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向き合って(42)

 さっきまでちょっと緊張感が走ったけど、ケーキを食べてお茶を飲むと少しお互い心がほどけて明るい気分になってきた。秀と離れている間、ボランティアでポルポル共和国に行ったときのことを話した。アフリカの大地、空気、空の色、村の人たちの温かい大歓迎、農場での開墾作業はとにかく暑かったこと、今までのことは全部は時間が足りなくて話せないけど、親友の奈津の話もしていつか秀にも会わせたいなと言ってみた。「秀はどうしてたの」と聞くと、「ロードバイクは今も続けている。今度はケガしないように用心しているんだ」と返ってきてマヤはちょっと心配になった。ただ、一度事故に遭ったといっても続けている人はいるし、仲間もいるだろうし、自分は今はまだ友達の立場だから、反対することはできなかった。難民キャンプでお世話になった、亡くなった佐竹さんや青山さんのことを話して、1週間前のお別れ会のことも話した。佐竹さん、青山さんの遺影にみんなが1輪ずつ献花して、皆で故人を悼んだこと、それでお別れ会が終わった後に秀から、電話がかかってきて、涙があふれて、あふれて止まらなかった話をした。「あの時は電話切らないで待ってくれたことで、少し気持ちが和らいだ。でも、突然だったよね。本当にびっくりしたよ」と笑った。
 秀は「俺は思い出してから、居ても立ってもいられなくて、すぐ連絡しなければと思って焦ってたから」。明日香さんには秀とバイト先以外でも、数回会っていたことは全く話していなかったけど、わたしたちの仲の良さで何となく気付いてたようだった。秀にも快く連絡先をメールで送ってくれたらしい。バイトやめちゃったけど、明日香さん元気かなとふと思った。もう就活でバイトはやめて、進路も決まっているだろうけど、また、バイト仲間で飲むことがあったらお礼を言わなきゃと思った。

向き合って(42)

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