七つ祠のものがたり(仮)第3話|長編小説 連載
前回の話はこちら
志岐の長く美しい髪を見ていると、自分にもああいったものがあればと妄想してしまう。
志岐は髪だけでなく、指の形や所作、足の爪の形まで文句のつけようがないほど整っている。
ひとつひとつは、普通よりちょっといいなと思える部品なのだが、それらが全て集まって志岐になると、神々しいまでに美しくなる。
ああいったものが1つでもあれば、私の生き方も違ったのだろうか。
「まだ、感じるか?」
ふいに話しかけられ言葉に詰まった私をみて、志岐はけげんそうな顔をした。
「まだ体調がよくないのか?」
そうではないことを伝えると、志岐は続けた。
「私にも違和感は感じるんだ。だから祠に行っていたわけだし。村長が家を離れるわけにはいかないのは椎も知っているだろう。祠の状態によっては対応を急がなけらばならないんだ。」
「対応って何をするの?」
それは展代の者の仕事だからと、志岐は濁した。
村のはずれにある条条屋敷から祠までは、20分ほどで行ける。
祠が近づくと昨日よりは落ち着いているものの、まだ赤紫の光のもやのようなものが湧き出ている。
「志岐。まだ赤と紫の靄は止まってはいない。たっぷりの濃厚な霧のようだよ。」
「赤と紫だな。祠の中でも濃い場所があるだろう。それはどこだ。」
7つ村の祠は縦120cm、横80cmくらいで小さな子どもがちょうど一人収まるくらいの大きさだ。
石を削って作られた台形の土台の上に、神輿を小さくしたような木造の神棚があり、中央には小さな扉がついている。
扉にはお札が貼ってあり、何度も上から張り重ねた痕がのこる。
椎がよく見ると、扉のお札は前に貼っていたものより小さいものの、新しくなっており扉から赤紫の霧は漏れていない。
漏れているのは、右の柱の底あたりのようだった。
霧が漏れている場所を伝えると、志岐は言った。
「理由はわかった。椎はもういい。帰って寝ろ。」
突然の開放に混乱した椎は、叫んだ。
「私だってまだできることはあるよ!本当にこの祠が落ち着くまで私は志岐から離れない。しかも霧が見えるのは私だけなんでしょう?志岐だけだと本当に閉じたかどうかを確認できないでしょう。」
椎の頑固な所を知っている志岐は、ふとあきらめたように肩を落として話を始めた。
「この祠を守るためにはお札が必要なんだ。弓道道場をしている七草家があるだろう?あの家の本来の仕事はお札作りだ。
この祠を守り、村の発展を支えているのは七草家が作るお札なんだ。たぶんこの小さな新しいお札は七草の者が貼っていったのだろう。
まだ漏れていることを伝えないと。七草の者の中にも霧が見える能力があるものはもういない。私たちの代は不作だと言われているんだよ……。」
七草家は、村の中でも祠から一番遠い場所にある弓道場を営名家だ。
豪華な家が立ち並ぶ村の中で特に大きく、荘厳な門構えは、椎を拒否しているようにも見える。
志岐が到着したことを伝えると女中の霞が、中へ案内してくれた。
重々しい門構えとは裏腹に七草家当主「七草秋人」は、衰弱している様子だった。
「秋人さん、祠はまだ完全に閉まっていません。こちらの椎は霧が見えるのです。扉ではなく底の方から漏れているようです。」
やはり、と慌てる様子もなく七草秋人は口を開いた。
「私たちも完全に閉じたとは思っていなかった。しかし七草の者も霧を感じることはできても見ることはできない。
ここ100年ほどは祠の管理も行き届いていたから、“霧を見る”能力は必要なかった。鍛錬しようにも無いものを見ることはできなかったんだ。」
「それでは椎を連れてすぐに行きましょう。お札を貼って霧を防げばのこ騒ぎは終わる。」
「それはできない。もう七草にお札はないんだ。あの扉に貼ったのが現存する最後のお札だ。志岐、お前たちの代は不作なんだよ。」
不意に、志岐に冷たい目を向けた秋人は、言った。
「お札作りを行う者に会わせてやろう。」
第3場:最初の課題 完
【あとがき】
今回から長編小説がスタート!
第3回目は『第2幕:挑戦と挫折 第3場:最初の課題/2100文字』のつもりですが今日はタイムアウト。ひとまず800文字のみ。今週どこかで時間をとって来週までにはなんとか終えたい!
ゴールデンウイークという名の家族時間があるので、書く自由時間は少なくなってしまう。
……
2024/5/25追記
ゴールデンウィークの熱も冷めた本日やっと続きを書く。
いろいろある!女には色々あるんだ!!!
と言いながらやっと第3話を書ききった。
なんか書きながらすでに矛盾や言葉遣いとか、接続詞とか気になる所がもりもりだけど、今回の、目的は「長編を書きあげる!」なので、薄目にしながら進めていくことにする。
元にしたプロットはこんな感じ。
それでも足りないプロットをこちらで追記
最後までお読みいただきありがとうございました! 頂いたサポートは全力で全力で書くことにを続ける力にします。