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Digital Transformation For Fashion Industry

2022年1月18日に発表されたJUNYA WATANABE MAN 2022 FALL-WINTER Collection(↓)を見て、Jamiroquaiの曲の懐かしさもあったせいか洋服の魅せ方や曲の選択、ダンサーの着こなしなど色々めちゃくちゃいい!って久々に感じました。

自分が高校生だった18年前ぐらいではコレクションはウェブで見ることはほとんどなく、雑誌を買うか立ち読みしてそこからコレクションを見るのが主流。
それが今となってはタイムリーにファッションサイトにアップされたり、Instaliveで見れるブランドも多くなってきてコレクションがかなり身近になってきました。
販売員もInstaliveで商品説明から販売まで行っており、人気販売員は月に数千万円以上も販売しインフルエンサー化してますよね!

実はこういった変革はファッション・アパレル業界のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)でもあり、業界の人にとっても身近に感じられるDXではないでしょうか?

DXの定義は各団体により異なりますが、共通キーワードとして
「デジタル技術による生活のより良い方向への変革」が挙げられます。

https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004.htmlより引用

今回はタイトルの通りファッション業界における顧客起点のDXという内容をお届けしたいと思います。
これが見終わった後にアパレル・ファッション業界の方がDX活用の今後の参考になればと思います。
自分自身は2016年3月からファッション業界(United Arrows、Dior)を離れ、広告代理店でラグジュアリーブランド等のメディアプランニングや行政書士(許認可申請、事業支援、著作権関連…)、宅建士(IT重説)など幅広く仕事をしながら今に至るので、ファッション業界内部にいたからこその当事者的な視点も持ちつつ、外に出たからこその客観的な視点でこれからの文章は記載しております。

ファッション業界の方だけでなく、ぜひその他の業界の方にもご一読・ご意見いただけれると幸いです。


1.そもそもファッション業界って?

ファッション業界といっても、繊維(動物・植物繊維~化学繊維まで)から始まり、それを紡績して糸へ、それが織られて生地になって、デザイナーやパタンナー、カッター…など多く人が関わって一着の『服』が出来あがります。
更に『服』を消費者に届けるためや知ってもらうために物流やVMD、PR、セールス…と色々なことが関わってきます。

ファッション業界では上記の流れを川上(Upstream)~川下(Downstream)みたいな言い方をしますが、消費者(お客様)と直接かかわる部分が川下の部分になります。

新規 Microsoft PowerPoint プレゼンテーション
消費者接点は基本小売り部分のみ(右図)

今までは対面販売がお客様接点のメインで、現在はオンラインでの接点が非常に増えており、EC化率は2010年から約2.4倍上昇してます。
(下記グラフは物販全般なので、ファッション・アパレル業に絞ると近年のEC化率はもっと高く18%程。)

https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200722003/20200722003-1.pdfより引用

そんな中でも小売り販売の重要ポイントはやはり『対面(リアル接点)』だと感じてます。
理由としてはまだまだリアルでの販売比率が高いこと、またオンライン(EC)での販売でもユーザーのサイト内での動きや今までのデータから色んな傾向はわかりますが、その人がどういった服装やどういった環境でサイトにアクセスしているのかまではわからないということです。
(例えばベッドで寝ころびながらUNIQLOのパジャマ姿で高級ブランドのサイトを閲覧しているなど。)

サイトの閲覧情報・フォローしているコンテンツなどから興味関心は判別(推測)できますが、デジタルでは”本当”のお客様の趣味・趣向が把握できない=”本当”の課題を見つけて提案ができないため、今でも店頭第一主義がメインストリームなのではないかと考えています。


2.顧客起点DXを進めるためには?

そんな店頭第一主義の中、いかにしてDXを推進させるのかということと何から手をつければいいのかは非常に難しいところだと思います。
ただデジタルを活用することは手段でしかなく、それを使ってどうしたいのか・何を改善し顧客体験価値を向上させるのが重要かが分かれば、ファッション業界のDX化はもう少し早く進むのではないでしょうか?

企業でよくあるのが競合他社がDXを進めているので自社でもやらないといけない、ライブコマースから売れているからうちも導入したいというケースです。これは決して導入の検討段階では間違っていないと思いますが、そこからしっかり目的を見出せなければ導入後の結果が大きく変わってしまうことになります。

なのでまず私が伝えたいのは現状課題をしっかり把握することが重要だということです。
たとえば接客した後にお客様情報が全くヒアリングできていないや、来店数が多すぎて顧客対応が追いついていない場合、前者ではそもそも的を得た接客ができなかったり、次に繋がらなかったりする可能性があり、後者では来店した方に対して接客ができておらず放置状態になってしまい、その店舗での購買体験価値がなくなってしまい他社やオンラインに流れてしまいます。

その改善策の一案として『接客のDX(例)』が出てきて、どういったことを取り入れれば顧客体験価値を向上させられるのかが議論されるべきなのです。
何事も導入段階で踏み外してしまうと修正が大変になり(修正ばかりが作業になってしまうケース)、ギャップを埋めていく作業に翻弄されてしまいます。
まず導入段階から社内でない第三者から意見をもらいディスカッションをし、共に進めていくことが非常に重要なタスクです。
なぜ第三者が必要かというと、デジタルに関して若い世代の方がネイティブなのに社内ではどうしても上の立場の意見(年齢が高い人たち)が優先されやすい環境にあるため、彼らの仲介役として必要なのです。

顧客起点DXはサイクル化し、顧客経験価値を向上していく必要がある


3.ファッション業界で顧客との重要なコミュニケーションとは?

現在はコロナ禍ということもあり、コミュニケーションがより重要になっており、DX化で重要なことは顧客体験価値の向上と前章で記載しましたが、どういった方法であればコミュニケーションが今より良くなるのでしょうか?

それは対面やリアル接点が引き続き重要ということに変わりはないですが、それだけではなくオンラインユーザーに対して顧客の行動をオンライン内だけでなくオフラインも掛け合わせて把握できる環境を作り(俗にいうCDPの導入で散らばっているデータを収集・分析・活用)、各行動がどういったトリガーから引き起こされているのかブレイクダウンしていく必要があります。
その行動に対するトリガーを把握していくのが俗にいう”インサイト”と言われているものですが、このインサイトを見つけることが非常に難しいんです…。
理由としては、顧客行動が多角化し以前と比べ様々なタッチポイントがあることが挙げられます。

ただ対面によるリアル接点で毎日いろいろなお客様の行動を観察し、そこからニーズを拾い的確な提案を行える人材を多く抱えているアパレル業界にとってはこの作業は意外に容易かもしれません。
例えば各店舗のミーティング時に下記シートのような内容をディスカッションし埋めていくことでオンラインでの行動も意識した接客ができるようになります。それにより接客のアプローチ方法が変わったり、よりユーザー視点に立って提案ができるようになると考えてます。

また店舗の人と本部の担当者で同じフォーマットを活用しまとめることで、現場の意見を取り入れた行動フェーズ毎のコミュニケーションプランを作成することも可能です。

参考:カスタマージャーニーマップ

これがある程度クリアになれば、あとは広告代理店等と協業しメディアデータやオーディエンスデータ、シングルソースデータなど活用してメディアを選定、シーン行動や課題解決に合わせたメッセージを伝えていけば、クライアント起点での情報発信でなくなり、顧客起点での情報発信であるためコンバージョン率の高いコミュニケーションになります。

ただし、ファッション業界は以前に比べコミュニケーション設計が非常に難しくなっております。
大手アパレル企業ではSDGsのことも考えてないといけませんし、資金を集めようと思うとESGに関しても意識しないといけません。

アパレル産業は世界2位の環境汚染産業と言われております…。

https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/32952/
参考:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/index.html
参考:https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/esg_investment.html

今までどうり洋服を作って、展示会をし、販促物を作り、キャンペーン告知を行い、販売・売れ残り・値下げして販売していくだけでは、この先々も永続できる企業になるのは難しいのです。
大きい会社こそより多くのデータを集められるので、店舗メンバーと協力し早めにDXを進め、環境にも配慮しながら、ユーザーと的確なコミュニケーションを取っていくことで顧客体験価値向上につなげていくべきだと考えております。

さいごに

ファッション業界を離れて5年以上たっていますが、ファッションは変わらず好きです。
特にファッション好きな人との会話は今でもすごく楽しく、改めて自分はファッションが好きなんだなと認識させられることが非常に多いです。
昨年、下北沢にUA&SONS時代の先輩が出した”CCX”というお店なんか最高で、店主が永遠に話をしてくれるのでめっちゃ長居できるし、そこに来た色んなヒトや日本の某有名ブランドのバッググランドのことなども紹介してくれるので非常に居心地の良い空間というだけでなく、もちろん古着やブランドのセレクトも凄く素敵です。
https://popeyemagazine.jp/post-52911/

オンライン上でもこういった繋がりやコミュニケーションを作る必要があり、公にされていない有益な情報や裏情報をしっかり与えていかないとすぐに飽きられてしまうし、商品だけでの差別化はオンラインではより難しくなってきます。
そんな風に考えている自分自身も30代後半に差し掛かっているので、『好きなこと』をするという意味でも改めてファッション業界で顧客体験価値向上に取り組んでいければと思っております。
それがファッションメディアでの発信になるのか、企業や個人経営のお店等とご一緒し動いていくのかは現在未定ですが、少しでも興味がある方はぜひ気軽にご連絡ください!
またファッション業界は閉ざされた業界のようになっているのも一つ課題だと思っているので、DX化によっていろんな業界と横串で繋がっていけばもっと可能性は広がり面白くなるんじゃないかと感じております。

少し長くなってしまいましたが、アパレル業界に少しでもDXの風が吹き、面白い顧客体験の創出があちこちで起きる日もそう遠くはないと確信しております。

最後までお読みいただきありがとうございます。
今後ともお付き合い宜しくお願い致します。

Thank you for reading my note!!

松田ミツノブ

ご相談・問い合わせ等は下記メールまで。
info@mitsunobu-gyosei.com

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