![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/145130791/rectangle_large_type_2_26b53513ae29583b53c8b502b0041056.png?width=1200)
Photo by
night_contrail
脳内でリピートされる6月の変化。|ショートショート
多分、この風の匂いだ。
胸がざらつく。
裸足で外に飛び出したあの日。
暑くなる少し前のじっとり水気を含んだ重い空気の匂い。
あの日が来る。
なん度もなん度もリピートされ、記憶が薄れないよう上書きしていく。
こんな日は深く深く暗い沼の底で眠るか、そっと草陰を進んで、赤い屋根の小さなお家の庭を覗く。
3つくらいの小さな子どもが、でたらめに鳴らす鈴の音に合わせて、白くて柔らかそうなドレスを着たお母さんが、ピアノを奏でる。
あの日、強く望んだ私の願いは叶えられ、気づくと、美しい鱗に覆われた気高い生き物に姿を変えていた。
戻れないし、声も出ない。
孤独で美しい生き物には、森の者たちでさえも近寄らない。
森の王である私に手出しをするものはない。
裸足の足も、もうない。
最後までお読みいただきありがとうございました! 頂いたサポートは全力で全力で書くことにを続ける力にします。