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超短編小説《花びら》

カラスが桜の木の上に石を落とした。カラスが落とした石は桜の花のうちの数枚に当たりそのうちの一枚の花びら散った。気付いていないだけで本当は他の花びらも散っているのかもしれないし、実はその散った花びらも石が当たったことが原因で散ったものであるかどうかも分からない。散った一枚の花びらは地面に落ちて私の身体に被さった。私は暫しの間、身動きが取れなくなってしまったが、隣を歩く仲間の蟻の助けを借りて、とうとう一枚の桜の花びらから逃れることができた。そんな蟻一匹のことには気をとめない様子で、ヒトは桜を眺め、カラスは石を落とし、桜は散ってゆく。

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