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粘土の豆を作れるのはだれか?|ショートショート

突然だったので、わたしに向けられた怒りだとは気づかなかったな。

……なにか、彼の中のマナー違反をしたみたい。

初めましての相手かける一言目として、今の言葉はマナーがないでしょう。

マナーについて、指摘するならば、自身もマナーを守る方がいい。というのは私の中のマナーなの。

たぶん、彼は私が何をできるかしらないわ。
たぶん、彼は私が怒ってることをしらないわ。
たぶん、彼はこれからどうなるのかをしらないわ。

“人は見た目が9割です。”

というような本があったけれど、1割は見た目で判断できない人がいるのよ。

ピンクの小花柄ワンピースに、ふわふわの白いニットカーデガンをゆるっと大きめに着て、手には冬の定番、ハートのファーのバッグをもっているの。

ヘアスタイルは薄いブルーグレーにして、それに合わせてコンタクトもブルーに。

ホワホワしてるね、とか、のんびりしてる、と形容されるのが、わたし。

人の多い街に住んでいると、不意に悪意のあるひとが、この子なら言い返さないだろうと思って暴言を吐いてくることがあるの。

1割の私は、見た目を裏切って怒りを隠さないわ。
悪意にもキチンとお返事をするの。

彼女は、ハートのファーのバッグから粘土セットを引っ張り出す。

粘土は本当によくよく捏ねなければ使えないのよ。みんなが思ってる以上にとってもよくよく捏ねる必要があるの。

無心になって捏ねていると、嫌なことや悲しいことも、きゅるきゅるまとまって、ひとつの美しいかたまりになるの。

さっきの鈍い鼠色のおじさんも、青みを含んだ月白の粘土と一緒になると美しいマーブル模様になれる。

「人を見た目で判断してはいけないの。」

粘土作家の彼女は、嫌なものをまとめてまぜてよく捏ねる。

「今日はこれ。」

ごろりと、大きな豆ができた。


あとがき


ちょっとまだ直したいところもあるけれど出しとこう。

夜に目が覚めて、ふとおもいだしたむかしのこと。(ここから本当にあった話。)
娘が小さいころ、食事中にぐずりだした娘をレストランで立ちながらあやしていたら知らないおじいさんに突然怒鳴られたことを思い出した。

その時の私は突然のことにがーんっとショックを受けて、すごすごと店の外に出て娘が泣き止むまで待って、こそこそと席に戻って、冷めてしまった鉛みたいなカツを無理やり口に入れて、逃げるように店の外に出た。

よくよく考えたらもっと言い方あるだろ!っておもったけれどしばらくは子どもが人前で泣くのが怖かったな。

頑張ってたね。
悲しかったね。
悔しかったね。
そんな気持ちをここで爆発させました。

今は「お前が外へでて食べろよ」って気持ちで無視できるくらい強くなったし、そうやって言われているママを見つけたらすぐにとんで行って赤ちゃんをだっこしているから食べなさい!って言えるくらいの優しいきもちが育ちました。

……

さいごに粘土で何にしようと考えてて、粘土で作ったのが「豆」だったってところがあんまりよくわからないから、そこらへんを書き直したいなと思う。
なんで豆かというと「マナー」の言い換えの言葉を探していたら、「俎豆(そとう)」という言葉がひっかかったから。
中国の祭りごとに使う器の名前が転じて礼法という意味でも使われている言葉らしい。

豆を粘土で作るって一般的じゃなくて伝わりにくいから、粘土で作るもっとメジャーなものにしたらいいのかも。
考え中。


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