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「MASTER OF PUPPETS」 METALLICA (1986)

メタルを聴き始めて数年が過ぎた
1980年代の中盤、

とにかく速い、重い、激しいの三拍子を
追い求めていた当時の私にとって

スラッシュメタルと言うジャンルの台頭は
正に「渡りに船」の現象と言えた。

その反面、スラッシュメタルは

「技術の乏しさをスピードて誤魔化している」
「メロディ性がほとんど感じられない」

などと当時は揶揄されるきらいも多く

ファンとしては歯痒さを抱えていたのも
また否定しがたい事実だった。

そんな既成概念を根こそぎ覆したのが
1986年に発表されたメタリカの3rdアルバム

MASTER OF PUPPETS

邦題で「メタル・マスター」と題された
この作品は

スラッシュメタルならではの激しさの中に
叙情性や感傷的な雰囲気を感じさせる
革命的な作品と言える。

メタリカと言えば真っ黒なジャケットの
いわゆる「ブラックアルバム」を
名盤に挙げる方も多いが

あのアルバムは既にスラッシュの枠を超えた
ロックの名盤として捉えるべきであり

スラッシュメタルのカテゴリーの中で
メタリカの名盤を語るとすれば

やはりこちらであると言えるのでは
ないだろうか?

そしてこの作品を発表した数ヶ月後に
悲劇的な事故でこの世を去った

実は2代目ベーシストである
クリフ・バートンの遺作であることも相まって
(初代ベーシストはアルバムに参加していない)

Cliff Burton (Ba)

そんな衝撃の事実を
リアルタイムで体感した私にとっては
非常に思い入れの深い作品となっている。

そんなメタリカの名作を収録曲から
かいつまんで取り上げてみたいと思う。

まずオープニングを飾るのが

「BATTERY」

アコースティックの静かなイントロで始まり
急転直下、激しい曲調へ。

ボーカルもメロディラインがしっかりしていて
ただ叫ぶだけではないのがよくわかるし

印象的なフレーズに耳を奪われる。

そしてメタリカならではの起伏の激しいリズム

ワウを多用した不気味なのに
メロディアスなギターソロ

この1曲にメタリカの全てが
詰め込まれていると言っても

過言ではないと断言出来る。

「ブラックアルバム」や「ロード」あたりから
ファンになった方が聴くと

度肝を抜かれるのではないだろうか?

そんな怒濤の流れで2曲目のタイトルチューン
8分を超える大作、
「MASTER OF PUPPETS」へと進む。

この曲はアルバムのテーマでもある
"マニュピーレション" (操作)

"操作される恐ろしさ"を描いた曲で

ドラッグに蝕まれる依存への恐怖を
テーマにしている。

4曲目の「WELCOME HOME (Sanitarium)」
こちらは精神を患って隔離病棟に送られた
病人について歌った曲で

こちらを発展させたのが

次作「…And Justice For All」で
メタリカの代表曲のひとつとなった
「ONE」だと言われている。

後半の泣きのギターソロがとても美しい。

そして後半のハイライトは5曲目の
「DISPOSABLE HEROES」

「使い捨ての英雄たち」と題されたこの曲は
戦場で死にゆく兵士をテーマにしていて

"I was born for dying!"
(死ぬために生まれてきた)

そんな衝撃的な歌詞に胸を打たれる。

続いてはライブで演奏されない、と
言う理由が曲の付加価値にもなった
ミディアムナンバー「Leper Messiah」

ラストは超スピードナンバーの
「Damage Inc.」で幕を閉じる。

全8曲収録で1時間近い大作ながら
間延び感は全く感じられず

ジェットコースターに乗っているかのような
スリリングなテンションで聴くことが出来る。

アルバムジャケットのアートワークも
並び立つ十字架に張り巡らされた糸、

それを操ろうとする大きな手、と言う

作品全体のテーマを標榜した
デザインになっていて

アルバムコンセプトからジャケットまで
関連付けさせることで

細部まで考えて作成されたと実感させられる。

戦争、薬物、宗教などを主なテーマとした
アルバム全体に漂うのは暗く重い雰囲気ながら

それでいて聴くと心を震わされて
活力が沸いてくるのを感じるのは

やはりこのバンドが内包する
音楽的な魅力がもたらす産物。

その証拠にこれほどまでにハードで
アグレッシブな作品であるにも関わらず

全米チャートでは快挙とも言える
最高位29位にランクインを果たした。

こちらのアルバムに関しての
詳細な解説については

「BURRN!」誌1986年6月号の

ジェイムズ・ヘットフィールドと
ラーズ・ウルリッヒのインタビューの中で
記載されています。

BURRN!

興味のある方はぜひ古書店かメル◯リなどで
探していただくことをお薦めします。

次回はこのメタリカをクビになった男、

デイブ・ムステイン率いる
メガデスの"あの"アルバムです!

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