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この前の場所(47)

それまでは従妹なのに誕生日が一緒ってすごいねと2人で言っていた。事実を知って、多少は驚いたが、あまりにも2人がそっくりなので、ああやっぱりということにしかならなかった。ルイが養子になってから、3年後に伯母は奇跡的に妊娠して、拓也という弟ができた。諦めたときに授かった子で、ルイと同様に何一つ分け隔てることなく、2人は大切にされすくすく育った。マヤがルイのことを内緒にしていたのは、秀と大学が同じルイに知られたくないと思ったからだったが、それは内緒にした。秀がルイを気に入ると嫌だなと思ったからだった。「そういえば、秀にわたしの名前のルーツ話してなかったな」と言った。マヤの父と母は父が別の女性、暮林素子さんに熱を上げていたため、なかなか進展しなかった。そんな中、父が初めて母をデートに誘ってくれたのが、母の好きな古代文明の、「古代マヤ、アステカ文明のすべて」という博物館の催しで、母のために父が付き合ったのだった。母はそのことがあまりにもうれしくて、子どもができたら、マヤという名前にしようと、初デートの時から夢見ていたのだ。男の子が生まれたらどうするつもりだったのと、マヤが母に言うと、母はそれもちゃんと考えてあって、父と母が大学卒業旅行の時、ふたりは偶然フランスのベルサイユ宮殿に行っていて、偶然ばったり会ったのだった。母にはこの人と結ばれる運命としか思えなかったという。それで、ほらフランスって言えば、やっぱりフランスの王朝時代が浮かぶから、男の子ならルイにしようと思ってたの。だけど、双子で生まれたから、妹をルイにしたの。ルイは男女どっちでも不自然な感じしないでしょうと話してくれた。その話をマヤは秀に聞かせた。

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