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第4回 カウンセラーのTシャツと言葉のサラダ 人生を俯瞰することとイサムノグチ

カウンセラーとスタッフの日常会話の記録です。

Mi代表:深層心理学が専門のカウンセラー。Mitoce代表。
すたっふ:カウンセラー見習いのスタッフ。少々オタクらしい。



すた:私、考えていたんですけれども、カウンセラーって神様っぽくないですか?
 
Mi代:なかなか思い切った仮説ですが。どういう意味ですか?
 
すた:神様って「私の願いをかなえてくれる人」という意味じゃないですよ。そんな魔法みたいな力を持っているわけじゃないのは、わかっています。というか、逆なんです。何にもしてくれない人というのが似てる。
 
Mi代:というと?
 
すた:神様って、お願いしてもそれを叶えてくれるわけではないですよね。具体的に助けてくれるわけではないので。神様は見守っているだけで、現実に頑張るのは自分なので。そういうことを考えていたら、これってカウンセラーっぽいなと。
 
Mi代:たしかに。それはあるかもしれませんね。
 
すた:でも、カウンセラーの先生が何を考えているのか、わからなかったりするのですが。
 
Mi代:そうですね。最近は認知行動療法が流行っているので、具体的な解決法を考えてくれるというイメージがあるかもしれません。でも、根っこは同じだと思います。悩みごとを解決するのは本人なので、本人がどう解決していくのかを見守るのが基本ですね。
悩みを直接解決するための行動をカウンセラーがするわけでもないし、具体的に助けるわけでもないので。話を聞きながら、その人を見守っている。
 
すた:聞きながら何を考えているのですか?
 
Mi代:いろいろなことを考えています。ひとことでいうのは難しいのですが。相談者が悩み事を話しているときに、どうしてこのタイミングで相談に来たかとか、今どのように頑張って問題解決をしようとしているのか、この先どうなるのだろうか、とか。
いってみれば、その人の人生を俯瞰してみて、それで今どうしてこの話になっているのかを考えている感じですね。
 
すた:たしかに、それは確かに思います。大学院で勉強していたときにケースを聞いていて、クライエントの人生全体を俯瞰して考えるというのをしていました。
 
Mi代:カウンセラーになる人は、人間の人生を俯瞰してみて、どのような人生かを考えることに関心を持っている人が多いかもしれません。それでカウンセリングを通して、その人の人生にどれほどコミットメントできるかにエネルギーを注ぐのが仕事かなと思っています。
 
すた:私も映画とか見てても、その人の人生を考えることは好きです。
 
Mi代:私がカウンセリングの部屋にイサムノグチのAKARIを使ったのはそのあたりが理由のひとつとしてあります。
 
すた:どういう意味ですか?
 
Mi代:イサムノグチは、アメリカ人と日本人の親の間に生まれた彫刻家で、インテリアデザインで家具を作ったりしています。彼はアメリカと日本のあいだで、自分のアイデンティティに悩んでいたといわれます。戦時中には自らアメリカの日本人収容所に入ったりしたのですが、そこでも人種をめぐって苦労をしたといわれています。
彼が日本に来たときに岐阜提灯をみて、それにインスピレーションを受けて創作したのがAKARIシリーズです。竹ひごと和紙で作られた簡素な形なのですが、造形としてとても美しいですね。竹ひごがきっちりと組まれた作品もあるのですが、私は曲線で組まれた作品の方がイサムノグチっぽいなと思って、そちらを選びました。
カウンセリングに来られる方は、自分の生まれや育ち、アイデンティティに悩んでいる人が多いので。アイデンティティの悩みを経て作品を生み出したイサムノグチのAKARIをカウンセリングの部屋に置くことには意味があると思っています。
美術作品を見に行ったりしますが、作品の背景にある作家や画家の人生を思い浮かべながら、作品を鑑賞しています。その人の人生が作品に表れていると思うので。
 
すた:それはカウンセリングでも同じということですよね。
 
Mi代:まさに。カウンセリングで話を聞きながら、悩みの背景にある、その人の人生を思いめぐらしていて「どうしてこのような悩みになったのだろう」と考えています。
 
すた:でもMi代表、いつも愚痴っていますよね。だれもイサムノグチの作品って気づいてくれないって。
 
Mi代:そうなんです!! 和室に置いてある和風照明ぐらいにしか思われないんですよ!
 
すた:私もそう思っていました。
 
Mi代:もっとアートに興味持つことは大切です。せめてカウンセラーをなら……。
 
(と話しが長くなったのでMi代表を放置)
 
 
 
 

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