ちょっと俺の部屋で飲みなおすか」
斎藤はそう言うと、俺の肩をかかえタクシーに乗せた。導かれた斎藤の部屋は想像以上にきれいに片付いていた。
「これ最近買ったんだ」
そう言って斎藤が見せたのは山崎のウイスキーだった。
「あ、それから今日の昼、これ買っておいたよ」
そう言って紙袋からステーキサンドイッチを出した。紙袋には帝国ホテルのマークが入っていて、袋の方が値段が少し高そうに見えた。
「お、よくわかってるな、ちょうど腹が減ってきたところだ」
俺の腹が鳴る。
「じゃあ俺ちょっとシャワー浴びてくるからさ、これ全部食べていいよ」
そう言って斎藤は席を外した。
俺は、ステーキサンドイッチにかぶりつき、斎藤が作ってくれた山崎のウィスキーで作ったハイボールを一気飲みした。飲むとさらに酔いが回った。窓の手前の棚に置いてある観葉植物が笑っている。
斎藤がシャワーから上がってきて俺の隣に腰を下ろした。
「そういえばお前何か相談があったんだっけ」
俺は昼の斎藤を不憫に思い、斎藤のためならなんでもしてあげる気になっていた。酔ったせいだ。
「いや、もういい」
そう言いながら、寄せてきた斎藤の顔を見た。なんとなく唇が赤い。ん?俺は違和感を感じた。
「くち、べに?」
俺がそう言うと斎藤は笑顔で顔を近づけてきた。その顔を見て俺も笑顔になった。そのあと斎藤が俺の唇に唇を合わせた。俺は特に嫌な気はしなかった。斎藤から見ると俺の唇は斎藤の口紅で赤く色付いているはずだ。まるで女性にキスをしてもらったときのように。
俺の左側に座った斎藤の右手は俺の左太ももを触っていた。その手は何度も何度も俺の太ももをさすった。
「・・・」
斎藤が何か言っている。
「なんだよ、なんていってんだ」
「なぜなぜ、なぜなぜ」
その言葉を聞いて俺の太ももから股間に電気が走った。
ふと思い出した、昼のうちに買っていたというサンドイッチ、俺がこの部屋にくることがわかっていたかのようだ。これはあらかじめ計画されていたものだと疑ったが、それを指摘しようという気にはならなかった。むしろ俺はこの先を見てみたいと思った。斎藤の価値観の違いという意味が分かった気がした。
俺の股間はだんだん斎藤の手による刺激に耐え切れず、大きくパンツを持ち上げるまでに膨張していた。
そっと斎藤が俺のズボンのファスナーを下ろす。空いたファスナーから斎藤は隆起した俺の俺を取り出すと、一気にそれをくわえたのだった。
ハイボールで視界に入ってくる色々なものが回っている俺は、あまりの心地よさに腰を振っていた。ああだめだ、そう思った瞬間、俺自身が斎藤の口の中で頂点を迎えたのだった。
俺は思わず叫んでいた
「Oh!マイダーリン」
そういうと、斎藤も続けた。
「Oh!マイダーリン」
ふと自分の股間を見た。俺のモノには斎藤の口紅の赤が縦に長く、行為の証を残していた。
斎藤が潤んだ目で俺を見ていた。少し困った顔の斎藤が愛おしくなり、俺は斎藤の頭を胸に抱き寄せた。
次の日、俺は離婚届けを書きテーブルの上に置くと、バッグひとつで家を後にした。行先は斎藤の部屋だった。
Oh!マイダーリン 「了」
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