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小さなお医者さん|ショートショート
「みんなね、カゼだカゼだってくるけど、これ違うから。扁桃腺ね。ココが腫れてんの。」
塩ごまあたまの小さなお医者さんは、続ける。
「もう、原因はなにかってーと、これ!これだから!」
A4に印刷された紙にの真ん中あたりに、ぐるりと円をつけて渡された。
丸の中には扁桃腺の理由として、赤字で“疲労、ストレス”と書かれていた。
「薬塗ると、治りが早いけど痛いから嫌だっていう人もいる。大人でも,痛いの嫌な人もいるからね。無理はしないけど。」
早く治るのならぜひ、とお願いすると、病院の奥から、祈り台と、香薬が運ばれてきた。
無表情な様子で先生の横に立っていた看護師の1人が、診察室の横に置いある水槽から鯉を一匹取り上げて、首を切る。
小さなお医者さんは、ほとばしる鯉の血と、セージの葉、抗生物質、ヤモリの右足、殺菌剤、浄化した塩を混ぜて、小さな団子をつくり、私に持たせた。
白衣を脱ぎ捨てると、その下は正装だった。そのまま、祈り台の上で香薬を炊き、あぐらをかく。
無表情の看護師達は、祈り台の左右に立ち、ドラムを叩き始める。
お医者さんはトランス状態になり、徐々に小さくなってゆく。親指ほどのサイズになったところで、私に持たせた小さな団子をふみつけなから、私の口のなかへ飛び込んだ。
お医者さんの足の裏についた薬が、私の患部に染み渡る。確かにこれは痛い。
口の中から華麗に飛び出したお医者さんは、再び看護師のドラムロールに合わせて大きく戻っていった。しかしさっきより少し小さくなっている気がする。
「ほらね、少し血がついてるでしょ。だから痛いんだけど、でも大丈夫。だけど、これで治るとか思うのは間違いよ。大切なのは休息。ちゃんと休んでね。」
足を私の血で血まみれにしながら、優しい笑顔で諭された。
ここのお医者さんはいい。
何かあったらまたこよう。
【あとがき】
本当に扁桃腺になったので、そのやりとりの様子を再現してみました。お医者さんは小さくならなかったけど。
喉の奥に薬塗るのはちょっと痛かったし、ワタにも血が付いてた。
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